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HUGスペース物語  作者: さゆまる
妄想編
4/26

第4話:心の共鳴、動き出す歯車

目の前に広がるメタバース空間は、想像を絶するほど美しかった。

そこでは、世界中から集まった「居場所を求める仲間たち」が、アバターを通して自由に語り合っている。

「ねえ、見て。これが僕の作っている『深海庭園』だよ」

カイトが空中に投影したのは、汚染された海を浄化しながら、美しいサンゴ礁を蘇らせるシミュレーションだった。

現実ではまだ難しい技術も、このHUGスペースのシステムの中では、詳細なデータに基づいた「実現可能な未来」として動いている。

少女の視界の端に、小さな通知が浮かんだ。

それは、他のフロアにいる別の誰かからの、小さな「助けて」の声だった。

「……ここでは、誰かが独りぼっちになることはないんだね」

少女が呟くと、カイトは力強く頷いた。

「そう。ここは孤独をクリエイティブな力に変える場所。君がさっき触れた光のパネル……それは、君が誰かの相談に乗ったり、物語を共有したりするためのインターフェースなんだ」

少女は、震える指先でそのパネルを操作してみた。

自分が書いた物語の断片をそっと流してみると、瞬く間に世界中の誰かから「温かい反応」が返ってくる。

「私の言葉が……誰かに届いてる」

その瞬間、少女の中で何かがカチリと音を立てて噛み合った。

ただ守られるだけだった存在から、誰かの心を灯す存在へ。

虹色のビルの中で、また一つ、新しいプロジェクトが産声を上げた。

このビルの設計図には、まだ空白の部分がたくさんある。

けれど、そこに何を描き込むかは、ここに集まる一人ひとりの自由に任されているのだ。パネルを流れていく温かい言葉の数々に、少女の瞳が潤む。

それは、今まで現実の世界では決して受け取ることのできなかった、純粋な「肯定」の光だった。

「カイト、私……この物語の続きを、もっとたくさんの人に届けたい。それで、私と同じように夜が怖くて眠れない子の隣に、そっと置いてあげたいの」

カイトは満足そうに微笑み、一通の特別なメッセージを開いた。

「それなら、ちょうどいい『依頼』が来ているよ。あるフロアで、どうしても自分に自信が持てなくて、一歩も部屋から出られない子がいるんだ。君の物語を、その子のために語ってみないか?」

少女の心臓がどきりと跳ねた。

自分が書く言葉が、誰かの現実を変えるかもしれない。

それは、この虹色のビルが持つ本当の力——「共鳴」が始まる合図だった。

少女はゆっくりと立ち上がり、カイトが指し示した次のフロアへと向かう。

そこには、彼女を待っている「最初の一人」がいるはずだ。

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