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1-6 リアルゲーム

 さっきから自分の中のオンラインゲームの常識をぶち壊しにかかってくるこの受付の男性は、終始営業スマイルを崩さず、驚きの言葉を遠慮なく投げてくる。

 もはやこの人の名札に書かれた名前が『山田太郎』だという事にツッコミを入れようと思っていた事すら吹き飛んで、リアルとゲームで同じ時間が流れるという衝撃的な内容に、どう対処すればいいのかを必死に考えていた。

 ただ、話を聞きながら気付かれないように2番窓口の女性の名札を流し見たら、『佐藤アンダーソン』と書かれていた事にだけは何としてもツッコむぞという気概だけは持ち続けたい。


 そもそも、ゲームの世界はほぼすべて現実よりも早く時間が過ぎていく。いや、時間という概念よりも、昼と夜の入れ替わりが2時間ごとのように、リアルよりも早くなっているのだ。

 そうでなければ、仕事があるサラリーマンや学生がログイン出来るのは夜で、ログインしたらゲームの世界も夜ばっかりなんて、普通は嫌になると思う。

 それがone’s onlineに適応されているという事は、サラリーマンである自分も、平日はゲーム世界で夜しかプレイ出来ないってことになる。


せめて日本時間と丸12時間ずらして欲しいものだ。


「他にもフィールド上での事や町での事など、色々とリアルな世界と同じ感覚をお持ちいただけるようになっておりますので、そのあたりは、次のチュートリアルを担当します者から詳しく聞けると思いますので、そちらでどんどん質問していただければと思います。」


「ではここで、大まかなシステム的な内容でのご質問がありましたら、お答え出来る権限の範囲内でのみお答えさせて頂きます。何かご質問はございますか?」


来た、質問タイム!! 聞きたいことが多すぎてヤバい。


「えーっと、じゃぁまず確認なんだけど、死んだら終わりってことで、プレーヤーからPKで殺されても、何の救済措置も無いまま終わっちゃうんですか?」


「はい。リアルワールドで誰かに殺されても、誰も救済してくれないのと同様に、この世界でも同じ事が適応されます。」


「じゃぁ殺されないために、プレーヤーたちはPKしまくる世界になってしまう可能性もあるかと思いますが、それは公式でOKだということになるのですか?」


「たとえば神崎様がリアルワールドで誰かを殺したらどうなりますか?」

「そりゃ警察につかまって裁判で裁かれる」

「でしたら、よりリアルワールドに近い設定になっているone’s onlineでも、そうなるかも知れません。」


 ・・・・・警察が居る? ファンタジーだと騎士団?

 まぁいい、次だ。


「次の質問ですが、現実と同じ24時間がゲーム内時間だと、自分のログインできる時間が夜だけになってしまうんですが、そのあたりは、日本と時差があったりするんですか?」


「おや? 神崎様の住まわれている星は、どの場所でも同じ時間に日が暮れて、同じ時間に日が昇るのでしょうか?」


 質問に質問で返されてしまったが、言いたいことは理解できたぞ。

そういうことか。one’s onlineの世界も地球のように球体なんだ。つまり、ログインする時間が昼間になる場所に行けと・・・


「チュートリアルが終わった後に、一番初めに転送される場所だけはおおまかに選べますので、そこで時間をうまく調整していただければと思います。」

「なるほど、わかりました。」


「では、ご質問は一度締め切らせて下さい。次のチュートリアル中に質問できる時間が十分にありますので、そちらに移りたいと思います。」

「はい、お願いします」


「まず、こちらの紙をお持ちいただき、左側に大雑把でいいですので、現実世界の自分を想像して紙の上に写真を写すようなイメージを行って下さい。次に右側に、なりたい自分の姿を、こちらも大雑把に想像して、それを描くイメージを行って下さい。」


 なるほど、キャラクタークリエイトの時間ってわけか。他のゲームとはずいぶん違うやり方だが、左側は簡単なのでどうでもいいけど、問題は右側だよな。どうもこの世界は異常なほどリアル寄りに設定されている感じがするので、恐らくファンタジーだとすると、魔法なしファンタジーだろう。ここで普段やっているオンラインゲームの魔法使いを想像したら痛い目を見そうなので却下だ。次に、メイン職である剣と盾を考えてみるが、ここまでリアル寄りだと、下手するとバトルも相当ガチな感じになるんじゃないかな。


 リアルなモンスター相手にリアルファイトって・・・無理だぁ・・・考えただけでゾッとする。

別に脳筋じゃないと思うし、というわけで、ファイター系前衛職も却下だ。


 じゃぁ残ったのは魔法なしで後衛に付けるキャラ職って、やっぱ弓エルフだよなぁ。うん、悪くないんじゃないか? 普段あんまり選ばないポジションだし。

 万が一倒した敵がリアルすぎてグロい表示になったとしても、後衛弓担当なら、近寄らずに済むだろう。よし、そうと決まれば早速イメージイメージ・・・


 紙にはイメージした写真のような絵が一瞬映って消えていった。


「これでいいですか?」


「はい、けっこうです。では、このままチュートリアルに移りますか?それとも今日はログアウトして、後日チュートリアルの始めから行いますか?」


 今何時だ?とHMDで時間表示を出そうと思ったが、受付の男の後方の壁には、時計が普通に掛けられていた。


23:40


24時間営業の市役所なのか、ここは。


「今日はこの辺でやめときます。明日ログインしたら、どこから始まるんですか?」

「ログインされますと、初めてここに来た時に座っていた場所に現れると思います。ただし、一度チュートリアルが始まりますと、その後はお話させていただい通り、アバターは残り続ける事になりますので、ご注意ください。」

「チュートリアル中にログアウトする場合は、どうするんですか?」

「チュートリアルエリアには、仮眠室が個室で用意されております。その部屋は無料でお使いいただけますので、そちらでカギを掛けてアバターを寝かしてログアウトすれば、他の方が入ってくる事はございません」


 なるほど。ゲームが始まっても、そんな感じで休めばいいわけだ。宿屋ってそんな長い時間部屋を貸してくれるんだろうか。


 「今日は有難うございました。この辺でログアウトします。」

 「はい。では、また次の機会にお会いいたしましょう」


 意識をログアウトすることに向けると、HMDがログアウトコマンドを実行した。


 だんだんとブラックアウトしていくモニターを眺めながら気付いた。


 あ、GMなのかNPCなのか聞くの忘れた・・・


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