ひとかり
さて、おにーさんとおねーさんはハヤタと名付けた幼子を保護しました。
しかし、ことはそれだけでは終わりません。
クロとシロがワンワンと熊の周りを回っています。
「おっといけない、熊を調べなければ。」
おにーさんはおねーさんにハヤタを渡し、熊へと近づきます。
近づいても熊は微動だにしません、どうやら先の一撃で仕留めたようです。
それに気づいたクロとシロもおとなしくなりました。
「ひとまず、このままにしておくわけにはいかないのでバラしておくか。」
おにーさんは熊の解体を始めます。
外傷が少ないのでいい感じに素材となりそうです。
しかし、解体中気になることがありました。
「頭近くにあったこの針なようなものは一体……?ひとまず保管しておくか。」
熊に針のようなものが埋め込まれていました。しかしそれ以外のことはわかりません。
おにーさんは熊を毛皮、肉、骨、内臓と的確に解体を終えました。
「よし、毛皮と肉、骨は持ち帰るか。」
内臓は使えないと判断し、捨てていくことにします。
クロ、シロはそれを見越して穴を掘っておきました。
おにーさんは内臓を穴の中に入れている合間に、おねーさんはクロとシロを撫でておきます。
「よ-しよしよしよし、賢くていい子だねー。」
クロとシロはわっふわふです。
「じゃあ、この内臓は燃やしておくね。」
おねーさんは腰にこさえた短刀を掲げ、呪を唱えます。
すると、短刀から火が現れ穴に入り込み、内臓を燃やしていきます。
「これで片付けは大丈夫だな、戻って素材を加工せねば。」
緊急クエスト熊退治は終了しました。
おにーさんとおねーさんは毛皮と骨は倉庫に保管し、肉は使う分と加工分と柴ーずの分をきちんと処理しました。
熊退治から5日後、約束より遅れて行商さんがやってきました。
しかし、行商さんは何か慌てているようです。
「イトノクニがフミノクニに派兵して物流が止まったんだ!」
おにーさんとおねーさんは驚き、詳しい話を行商さんから聞きました。
それによると、フミノクニが交易に対し大幅な課税を仕掛けようとしたため、イトニクニが派兵して鎮圧しようとしたようです。
行商さんは少なくても小国間の交易は途絶えるだろうと予測しており、国内物流に切り替えるようでした。
熊の素材を売ったおにーさんとおねーさんは話し合います。
「しかし、いったいなぜフミノクニがそのようなことを?」
「あそこは交易の中心だから成り上がる気なのかな?」
おにーさんとおねーさんはフミノクニが覇権を握ろうとしているのかと考えます。
『それだけではありません。』
庭でチャに乗って遊んでいたハヤタから星のクリスタルの声が聞こえます。
『この星は狙われています。その尖兵がフミノクニを支配しているのです。そしてその一部が生態系を……』
星のクリスタルの声が徐々に小さくなっていき最後まで聞き取ることはできませんでした。
「熊がさっき現れたのもそのせいだよ」
ハヤタが少しだけ引きつぎました。どうもフミノクニで何かが起きその影響で熊が出没しているようです。
「うーむ……何が起きていもいいように準備だけはしておくか。」
おにーさんとおねーさんは準備を丹念に行い備えるようです。
それから一週間、少なくてもおにーさんとおねーさんの周りでは何事もなく過ぎていました。
そこに行商さんがやってきました。
「すこしだけ情報が手に入ったよ、どうやらあれ以来あちこちに熊が増えているようなんだ。それもなんか色とりどりみたいでね。」
どうやらおにーさんとおねーさんの周り以外では大変なことになっていたようです。
普通の熊のほかに赤、青、黄、緑、白といった色の熊が出没しているようです。
「しかも、その熊人を襲うんだけど、連れ去っているみたいで。」
熊とは生態も違うようです。連れ去り先はフミノクニのようですが、目的まではわかりません。
「この星を救うとはもしやこのことか……?」
おにーさんとおねーさんは星のクリスタルはこのことを言っているのかと考えます。
「そしてそれをハヤタが……」
おにーさんとおねーさんは庭でチャと特訓するハヤタに目を向けます。
「ハヤタだけに背負わすわけにはいくまい。」
おにーさんとおねーさんもまた大きな運命が待っているのだと予感します。
地球は狙われている!今、未知なる相手から恐るべき侵略の魔の手が!
ここは、この星を救うために光の戦士が集まる地である。
横数メートルに渡り建てられたこの家には、最高の設備があり、最新鋭の武器が置かれていた。
そして、おにーさんとおねーさんと柴ーずとハヤタがその目を光らせていた。
今、小国が相手にしようとしているのは、恐るべき宇宙人なのである。
やつらは地球を侵略するためフミノクニを拠点として実験用の人間の標本を集めているのです。
だが、それも終わり奴らは次の行動に移ろうとしている。