最終章 ライバル現れやっぱ魔ねき猫編
ここまでお付き合いくださった方々、これが最終章といたします。
理由につきましては、後書きで。
お付き合いください。
麓に下りるまで、膨れ気味の菜穂は出番のなかった
自慢の新作というエアーガンを手にぶつぶつ言っている。
「そんなことがあったんかい、どうして呼ばないかなぁ」
「急だったし、彼との時間を引き裂くわけにも、だろ」
「あいつ別れた」
「はい?」
昨日の今日だぞ、話の中じゃ付き合って五日って。
「ゲームは弱いし、あれが下手」
「っぷぅほっ・・・」
せっかく噛んだばかりのガムが、アディーの額に当たり転がり落ちていった。
「それは今からいくらでも上達するだろうし、御曹司だぞ
今から考え直して、すぐにメールしろ」
「それより、この猫の飼い主は?」
「帰ってからだけど、メール」
「よし、二匹のアメショーは引き受ける」
そりゃ有難い、ってメールだろ、メール。
「ホントにいいのか」
いろんな意味で。
「ああ、仕事場でも看板猫として連れていけるし、問題ない」
「だってさ、コイツんちも裕福だから、妹に肉食わせてやれるぞ」
「肉?、牛でも豚でも、ワニでもいいぞ」
「ワニはないだろ、さすがに」
それが、最近知り合ったオタクゲーマー友達が、送って来たらしい。
ワニの肉送るオタクゲーマー、やばくねえか。
「美味かったか」
聞くだろ、誰でも。
「今日お前んとこで食うつもりで、水槽で泳いでる」
俺はまたも噛み始めようと口に放ったばかりのガムを
噴き出した。
一日に二度も額にガムを当てられたアディーが、怪訝そうな
目を向け、そっぽを向いた。
「生きてんのかよ、それは肉とは違うペットだ」
「夏の親父に貰ってもらおうと連絡した」
「したら?」
「お前の家に池作るらしい、だからお前のペットだな」
なにいいい、家には既に話す猫っていう珍獣がいるんだぞ、其処にワニ?
ってブルーも懐いてんじゃねえ、夏~って居ないし。
「まあいいや、その代わりに社長にこいつ等飼ってもらう」
「ははははは、どっちにしても面倒見るのはお前と夏だ」
「う・・・そうかも・・いや確実だ」
世界中どこ探しても、ことばを話す猫が五匹もいるとこ
無いだろ、こういう場合は事情は話すのか面倒見るのは
俺たちだからいいのか、うう~ん。
麓に下りた俺たちは、日に焼けた太い腕を振る
樹奈の親父に深々と頭を下げた。
到着を待っていた、スーパーの店員らしき女性が
段ボール箱を五箱ほど積み込んだ。
「おっと、家の樹奈が近いうちそっち行くと思う
そん時はよろしくな、プレーボーイ」
「俺のこと?」
「ははは、社長に宜しく嬢ちゃん、姉ちゃんもまたな」
すれ違いざまに、店員の女性の尻を撫でていった。
何時ものことなのか、あかんべ―のあとは怒ってもいない。
「あああ、おいしそうこれ売ってます?」
「え、ええ」
「じゃあ全部」
驚きながら、十個ほどあった梨を取り出した。
「夏、ちょっと持ってて」
小走りに、すぐ目の前の川で梨を洗って来た菜穂。
「くう~たまんないね」
「おいしい・・・」
「うまい・・・」
「行きますか・・・」
菜穂の乗って来たちょっと痛車っぽいワンボックスに
乗り込んだ瞬間、疲れがどっと出た気がした。
「そういえば、初めに行った場所に、
悪戯された親父車があったぞ」
「うそだろ」
「ああうそだ」
「早く行ってくれ」
元気なのは菜穂一人、俺も夏も丁度いい揺れに
いつの間にか眠っていた。
久しぶりの我がアパートで。
疲れ切っていた俺を待っていたのは、五匹の猫洗いと
洗車だったのは言うまでもない。
最近、ブルーの意外な才能が開花されたらしく
妹猫の見守る中、夜遅くまでゲームを競い合う
オタクゲーマーと、しゃべる猫の姿が菜穂の部屋に
あるという。
さらに、あれから何度も復縁をせまる御曹司からの
メール。
返信は一切していないそう。
ライバルを見つけてしまったオタクゲーマーの
結婚は当分先のようだ。
今の俺の仕事?ワニの池付のマイホームのデザインさ。
一度に沢山のことが重なったけど、いい方向に向かってる
のかな、六匹の内五匹が話す猫、夏も帰って来たし、もしかして
アディーって、招き猫・・・いや魔ねき猫だったのかも。
夜は決まって、母猫の肩たたきと雑談が日課になってる。
ふあ~あ、眠くなってきた・・・・お休み・・夏。
こんな感じで終わってしまいましたが、この話でまた続き的なものに興味を持っていただけるのなら、自作もと考えています。
如何でしたでしょうか、またいつかお会い出来たら・・・・
本当に有難う御座いました。 不器用な黒子