生存者について
生存者のバイアスという言葉をご存知でしょうか。
私たちは、特に、「うまくいった人」の話ばかりを目にします。
成功者の習慣、成功者の考え方、成功者の人生。
そうした話は魅力的で、つい自分も同じようにすればうまくいくのではないかと思ってしまいます。
しかし、ここにひとつの落とし穴があります。
心理学でいう「生存者バイアス」です。
これは、成功した人や生き残った人ばかりを見てしまい、途中でうまくいかなかった多くの人の存在を見落としてしまう認識の偏りのことです。
たとえば、災害で生き残った人の体験談ばかりが注目され、犠牲になった人々の具体的な体験があまり活かされない事があります。
また、「この勉強法で合格しました」という話があります。
けれども、その勉強法を試して合格できなかった人の声は、あまり表に出てきません。
成功者の言葉は本になり、記事になり、SNSで広がりますが、うまくいかなかった人の経験は埋もれていきます。
そのため私たちは、知らず知らずのうちにこう思ってしまいます。
「なぜ自分だけうまくいかないのだろう」と。
けれど、それは努力が足りないからとは限りません。
ただ、見えていないだけなのです。
実際には、同じように挑戦し、同じように悩み、同じように壁にぶつかった人がたくさんいます。
ただ、その声が目立たないだけなのです。
人の人生は、成功した物語だけでできているわけではありません。
むしろ、試して、迷って、遠回りして、立ち止まって、また歩き出す。
そうした時間の積み重ねでできています。
もしあなたが今、誰かの成功と自分を比べて苦しくなっているのなら、少しだけ思い出してみてください。
この世界には、語られていない物語のほうが、ずっと多いということを。
そして、あなたの歩いている道もまた、その大切な物語のひとつです。
成功の形は一つではありません。
人知れず続けている努力も、立ち止まりながら考えている時間も、
すべてが人生の確かな一歩です。
生存者バイアスは、世界を少し狭く見せてしまいます。
だからこそ、ときどき視線を広げてみてください。
目立つ成功の光だけではなく、その周りにあるたくさんの挑戦や試行錯誤にも目を向けたとき、私たちは一歩前へ進むことができるのです。




