0082 出来ることをせいいっぱい。
「チッ、早く終わってしまったか。」武装した男が言った。
「全軍、出陣はやめだ。引け。」
ー***-
「ダダン、そっちは何か動きはあったか?」
「いえ、何も起こっておりません。」
「悪いんだけど、朝日が昇るまでは警戒しておいてくれるかな?」
「畏まりました。」
「そういう訳だから、朝日が昇るまでは警戒しておいてね。」
「そうか。悪いなオウカさん。」バレット王子が応える。
「全軍、朝日が昇るまで待機!気を抜くなよ!」
王都城壁の前で、貴族軍がマイカ帝国に警戒をして布陣を築く。
軍人さんの死者・負傷者は少数で済んだ・・・と。
王都民は全部で3000名位いて、ベルサイユ宮殿に約1000名、二ホン国にも約1000名、という事は死者は1000名。どこの世界でも一番不幸になるのは民衆なんだよなぁ〜。守ってやりたかった。けどこの手に3000名は多すぎた。いくら一生懸命に救い上げても、指の間から零れ落ちてしまうんだよな・・・。
ベルサイユ宮殿に着いた。戦争自体は終わったのだが、こちらは大慌て。負傷者の治療、回復魔法、炊き出しの準備・・。改めて皆働き者だなと感心してしまう。
騒がしい広場の奥に一人の女性が横たわっていた。ローズである。我々の仲間で唯一の死者。一人の少女を救う為に暴徒の中に突っ込んだんだっけ?やめろと言ったのにな。
ローズと初めて会ったのは闘技場で、その日のうちに戦ったんだよな。俺はギリギリ勝てたけど、コイツ強いんだよ。マジで。闘技場で開花した?んだっけ。「変態スキル」。スキル「打たれ強い」は叩かれることによって気分が高揚し、「テクニシャン」は相手を極楽へ導く。とどめは「床上手」。どんだけ、エロスキル満載なんだよ!
「もう一度、抱きたかったなぁ~。」
ちょんちょん。
「何だよ!今は哀愁に浸ってるんだから邪魔すんなよ!」
ちょんちょん。
「だから!」振り向くとそこにあるのは「大きな胸」!
「ローズ、お前死んだんじゃ・・・?」
「私たちラミア族は瀕死の状態になったら、休眠をするんです!でも、ほとんど死んでます!」
「それでも、動かなかったよな!」
「ご主人様の情熱的なキス・・・。いつもは私からでしたけど、攻められるのもいいですわ!とろけてしまって、動けなかったんです!」
「その後、手が落ちたよな?」
「はい!気持ち良すぎて堕ちちゃいました!」
・・・そうか、ちょっと恥ずかしいけど、生きてるなら、それでいいや。
「それでぇ~ごしゅじんさま~」いつもの口調に戻るローズ。
「なんだよ?」
「私は、いつでも抱かれる準備は出来てます~。」
「何のことだ?」
「さっき、もう一度、抱きたいって言ってたじゃないですか~。」
聞かれてた!
「ハイハイ、また今度な!」
「あれ?照れちゃって!可愛い~!」
「うるさいぞ!」
「あれ?ローズちゃん、もうお目覚め?」と玲子が言う。
「お前、知ってたのかよ!早く言ってくれよ!」
「私はてっきり知っているもんだと・・・あれ?死んだと思ってた?」
お前らなんか、嫌いだぁー!
翌日。王都内内戦跡地にて。
「やっぱり、被害がスゲーなー!」
「あれほどの暴徒と炎だったからしょうがないわね。」
俺と玲子の二人で王都内を歩いている。
ボロボロになった1号店。
「やっぱり、やられたかぁ〜。奇跡的に助かった!とかないもんかね。」
「潰れた店はまた建て直せばいいわ。2号店を見に行きましょ。」
「おっ、2号店はほとんど無傷!見た目は。」
「問題は中身よね。」
朝なのに、薄暗い店内に入る。ガラスを踏みつける音が聞こえる。
「それでも、被害が少ない方じゃないかな?」
「厨房もそのまま使えそうよ!」
「じゃあ、やることはひとつだな!」
戦後の物価は酷い物で、いくらお金を積んでも商品が手に入らない。日本でも同じ経験をした時代があった。
「そのおなかを空かせている王都民の為にひと肌、脱ぎましょう!」
「もしもし、リョウタ?お願いがあるんだけど・・・。」
「食材の調達ですね!任せてください!」
「話が早いね!よろしく頼むわ!」
「とりあえず、米と味噌ですかね?」
「そうだね、それからの事は、これから相談しよう!」
「はい、皆さん、注目!」と傭兵団全員に声を掛ける。
「昨日で戦争は終わった!そうだな!」
「はい!」一同に声を上げる。
「しかしだ、俺達、いや、王国民の皆の戦争は終わっていない、これからが本番だ!」
「今日から、俺達は戦後処理、復興という戦争に入ります!これからはキツイ日々が続くけど、皆なら頑張ってくれると思う!元の日常、いや、前よりもいい王都を作り上げるまで、頑張ろうじゃないか!」
「畏まりました!」団員が一斉に「敬礼」をする。誰がいつの間に教えたんだ?まっ、いいか!
「それでは、割り振りを決めたいと思う。武術隊は・・・」と復興の第一歩が始まった。
「え~、当分「クロゲワギュウ」食べれないの~?」と言うのは王子元い新国王バレット。
「当分は、復興の為に沢山の人に安くて美味しくおなかがいっぱいになるメニューを出していきますから、我慢してくださいね。」と玲子が笑う。
「それにしても、レストランミツヤが手伝ってくれて本当に助かったよ!」
「安くて、美味くて量も多いメニューを出す店があるから、他の店も安い値段でしか出せなくなるしね。」
「王よ、そろそろ会議の時間でございます。」と言うのはアムさん。今はバレットの近衛師団団長をしてもらっている。
「うん、じゃあ、またね!」
「ああ、」
「あっ、そうそう、オウカさん今度の日曜日、開けといてね。」
「何でだよ?」
「この戦争で一番の功労者を称えないでどうするのさ!これが王となった私の最初の仕事だから、逃げないでね!それじゃ!」
「功労賞って何をもらえるんだ?」
「さぁ、なんでしょうね。」
「まぁ、当日になればわかるか!」
・・・この時は、何にも気づいていなかったんだ。とんでもない「功労賞」が与えられるという事を・・・。




