しばかり
昔、昔、あるところに、おにーさんとおねーさんがありました。
毎日、おにーさんは山へ柴狩りに、おねーさんは海川へ柴狩りに行きました。
お留守番の柴は家の周りを見回り、畑や塩田を守っていました。
おにーさんは山でキノコや山菜、罠で捕らえた野生動物を持ち帰ってきました。
おねーさんは海川で海藻や魚、海水を持ち帰ってきました。
おにーさんとおねーさんは持ち帰った素材からご飯処を営み非常に繁盛させ、うはうはに暮らしておりました。
ある日、おにーさんがいつものように山へ柴狩りに出かけると、いつもよりキノコや山菜が少なく感じました。
その代わり、罠にいつもよりウサギがかかっていました。
おにーさんは不思議に思いながらも、お供の柴に周りの警戒を頼み、ウサギの血抜きをはじめました。
一部のウサギはその場でバラしチタタプにします。
おにーさんがチタタプ、チタタプしていると、お供の柴の鳴き声が聞こえました。
「やや、クロの鳴き声?いったい何があったというのだ?」
おにーさんはチタタプを中断し鳴き声のする方向へと向かいました。
「わんわんわんわん!」
おにーさんがクロのもとにたどり着くと、そこには倒れた木がありました。
そして周囲の木には大きな爪痕がありました。
「これはもしや熊が出たか、いったいいつ頃だ?」
おにーさんはクロに警戒を続けさせ、自身も注意を配りながら辺り一帯を調査しました。
調査したところ、爪痕以外にも熊の痕跡が残っていました。
おにーさんは該当する熊の調査ポイントを貯めました。
それによると、比較的最近に熊が現れたようで、よそから乱入してきたようです。
ただし、この場からはすでに去っているようです。
「これはいけない、すぐに戻って対策を練らなければ。」
おにーさんは獲物の回収と自身の痕跡消しを行い、注意深く山を下って行きます。
「む?今なにか山中なのに地肌が見えたような……確認している暇はないな。」
おにーさんは山中にもかかわらず広場のような場所を見かけたようですが、熊に襲われる可能性があるためそのまま家に帰りました。
「おねーさんや、山に熊が出たようだ。しばらく山の幸は期待できん。」
おにーさんはおねーさんに今日の出来事を報告しご飯処のメニューを再考することにしました。
「しょうがないね。熊を退治できるまでは海川の幸をメインに据えようか。」
ご飯処のメニューは海川の幸がメインとなることが決まりました。
「次の行商で対熊装備を整えてやるしかあるまい。」
緊急クエスト熊退治が発行されました。
「いらっしゃいませー」
行商が来るまであと5日あるので通常通りご飯処を営業します。
「おや?山の幸のシーズンと思ったが海川の幸がメインなんだね?」
今日も客入りは御礼ですが、常連さんはメニューの違いに気づきました。
「山のほうで熊が出ましてな、狩りを縮小しております。」
「そうかぁ、熊かぁ。気を付けないとね。退治にはいくんだろう?」
「はい、次の行商で装備を整えてから向かいます。なのでその時は申し訳ないですが2,3日お休みになります。」
「あい、わかった。ほかの人たちにも伝えておこう。」
常連さんのネットワークによりお客さんも山のほうには向かわず被害は出ませんでした。
「聞いたよ!熊が出たから装備がいるんだって?」
そして5日後、行商さんが話を聞いてやってきました。当然対熊装備をきちんと仕入れて持ってきてくれました。凄腕です。
「催涙スプレーとアックス、ハンマー、笛と防具だね、仕入れられたのは。」
行商さんからアックスとハンマー、防具の購入しました。
「毎度あり!熊仕留めたらいつものように毛皮は引き取るからね!時期的には10日後くらいでいいかい?」
「10日後でお願いしますね、そのころには仕留めたうえでバラせていると思いますから。」
おねーさんは無事対熊装備の購入と次の商談をまとめました。
購入した防具をおにーさんに渡しサイズ調整を行ってもらいます。
おねーさんはその間にハンマーを振り回し訓練を行います。
サイズ調整を終えたおにーさんはアックスを担ぎ斬撃とガードの訓練を行います。
訓練を終えたおにーさんとおねーさんはご飯処に休業と書き、お供の柴を連れて入山します。
「クロ、シロ。警戒は頼むぞ。」
クロとシロを前へ出し周囲の警戒を行わせます。
「チャは後ろを頼むね。」
チャは後ろに回しバックスタブを警戒させます。
しかし、残念ながら初日は熊を発見することはできませんでした。
日も暮れそうなのでおにーさんとおねーさんは下山します。
その道中、前回も見かけた広場のように開けた場所を見つけます。
「ねえ、あの場所っていったい……?」
前回見かけたときは気のせいかと思ったおにーさんですが、おねーさんも気づいたことから気のせいではないと気づきました。
「この間も見かけたが山中であれはおかしい、時間はまだ少しあるから調査するか。」
おにーさんとおねーさんは件の場所を調査することにしました。
もちろん周囲はお供の柴が行います。
「うぅん……広場にしか見えんな。」
よくわかりませんが人為的に作られた広場のようです。
木は根から伐採され通行の邪魔にならないよう、土はきちんと固められ歩きやすいよう。
ただ、一点丸太が無造作に置かれている箇所がありました。そこは若干柔らかくなっており体が痛まないように工夫がされていました。
「丸太のある個所はよくわからないけど……人がいるのかしら?」
調査した結果は人の痕跡はあれど何を意味するのかよくわからないものでした。
そのこれがすべての始まり。
この国を築く御伽噺の第1節、一人目の光の戦士との邂逅。