オタク視点でのガザ地区紛争
あなたは水木しげる原作の『悪魔くん』をご存知でしょうか。
主人公の悪魔くんが『ソロモンの笛』で悪魔メフィストを召喚し、使役する物語です。
これまでに主人公や設定の異なる複数の作品が描かれており、実写ドラマ化やアニメ化もしています。
2023年11月には動画配信サービスで『悪魔くん』の新作アニメも作られています。
古代ソロモン王のゆかりの地・イスラエルで発生しているのがパレスチナ問題であり、ガザ地区紛争もその一つです。
当エッセイは武 頼庵(藤谷 K介)様の『24夏のエッセイ祭り企画』にも参加しています。
イスラエルのガザ地区での抗争が、連日のように大きなニュースとなっています。
ガザ地区を支配するイスラム組織ハマスと、ユダヤ人を中心とするイスラエル軍との抗争が続いています。
両陣営によるミサイル攻撃の応酬は何年も前から発生していますが、今回は民間人を巻き込んだ大規模なものです。
この紛争の背後には長い歴史があり、その経緯を振り返りましょう。
イスラエルは地中海に面し、エジプトの北東側に位置しています。
この地域はパレスチナとも呼ばれ、第二次大戦後から『パレスチナ問題』として知られています。
現在、パレスチナという言葉はイスラエル国内の自治領を指すこともあります。
現在のイスラエルにはパレスチナ自治領が二つあり、ヨルダン川西岸地区とガザ地区です。
イスラエルにはユダヤ教の信者であるユダヤ人が住んでおり、この中のパレスチナ自治領にはイスラム系アラブ人が居住しています。
このアラブ人を『パレスチナ人』と称する場合もあります。
ユダヤ人とアラブ人の紛争は、第二次世界大戦後から長期にわたって続いてきました。
しかし、最近ではその規模が急拡大して国際的な注目を浴びています。
宗教的対立、土地の獲得欲望、祖国回帰の願望などが紛争の要因とされています。
パレスチナの歴史を振り返ります。
古代のパレスチナは、ヘブライ人の土地で、紀元前1000年頃にダビデ王によって統治されました。
その後、ソロモン王が王位を継ぎましたが、ソロモン王の死後は国力は衰えました。
この時期からヘブライ人はユダヤ人と呼ばれるようになり、パレスチナとも関連付けられました。
それから千年後、『ソロモン王が悪魔を使役していた』などの逸話が生まれ、様々な創作作品に影響を与えました。
世界各国に散ったユダヤ人が、各地の文化に影響を与えた可能性があります。
水木しげる作の『悪魔くん』もその1つです。
小学生の主人公は『ソロモンの笛』で悪魔メフィストを使役して事件を解決します。
1989年のアニメ版『悪魔くん』は指で六芒星を描いて呪文をとなえていました。
三角形を組み合わせた六芒星はユダヤ教の聖書にも描かれており、ダビデの星とも呼ばれています。
これは現在のイスラエルの国旗の意匠にもなっています。
1970~1990年代……いわゆる世紀末のオカルトブームでは、日本の古い寺院や遺跡で六芒星が描かれていると、ユダヤの末裔と紐づけてオカルト雑誌で紹介されることがありました。
日本人の祖先はユダヤ人であるとする『日ユ同祖論』などもでていました。
筆者も、オカルト雑誌『ワンダーライフ』を半信半疑で愛読していたのはいい思い出です。(汗)
さて、一世紀にキリスト教が、七世紀ごろにイスラム教が誕生しました。
都エルサレムがユダヤ教・キリスト教、そしてイスラム教のそれぞれの聖地となりました。
その後、世界中でユダヤ人の迫害が行われ、第二次世界大戦後、多くのユダヤ人がパレスチナに移住しました。
パレスチナにはユダヤ人とそれに敵対するアラブ人も同じ場所で暮らすようになったのです。
これにより、紛争の種が増えました。
こうなった要因の一つは、第一次世界大戦でのイギリスの政策によるものだと言われています。
イギリスは戦争を有利に進めるため、ユダヤ人とアラブ人の有力者に協力を要請しました。
その見返りに、パレスチナの地を与えることを約束したのです。
これを『イギリスの二枚舌外交』と呼ばれることがあります。
ついでに、イギリスは第一次世界大戦の同盟国に対してもパレスチナを与えることを密約していたとされます。
このことから三枚舌外交とも呼ばれます。
第一次世界大戦に勝利したイギリスは、一時期の間、パレスチナを占領していました。
イギリスの支配下での紛争や国際的な介入を経て、イスラエルが建国されました。
これに反対する自治領のアラブ人は周辺のアラブ諸国をも巻き込んでは紛争を繰り返し、パレスチナ難民問題が発生しました。
ガザ地区とヨルダン川西岸地区は異なる政策をとり、ハマスがガザ地区を支配しています。
最近のガザ地区の紛争は過去と異なり、大規模な攻勢とミサイル攻撃、そして多数の民間人の被害が注目されています。
しかし、紛争の落としどころが見えてこないですね。
この紛争をとめてくれる魔法の笛はないのでしょうか。