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1-2 公式サイト

 今日は一日中落ち着かなかった。といっても30歳ともなればイイ大人なので、仕事でミス連発とか、そういったテンプレ的な状況にはならず、上司や同僚からの飲みの誘いも、月初めのしかも月曜からなんて有りえない。きっちり5時の定時で仕事も切り上げて足早に帰宅した。


 PCを立ち上げながらHMDとモーションコントローラーに配線を差し込んで、充電しつつPCとの同期を図る。ハーフキャップをかぶってスピーカー部分の耳触りをしっくりくる位置に微調整し、額部分にせり上がっているディスプレイをスライドさせて目の前に下ろすと、すでにPCの画面が立ち上がっていた。


「さて、早速検索検索っと」


one's online 検索


 もちろん、音声入力は使わない。ゲーム中もこの家では使ったことが無い。隣に丸聞こえでPRGのパーティープレイの内容を叫ぶなんて、どんな羞恥プレイだよ。


 最新機種のHMDに搭載された、たしか第3世代型とか言ってた脳波入力デバイスが早速思考を感じ取ったのか、検索画面に文字を入力して検索ボタンが押されていた。最新型は反応が驚くほど早い。

 ゲームの中で唱えてる魔法よりも、こっちの方が魔法的な気がしてくるって商品の購入レビューで書かれていたのも頷ける。


「たしか昨日見たのは検索の8ページ目だったか。」


 ページをめくっていくと、5ページ目に『one’s online 公式ホームページ』の文字を見つけた。順位が上がっているってことは、自分以外にも検索してページを開いている人が少なからず居るという事に他ならない。早速そのページを開いてみることにした。


「なんて言うか・・・ツッコミどころが満載というか、怪しさ満載というか・・・釣りなのか?新手のフィッシングサイト?」


MMORPG one’s online の世界へようこそ


おれたちが本当にやりたかったゲームを作りました。

おれたちの為のオンラインゲームです。

もし、昨今のオンラインゲームに虚無感を感じていたら、

是非一度、『one’s online』をプレイしてみてください。


次へ>>



 通常、昨今のMMORPG系オンラインゲームは、HMDが必須になっていて、その公式ホームページももちろん、HMDで見ればそれに対応したリアルで過剰な演出がなされていて、いきなりその世界観に引きずり込まれるんだが。


 音が無いのは良いとしよう。まぁ妥協しよう。

だが何というか、まず背景の静止画が、ベタなファンタジーの中世時代の町の様子が描かれているのだが、普通すぎる。RPGのゲームキャラっぽいのも、敵キャラっぽいのも描かれていないし、そもそもゲームっぽい場所でもない。現実世界の実際の中世ヨーロッパの田舎町の写真を一コマ、ゲーム画面ぽくして貼っただけの静止画だった。そんな時代にカメラなんてないんだけどね。

 そしてその上に重ねられたテキストと、今時使ってるヤツなんて居ないだろう、次へ>>のリンク文字が、かなり昔のホームページを彷彿とさせる。


「そういや親父が趣味で作っていたらしいホームページもたしか、こんな古臭いヤツだったなぁ」


 正直、次へ>> を押すのがひどく躊躇われるのだが、ここまで来たら最後まで付き合ってやるかと、ページをめくってみることにした。


 次のページには、プログラムのダウンロード方法やインストールについての説明、PCの設定方法や必要スペックなどなど、ゲームを始める為の準備段階の情報が書かれていたのだが、その最後の方に、あまりにも重要な内容が、さらっと記載されていたのには驚いた。


対応HMDの型番


 そう、先月の誕生日に無理して買い揃えた、HMDとモーションコントローラーの型番だけが、そこに書かれてあった。


「機種指定で、しかも一種類だけって・・・たしか一年前のSNSにもそんな風なことが書いてあったっけ・・・」


 ラッキーな自分に浮かれる事が出来るほど、まだこの公式ホームページとやらを信用しきれていない自分に苦笑いしながら、もう見慣れた 次へ>>のボタンを躊躇いも無く押してしまっていた。



このゲームは、ファンタジー系MMORPGに分類されると思います。

また視界はFPSのような一人称視点固定です。ゲーム内の情報や操作方法などはすべて、ログイン後のチュートリアルより実体験で学んでいただきます。

このゲームは営利目的の運営を行っていませんので、ゲーム世界にそぐわないと判断された場合は、チュートリアルの段階で強制アカウント削除の対象となります。

アカウントが削除されますと、二度とログインできなくなりますので、予めご了承ください。判断基準など、ゲーム内のすべての情報は、チュートリアルより実体験で学んでいただきます。

それでは、one’s onlineの世界で、よりよきゲームライフが送れますように。

ダウンロード>>



「・・・・・怪しすぎる・・・・が、ちょっと気になる・・・・」

 そもそもゲームなのに、そぐわないと判断されるって、どんな人間失格なヤツなんだろうか。それに二度とログインできないって、アカウント取りなおしてもダメなのか?

 PC変えたり回線変えたりすれば問題ないはずだから、実際オンラインゲームで不正行為なんかでBANされても、懲りずにまた現れるヤツもいるんだよね、アカウント取りなおして名前変えたりして。あと、そぐわないかどうか、誰が判断するんだろうか?

「GMが居るんだろうな、きっと」


 それより、本当にウイルスやフィッシング詐欺じゃないかどうかの心配があるのだが、気にしすぎるに越したことは無い。

 セキュリティソフトも有名会社の有料のものをインストールしているし、PCとHMD両方にハードウェアセキュリティも入っている。大丈夫だ・・・きっと・・・


 新しいゲームの世界に期待しているはずが、違った意味でドキドキしながらダウンロードボタンを押してプログラムをダウンロードするのだった。


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