二章 きゃあああああ 編
何とか告白した俺、当分節約となったが。
夏を連れアパートへ、ところが・・・・・
「こんなに無理しないでよ」
「前から気に入ってたんだ、夏の誕生石
だったし」
「嬉しくないわけないよ、ありがと」
「もう1つ、そっちはアパート」
「あのまんま?」
「変わったとすれば、テレビ」
「そっか」
海はちらりと助手席を見る。
「オヤジ臭い、思い出し笑い?」
「その席も、化け猫に先超されたなと思って」
「またあたしそんなに猫顔?誰の先?」
「逆、それと化け猫はお前じゃない」
「悪い薬でも覚えた?」
「すぐにわかる、その代わり驚くなよ」
相変わらず狭い駐車スペースに
車が収まった。
「これ、作ったんだ。ガレージしてるじゃん」
「大家さん、夏のオヤジさんが材料くれた」
「マツダ馬鹿としては、許せなかったんだ」
「だと思う、外置きの頃はワックスくれたし」
「海外の何たらって高いやつ」
「そう、それ」
これを驚くなと言われたと思っている夏。
「どこに猫?」
「入ったら説明する」
見せるのが何より、口で言われて
信じる夏じゃない。
「へえ~キレイにしてある、よしよし」
にゃ~。
「本当に居るんだ」
「何だと思ってたんだ」
「下心」
またまた、にゃ~にゃ~。
「猫も言ってる」
夏が声に誘われていく。
「かわい~い」
「だろ、かわいいだろそのでぶ・・・んなぁにいいいいい」
夏の手に居る・・いるけど小さいぞ、どこ行った。
(変わり身の術なんて、中々やってくれるなぁ、
ベッドの下、テレビ台の裏、ん~~ん押入れか)
「なにしてんの、ここに居るでしょ」
「いや・・・もう一匹」
「居ないよ」
「いや、夏居る、でかいのが」
「私じゃないよ」
「夏じゃないのはわかってる」
「だから私が言ったんじゃない」
「わかってる・・・え?」
振り返った俺、夏は俺と小さな猫とを交互に見て
ぽかんとしている。
あまりのことに、子猫をベッドの上に放った。
「こいつ・・なのか」
「だって他に誰が居んの」
「おれと夏と、こいつ」
「お帰り、お二人さん」
「きゃあああああああ」
「ちょっと、夏落ち着いて、もう一回見てみ」
「言ってよ、ロボットなら最初に」
俺もそう思ったよ、最初に会ったとき言ったでしょ。
右足を舐め出した、ほらそれって、なんでだあああああ。
なんでえええ小さくなってんだあああ。
「夏、訳はそれ見てから、右足じゃなくって右手」
右手を見てる。
「夏のじゃない、寄生獣じゃないんだから、猫、猫の手」
「三本・・線?・・・・アディダス?」
歩み寄る猫、下がっていく夏。
「昼に会った時言っただろ、こいつだったんだアディダス」
「絶対うそ、あれから何年経ったと思ってるのよ」
「だから、昼見た時はこ~んな大きくそうそうって・・」
「きゃああああああああ」
まるで空気を入れたボールのように、デブ猫になった。
「なっちゃん、驚かせてごめん」
「もういいから、早くスイッチ、スイッチ切って」
「切ってって、あれば俺だって切りたいよ、無いでしょ本物には」
「あるあるある、絶対ある切ってくれなきゃ、きゃあ来ないで」
「拾ってくれた時はあんなにやさしかったのに」
「きゃあああああ、え?ロボットは拾った時居ない・・ぇぇぇぇぇぇえええ」
恐る恐る指を出した夏、試したいことがあった。
それは、ここに居る俺と夏しか知らない、アディ
ダスの癖だった。
鼻っ面に指先が触れた、後ろを向いてしまったアディダスが
ゆっくりと夏の指にカギ状になった尾を引っ掛けた。
「きゃあああああああ」
(だめか・・かわいそうな)
「アディダスぅぅぅぅぅぅ」
「うぎゅぅ」
「ちょっと、夏死ぬぞせっかく会えたのに」
「ほんと、驚きすぎて死にそうぅぅぅう」
「アディダスがだあああ」
再会を果たしたばかりのアディダスは危なく
再開の日が命日になってしまうところだった。
アディダス・・・夏と俺がいつものように海に出かけた、付き合い始めたばかりの俺たち、夏の指差した方向に海に浮かぶ流木に掴まっている子猫が。
陸上で鍛えた足は、俺よりも早く海に飛び込んでいた。助かった子猫の右足には
くっきりと白い三本のストライプが。これがアディダスとの出会いだった。
如何でしたでしょうか、また三章で会いましょう。
ありがとうございました・・・黒子でした。