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第9話 その理由2

引き伸ばし回的なノリ。まぁ、あんま不必要な会話は入れてないつもりですが。

 英雄と舞が話している頃、ラミと桃覇もまた話していた。


「せっかく英雄が離れたところに居るわけだし、桃覇に聞きたいことがあるの」

「何、ラミちゃん?」

「どうして英雄は自分の名前を嫌っているのか、聞きたいの」


 桃覇は、「うーん」と言いながら悩んだ。腕を組んだり、頭を抱えたりしていた。ラミはそれを変なものを見る目で見ていた。桃覇は数秒後にラミを見て動きを止めた。


「私の推測でもいいなら」

「それでもいいわ。聞かせて」

「それなら言うけど、英雄は別に自分の名前を嫌ってなんかいないよ……多分」

「そんなわけないでしょ。名前で呼ばれるのすごく嫌がってたじゃない」

「名前で呼ばれるのは嫌なんじゃなくて恥ずかしいんだと思う」

「この世界じゃ珍しいというか変な名前の付け方らしいからね」


 桃覇は首を振って否定した。


「そういう理由で恥ずかしいんじゃないと思う。それが全く無いわけじゃないと思うけどそれが全てじゃないと思うの」

「どういう意味?」

「英雄って名前は、英雄のおじいちゃんが付けたらしいんだけど、その理由が英雄になって欲しいからなの」


 ラミは「この平和な世界でなんつー理由……」と桃覇に聞こえない様に呟いた。


「何?」

「なんでもない、なんでもない」


 手を振って何もないことをアピールした。


「それで英雄は、自分は名前負けしていると思っているんじゃないかと思うの」

「名前負けねぇ、そんなの気にしなくて良い気がするけど……」

「あと……」

「他にもあるの?」

「そのおじいちゃんに虚言癖があったのと世間に顔向けできない程の女たらしだったせいかも」


 それが一番の原因なのでは、とラミは思った


「しかし、あのトレイスがたらしねぇ」

「ラミちゃん知ってるの?」

「元々私の世界の住民だからね。悪戯小僧で、さんざん手を焼かされたわ」

「英雄のおじいちゃんと知り合いって……ラミちゃん、一体何歳なの?」

「1500歳。あ、封印されている間も数えたら1560歳かな」

「あ、あはは。そ、そーなんだ」


 超常的存在のように思っていたが、予想以上の答えに驚いた桃覇であった。


「それで、桃覇は英雄のどこが好きなのよ?」

「な、なんで急にそんな話になるの?」


 桃覇は顔を真っ赤にして答えた。


「いや、正直こっちの方が気になってしょうがなかったわ。今までのは前振りみたいなものよ」

「真面目な話だと思ったのに……」

「真面目な話なんて面白くないよ。恋話の方がずっと面白いから」

「……え、えー。もしかして、ラミちゃんの世界でそういうの流行ってるの?」

「いや、こっちの世界に来てから恋愛物にはまってから気になってしょうがないのよ」

「へ、へぇー」


 桃覇は前からラミのことを俗っぽいと思っていたが、予想以上にそうであった。


「教えてくれないの?」

「で、でも……」

「私これでも一応既婚者だし、何かアドバイスできるかもしれないよ」


 それは当てにできるものなのだろうかと疑問を抱きつつ、話すことにした。


「どこが好きというか、一回助けられたことがあって、それ以来ずっとかな」

「え、何? その話聞きたい」


 ラミは恋話好きな中学生のように食いついた。


「実は、英雄のことは小さい頃から気になる存在ではあったんだよね。でも、それは好きと言うよりは変な子だなって感じだったんだよね」


 ラミは、今でも十分に変な奴だと思ったがその詳細を尋ねた。


「今からは信じられないかもしれないけど、当時は自分でヒーローを名乗っていたよ。声高々に、自信満々って感じで。いじめとか不正を許さない正義感の強い子供だったよ」


 英雄は、自分に付けられた名の通りヒーローであろうとした。可愛い悪戯と思われそうなことでも、注意して先生に代わり説教の様なことをしていた。そのせいで嫌われることが多かった。それでも、その行為をやめることはなかった。


「それで、結局どうして好きになったの?」

「さっきも言った通り、助けられたの」


 小学五年のある日、英雄は風邪を引いた。桃覇は家が近く、幼馴染ということもあり、その日配られたプリントを届けに行った。そこで、桃覇は攫われてしまった。


「ど、どうしてそんなことにっ?」

「本当は英雄を誘拐するつもりだったみたいなんだけど、私と間違えたみたい」


 間抜けだよね、と苦笑する。


 桃覇は廃校舎に連れて行かれた。そして、誘拐犯は身代金を要求するための電話をしてから、誘拐する対象を間違えたことに気付いた。それでも、桃覇は小郷家にとって身近な関係であったため提示された額の1億円を用意した。誘拐犯は、廃校舎に一人で来るように英雄の父親に伝えた。英雄の父親は、誰にも伝えず指示通り指定された場所に向かった。


「それで、助からなかったの?」

「わからない。結局、破綻したから」

「どうゆうこと?」


 しかし、英雄はその会話を聞いていた。詳しい内容はわからなかったが、桃覇の父親である武に連絡し、父親の後を追った。父親が廃校に入ったのを見たところで、武と合流し、桃覇を探し回った。荒れた校舎は、窓ガラスは全て割れており、外にも中にもガラスが散乱していた。

 英雄と武は体育館に三人の誘拐犯と英雄の父親を見つけた。武は、様子を見守り、英雄は桃覇を再び探した。英雄は離れの体育倉庫で桃覇を見つけた。手や足を縛られており、口はガムテープで塞がれていた。口のガムテープは簡単に剥がせたが、太いロープはきつくて外せなかった。散らばっていたガラスを使い、なんとか足だけは外せたが時間をかけすぎて英雄は焦っていた。すぐに倉庫から出ようとすると、何度か銃声が響いた。武なら大丈夫だろうと英雄は、廃校を出ようとした。しかし、体育館から一人、誘拐犯が出てきて見つかってしまった。走って逃げるが、桃覇は躓いて転んでしまった。それも、散らばったガラスの上に。


「それ、大丈夫なの?」

「顔からいって怪我したけど、傷跡が残るだけで失明はしなかったよ」


 ほら、と髪で顔の左側を隠していた部分を見せる。そこには、額から頬にかけて小さな傷跡がいくつもついていた。


「……傷跡はつらい?」

「そうでもないよ。英雄が居てくれたから」


 そして、続きを話す。


 誘拐犯は銃を向け、英雄達に近づいた。もう駄目かと諦めかけたところを武が後から飛び掛かり抑えた。銃を弾き飛ばし、警察に連絡した。残りの二人は既に武が倒していた。英雄の父親は大した怪我はなかったが、武は腹部に銃弾を受けていた。幸い内臓に傷はなかったが。桃覇は、傷ついた当時は痛みで理解できていなかったが、包帯やガーゼをはがしても大丈夫な状態になった時、自分の顔を見て泣いた。

 桃覇のクラスメイト達は、優しく気遣っていた。ただ、それでも奇異の目で見られたり、不気味と言われたり、カッコイイと囃したてる者もいた。


「それで、英雄が『傷は醜いものでもカッコイイものでもない』それと『傷ついたのは俺のせいだから言いたいことは俺に言え』ってみんなに言ってくれて」

「それだけ?」

「それだけじゃないよ。私がお嫁に行けないみたいなことを言ったら『そんなことない。どうしても無理なら俺が結婚してやる』って」

「あの子の発言とは思えないわねー」

「今でも根は変わってないと思うけど……中学あたりから」


 桃覇は、そこで言葉を止め言いづらそうにする。


「中学あたりから、何?」

「……例の騒動の時、みたいな感じ」

「中学あたりということは、トレイスが死んでから……か」

「もう四年も経っているけど、私にはどうにもできないのかな?」

「どうだろう? 私にもよくわからない」

「そうだよね」


 桃覇は、がっかりする。


「でも、なにもしなければなにも変わらないんじゃない?」

「そうだね。私、頑張るよ」

「そうそう、その意気よ。恋する乙女はなにものより強いわ」


 桃覇はラミに礼を言い、ラミは当然のことをしたと返す。


「そういえば、ラミちゃんは元の世界で気になる人とかいるの?」

「気になる人も何も、私結婚してるよ」

「え」


 桃覇は大声を出して驚きそうになるのを何とか堪えた。


「そんなに驚くことじゃないでしょ。私、1500歳よ」

「そんなこと言われても全くイメージが湧かないよ」

「まぁ、こんな小さいなりじゃそう思われても仕方ないか」

「元々は大人の姿だったんだっけ? このまま成長した姿なら綺麗だろうなぁ」

「もちろんよ。自分で言うのも難だけど、絶世の美女ってやつよ。それが……あいつのミスのせいで……」


 ラミは怒りで僅かに震える


「まぁまぁ、落ち着いて」


 ラミは動きを止め、落ち着いた。


「でも、しばらくすれば元の姿に戻れなくないし、すぐに戻そうと思えばできなくもないのよね」

「そうなの?」

「そうよ。色々と問題があるからしないけどね」

「そうなんだ」


 ふむふむと肯く、桃覇。


「それで、ラミちゃんの夫はどんな人なの?」

「身長が三メートルぐらいあって、筋骨隆々で私みたいに角が生えてるわ」

「へ、へぇー」


 桃覇はその姿を想像するが、化け物のようなものしか思い浮かばなかった。


「規律とかに厳しくてね。結構お堅いのよ。私が小さい頃から一緒に居るからそんなところも悪いとは思えないけどね」

「幼馴染なの?」

「幼馴染というか、元々は私の教育係だったのよ。今は夫兼従者だけど」

「そ、そうなんだぁ」


 文字通り世界が違うから、ここまでの差があるのだろうと納得する桃覇だった。



______________



 英雄は、舞と会話を重ねることで次第に仲良くなっていた。最初は無表情か、暗い表情しか見せなかった舞だったが、少しずつ笑顔が増えてきていた。


「そういえば、お兄さんってモテるんですか?」

「いや、全然」

「そうなんですか? 面白いし、とってもカッコイイのに」

「実は俺の見た目で近寄る女子はいないでもないんだけど、俺の中身を知って離れてくのが多いよ」

「そんなの信じられないです。きっとその人たちにはお兄さんの良さがわからないのですね……そうだ! 私と付き合ってみませんか」

「それはさすがにちょっと……」


 想像しただけで世間の目が痛い。


「そ、そうですよね。歳が離れてますし、従兄妹ですし」


 笑顔になっていたのに、暗くなっていく表情を見て英雄は慌てた。


「で、でも、舞ちゃんが大きくなってもその気持ちでいるんだったらいいよ」

「本当ですか!?」

「もちろん」

「約束ですよ」

「あぁ」


 英雄は子供だと思って適当に言ってしまったが、舞は本気だった。それで、今後後悔するとか、しないとか。


「そういえば、おじいちゃんってどんな人だったんですか? 私、小さかったから記憶に無くて」


 英雄の表情が消える。


「悪い所と良い所、先にどっち聞きたい?」

「そ、それじゃぁ、悪い所からで」

「嘘吐き。それに女たらし」


 英雄は小学生相手に何を言ってしまっているんだろうと少し自己嫌悪しながら続ける。


「ちなみに女たらしっていうのは、簡単に言えばいろんな女の人と付き合おうとする男だ」

「いや、なんとなくわかりますけど……」

「自分を大きく見せようとして、自分が如何に勇敢かを嘘のエピソードを交えて話す。おまけに、人の名前まで変なのにして……!」


 罵りの言葉は絶えず、言うことがなくなっても屑、馬鹿、アホ、とにかく言い続けた。


「お、お兄さん、落ち着いて」

「ご、ごめん。気分悪いよね」


 英雄は言う言葉も無くなり、舞の言葉で我に返った。


「いいえ。でも、そんなに悪く言うおじいちゃんなのに良い所もあるんですよね」

「あぁ、そうだよ。ある意味、嘘吐きと同じことなんだけど、あいつの語る言葉には夢があったんだ。自分はいつか本物のヒーローになれるんじゃないかって本気で思わされていたから」

「きっとお兄さんは今からでも本物のヒーローになれますよ」

「そうかな?」

「そうですよ」


 舞が大人び過ぎているため、英雄はそれが気遣いによる言葉のように思えてしまったが、少しだけ救われたような気がした。

 この時、目的地はもう目と鼻の先と言ったところだった。


だいたいしかあってない次回予告


英雄「ようやく海に着いた……」


舞&ラ&桃「海だー!」


英雄「楽しそうなことで」


ラミ「折角だし、もう少し楽しんだら?」


英雄「それもそうだな」


???「それはどうかな」


英雄「誰だよ。ってか、誰だよ……ホントに誰?」



天城「だいたいこんな感じ『かもしれない』次回「浜辺に潜む光」是非見てくださ

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