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Venus And The SAKURA  作者: モカ☆まった~り
貴族領地編
96/165

0094 リリアの料理教室

「今日は、ビーフステーキを作りますよ〜」と街の女性陣に向かって話しているのは、リリアである。


「材料はウシの肉です!スジが多いと縮んでしまいますので、必ず切ってくださいね~」

「リリアちゃん、家で作ったら肉が硬いんだけど、どうしたらいいの?」

「生肉の状態でも硬い肉はスジが多いか、筋肉質な肉なので、こうやってフォークでいっぱい刺すと、柔らかくなります~それと、焼きすぎにも注意してくださいね~。」


 リリアが、皆さんにも美味しいごはんを食べてもらいたいとの願望から始まった「料理教室」。邸宅にある厨房、授業料、材料費無料と大盤振る舞い。おかげで、料理教室は大盛況なのだが、他にも色々問題もあるようで、


「こうやって、塩とコショウを振りかけます~」

「リリアちゃん、ウチにコショウなんて、高価なものはないよ!」

「そうですか~それでは後で取りに来てくださいね~」

「臭み取りにハーブを使います~。」

「家には、ハーブなんてないよ!」

「じゃあ、後で取りに来てくださいね~コショウもハーブもカブレラ大森林にありますから、傭兵団の人に言って、採取して貰いますね~。」


・・・こんな感じである。王都とは違い、ここは東の果て。とにかく「物がない」。

 リリアは、こういった意見を桜花に報告をする。一市民の声を細かく聞き届けるためでもあるし、桜花が悪く言われないようにとの献身的な行為でもある。


「それでは、今日はここまで。また3日後にお待ちしてます~。」


 リリアの料理教室は、邸宅外でも行われる。

 街で露店を見つけると、品物を食べ、こうした方がもっと美味しくなりますよ。とか

「あっ、リリアちゃん!ここ教えて!」と家に上がり込んだりとか・・・。

 おかげで、領地の人達には人気が高く、それが桜花のイメージアップにも繋がっている。


 そんなある日、いつものようにリリアが街を散策していると掃除をしている人がいた。

 手伝いましょうか?と掃除を始めるリリアなのだが、不思議な物を見つける。

「この白い粉は何ですか?砂糖ですか?」

「掃除に砂糖みたいな高価なものは使わないよ。これはね、「重曹」って言うの。」

「ジュウソウ?食べれるのですか?」

「食べれることは食べれるんだけど、味はないよ。」

「ふ~ん。」と言いながら、一口。

口の中がシュワシュワする!何これ?

「ね?味がないだろう?」

「本当ですね。」


 掃除の手伝いを終えて、再び、街を散策。何やら甘い匂いがする。

「あっ、リリアちゃ~ん!」と露店の店主が手を振っている。

「こんにちは!新しい商品ですか?」

 すると店主はニッコリと笑って、「そうなんだよ!リリアちゃん、一度食べてみて感想を聞かせてくれよ~!」

 店主が作っているのは、銅板に溶いた小麦粉を焼いた物。甘い香りは砂糖のせいだろう。

・・・形はご主人様に連れられて行った「トーキョー」の「パンケーキ」に、似ているな。

一口食べてみる・・・水臭い。硬い。

「どうだい?」と店主が聞いてくるので、「どうやったら、もっと美味しくなるか、研究してきますね!」と言ってその場を去った。


 次に呼び止められたのは、ご主人様が美味しくないと言っていたスープ屋さんだ。

「これを、食べてみてくれよ!」とスープを出してくる。

・・・肉が多いな。今は肉も安く手に入るようになったからか・・・。


 まず見た目・・・灰汁が取れていない・・。

一口、飲んでみる。・・・塩味なのは良いとしても、肉の臭みが残っている。

「どうだい?」と聞いてくるので、「とりあえずは、灰汁をしっかりと取った方が良いですよ。」と答える。


「それに、ご主人?このお肉ってステーキとかでも使える物なんじゃないですか?」

「ああ、良い肉使ってるだろ?だから美味いはずなんだ!」と店主が答える。

「良い肉は、あまり火を通さない方が、美味しいんですよ。だから、煮込み料理には相性が悪いんです。」

「そうなのかい?」

「煮込み料理に合う肉を探しておきますね~。」と言い残し、その場を去る。


 次に呼び止められたのは、ご主人様が美味しいと言ってくれた「ポテトフライ」屋さん。

 この露店はどんなポテトフライを作っているのだろう?

 リリアは愕然とした・・・。イモが丸ごと揚げられている。

「食べてみるかい?」と差し出された「イモの丸揚げ」。正直、食べたくなかったけど、一口。・・・苦い!中心に火を通そうとして、長時間揚げた為に皮が焦げているのだ。なのに、割ってみると中心に火が通ってない!

「こ、この料理は、どうやって思いついたのですか?」

「ああ、いつも家ではイモを蒸したりゆでたりしてたんだけど、揚げてみたら美味しいんじゃないかって思ってね!」

「ポテトフライは、こうやって8等分のくし形に切るんですよ。それを弱火で中まで火を通して、最後に強火でカリっと揚げると美味しくなりますよ。」

「そうなのかい?ありがとう、リリアちゃん!」

「いえいえ、それでは、また。」


 リリアは屋敷に帰り、一人でテーブルについていた。

「皆、一生懸命なのはわかるんだけどなぁ。」深いため息をつく。

「どうした?リリア。」

「ご主人様~!」

 リリアは、今日会ったことを全部話して、自分のやっていることは無駄な事なのかもしれないと、桜花に訴えた。


 すると桜花は笑いながら「誰だって、最初は素人だよ。リリアが特別なだけなんだって。」

「そうなんですか?」

「例えば、リリアがローズみたいに鞭を使おうとしても、無理だろう?あれは、ローズだけの才能なんだから。」

「はい。私には無理です。」

「でも、リリアでもローズほどではなくても鞭を扱えるようにはなれる。」

「本当ですか?」

「ああ!でも、何回も何回も練習しないといけないんだ。」

「そして、失敗しながら覚えて行く。それが一般的な事なんだよ。」

「そうなんですか。」




 リリアは、厨房に向かう途中に掃除をしている茜にあった。

「茜さん、教えて欲しい事があるのですけど。」

「何だ?僕に質問って。」茜さんって、自分の事を「僕」って言うんだよね。

「ジュウソウって何で掃除の時に使うんですか?」

「ああ、あれは汚れをふやかすって言うか、柔らかくすることで、汚れが落ちやすくなるんだ。それが、どうした?」

「い、いえ、ありがとうございます。」


 トーキョーで食べたパンケーキ。ジュウソウを使ったら柔らかくならないか?

 思いついたリリアは、小麦粉に砂糖、ジュウソウを入れて焼いてみる・・・。

 全く塊にならない。水が多すぎた?いや、ジュウソウが多いかも知れない・・・。

 何度もチャレンジしてみたけど、上手く行かない。なんでだろう?


 孤軍奮闘をしているリリアを心配したのか、桜花が厨房にやって来た。

「リリア、何を作ってるの?」

「トーキョーで食べた、パンケーキです。」

「なるほど、材料は・・・小麦粉・砂糖・ベーキングパウダーの代わりに重層だね。あれ?塩とたまごは?」

「え?塩?甘いお菓子なのに塩を入れるんですか?」

「ああ、甘いものにほんの少しだけ、塩を入れると甘さが引き立つんだよ。」

「へ~、知りませんでした。」

「リリアでも知らないことがあるんだな。」

「じゃあ、肉を入れたスープはどうやったら美味しいですか?」

「それはね・・・・」




「今日の料理教室は、パンケーキとウシのモツニコミです!お店をされている方は、後ほど、更に美味しくなる方法を教えます~。」

今日も元気にリリアの料理教室が始まった。


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