しっとり
難産。ヒロインようやく出せます。
あれから数日……。
避難してきたと思われる人が増えてきました。
おにーさんとおねーさんは詳しく話を聞いてまわりました。
その人たちから話を聞いた限り、やはり熊のような生物に襲われているようです。
残念なことに、何か所かの集落はすでに壊滅しているようです。
さらに数日……。
いかにも命辛々という人たちが増えてきました。
このに辿り着いてもそのまま散る命もありました。
聞けた限りでは、敵の勢力はどんどん増しているようで熊みたいなもの以外も増えているようです。
また聞けた数は少ないですが、熊のようなものの背中に何かを見たという人もいました。
おにーさんとおねーさんは可能な限り助けようとしていますが、焼け石に水となってきました。
そのとき、ハヤタが山の警戒から帰ってきました。
「大変だ、山にも傷ついた動物が増えている。」
と叫びました。
なんということでしょう、人だけでなく動物も襲われていて避難してきていたようです。
ハヤタはその中から特にひどい怪我をしている子だけチャとともに連れて帰ってきていました。
おにーさんは人々の治療をおねーさんに一旦まかせて、ハヤタと一緒に動物の治療を始めます。
治療を進めていく中でおにーさんはハヤタが治療している一匹に目がとまりました。
真っ白い子狐です。かなりめずらしい個体だと思いました。
なにかしらの主に関連しているのではないかと思いましたが確証はありません。
しばらくして……。
避難する人は落ち着いてきましたが、山のほうの忙しなさは日に日に増していきます。
治療の結果ある程度は持ち直すことしましたが、残念ながら救えないものもありました。
保護した動物は回復次第山へと戻しクロシロチャが面倒を見ていますが、白狐だけはハヤタに懐いたのか戻らずそのまま暮らしています。
「うーん、このままここで暮らすつもりなのかなぁ?」
「こん!」
どうやらそのつもりのようです。
「そうなると名前ないと不便だし……あ、女の子だ」
「こん!?!?」
あまりのデリカシーのなさに起こったのかてしてしとパンチを繰り出してきました。
「いてて……女の子かぁ……じゃあ玉藻!今日から玉藻だ」
「こん!」
白狐は玉藻と名付けられました。
玉藻は時にハヤタの頭の上で、時には腕の中で尻尾をぶんぶんと振り回して過ごしました。
また、ご飯、お風呂、寝る時も常にハヤタと一緒にいました。
数日後……。
「こん!」
「わっ!?」
今日も今日とて玉藻はハヤタにべったりです。
小柄な体から大きくジャンプしてハヤタの頭に乗ろうとして顔に乗りました。
かわよかわよ。
「もー、しょうがないなぁ。わしゃわしゃわしゃわしゃ」
ハヤタは顔から玉藻をはがし思う存分撫でてから頭の上に乗せました。
「こん!こん!」
玉藻の尻尾は大回転をして空をも飛びそうです。
「いやはやあの二人の仲の良さはすばらしいな」
「人間同士だったら結ばれそうだね」
避難も落ち着いたため一時の静寂を満喫する一家でした。
しかし、脅威はすぐそばまで迫っているのです。
――
「この星、地球は我ら――がのものとする、そのための準備はすでに放った」
誰かの声が辺りに響く。その声に鼓動するかのように獣の雄たけびが広がる。
「我らが失った星の変わりに地球を新たな故郷とするためにいざ行かん」
声の主が手を挙げると同時に辺り一帯から何かが動く音がする。
そして音が大きくなるにつれ、大地には影が広がる。
「すべては我ら一族のために」
「こん」
玉藻は小さく鳴くと同時に空を見上げ、かの地を方向を見つめる。
それはかの獣の雄たけびと連動するように。
瞳は怪しく輝くが、ハヤタにもおにーさんにもおねーさんにも気づかれない。
そして、山の中でも雄たけびが響き、瞳が怪しく輝く……、獲物を見つけた獣のごとく。
その背中には得体のしれないモノが蠢きつつ。
そして空は黒く輝く……この先の未来を嘆くかのように。
――
長い、長い年月、私は待ち続けていた。
星のクリスタルの加護を持つ光の戦士のことを。
悲劇を止めなければならない。人の光を消す悲劇を。
光が消える歴史を継がせてはならない。
そのために……彼らがならねばならない。