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Venus And The SAKURA  作者: モカ☆まった~り
王都動乱編
80/165

0078 元老院緊急協議会

 王子バレットが緊急で協議会をすると呼びかけ、2か月後に開催される事になった。


 そして2ヶ月後・・・レストランミツヤにて。


「いやぁ~やっぱり、クロゲワギュウは美味いね!」と舌鼓を打つのはバレット王子。

「よろしいのですか?私も頂いて」と言うのは、桜花とゼノンである。

「こうして協議会が開かれるのも、オウカさんとゼノンのおかげだよ〜」バレット王子はライスの上にステーキを乗せ、幸せそうに頬張っている。


・・・それにしてもこの王子、この2ヶ月で随分と口調が変わった気がする。初めて会った時は威厳を示さなければと思っていたんだろうな。いまでは15歳、年相応の話し方になった。


「そうだ、この前のお代も払わないとね。いくら?」

「この前と今日の分を合わせて銅貨4枚ですね。」

「それは安いの?高いの?」

「王子、露店に出ている食べ物は銅の小粒1つですよ。それから考えるとこの肉は1000倍の値段です!」

「それは、高いな・・・。」

「いつかは、誰もが食べれるようにしなくては・・・。」

「今日が、第一歩ですね。王子。」

「ああ、そうだな!」





 協議会は宮廷の奥に設けられている。

 重い開き戸を入ってドーム状の部屋の一番奥がシエロ王、左手にバレット王子、以下王都内に住む元老院議員、各貴族合わせて130名が円を描くように座り行われる。


 方法としては、まず議題を持ちかけた者が中央の丸い空間に出て議題を発表、それに対しての意見なども、同じく丸い空間で話す、日本で言う所のドームコンサートのような形態だ。


 協議会は基本、三日三晩行われ、それでも決まらなければ延長となり、かなり過酷な仕事となる。

 桜花はと言うと、たとえ勇者であっても議員でも貴族でもないので、参加はならなかった。

「実のところ、俺って会議が嫌いなんだよね。呼ばれなくてよかった〜」と桜花は胸を撫でおろしていた。


 提案者はもちろん、バレット王子である。成人の儀を終え、初めての協議会に参加となる。

「本日は、私の呼びかけに応じてもらい、誠に感謝する!」の第一声から始まり、議題の発表へ・・・議題はもちろん、視察旅で得た事から準じて「ベルハイツ侯爵」の実体を話した。


「このように、コレット村の住民は毎日イモだけで食いつないでいるのに、安い買い取り額の上に高い税金を払えと言ったのです!このような蛮行が許されて良いのでしょうか!」


 会場からは「何と!」「何を考えておられるのか!」「民を思ってこその領主ではないのか!」「断罪だ!」とヤジが飛ぶ。


 この事実を言われたベルハイツ侯爵はたまったものじゃない!同じ貴族と言えども、領土を持たず、王都に住んでいる貴族もいる。それからすればベルハイツ侯爵は領土を持つ貴族。いわばエリートなのだが、そのポジションを狙っている貴族がごまんといる事を知っているのだ。


 そう言った貴族のヤジは止まらない。自分が領主になれば、収入が増えるからだ。


 ベルハイツ侯爵の答弁が始まった・・・。

「我が領土民からの苦情は受けておりません。皆、私の元、幸せに暮らしております。」と苦しい答弁をした。


「民が納めた税はどのように使っておりますか?」の問いには

「民が幸せに暮らせるように、道路整備などに使わせてもらっております。」

「それでは、ベルハイツ侯爵は、コレット村が流行り病の為に苦しんでいることをご存じだという事ですね。」

「はい、もちろんです。」

「では、なぜ、コレット村は何度も流行り病を侵しているのでしょうか?」

「それは、私に報告が上がっておりませんので、把握出来ませんでした。」


「では、税の使い道ですが、屋敷にある「あの豪華な自画像」は実費で描かせたという事ですね?」

「そ、それは・・・。」

「ベルハイツ侯爵、分かっていると思いますが、ここで虚偽の証言をすると断罪になりますからね。」

「はい、あれは私の実費で・・・」

「嘘をつくんじゃありません!」ドームの中にバレットの声が響いた。

「私に直接、面子を保つために税を使っている、民は領主の為に働くのは当たり前と言ったではないですか!」


 その声に「断罪だ!」「貴族の恥だ!」とヤジが飛ぶ。

 

「では、話を変えましょう。」

「エ・マーナ村はご存じですね。」

「もちろんです!」

「この村もかつてはコレット村と同じ理由で流行り病に侵されたそうです。」

「ええ、その対処を致しましたから、現在は流行り病もなくなり、収入も十分に出来ていると思います。それは私の貢献と言えましょう。」

「村長からは「袖の下」そして、毎月ヤギを1頭進呈、更には若い娘を「慰めもの」として献上させたからではないですか⁉」

 この発言を聞いたベルハイツ侯爵は、「何故、そ・・」慌てて口を塞ぐ。

「どうですか?言い逃れることは出来ませんよ!」バレットが詰め寄る。


「フッハハハ!」ベルハイツ侯爵は笑いながら、次のように言った。

「何でも王子は、私が民の事を何も思わず、病気の村を見捨て、賄賂を渡す村には手を施し、私腹を肥やす愚劣者と言いたいらしい!」

「それならば、証拠を出してみろ!王子が聞いたのはほら話でなければ証拠があるはずだ!今すぐに、ここに出してみろ!ないだろう、ええ!私は何もやってないのだ!証拠など出るはずがない!」


「それならば、収支報告書を見せてください。」

「え?」ベルハイツ侯爵は不意を突かれたようになり、俯いてしまう。

「この協議会に参加するに当たって、収支報告書を10年分提出してくれとの旨を沿えていたはずです!」

「それはもちろん、提出しております。」


 文官の一人が収支報告書を持って来る。

「この収支報告書では、ベルハイツ侯爵は毎年、通常の倍額の納税をこの王都にしているとありますが、王都の収支報告書では、そのような記載はありません!これが私的流用している決定的な証拠です!」


 ・・・判決が下るまで休憩時間。


 休憩が終わり、結果が発表される。

「ベルハイツ侯爵は禁固30年に処す!貴族の地位もはく奪する!」と王が言った。


 ベルハイツ侯爵は捉えられ、そのまま退場・・・のはずだったのだが、

「王よ!あなたが5年前に名前を変えてから、人が変わったように増税ばかり!このままいけば、王国は滅びますぞ!」と言い残して扉は閉じられた・・・。


 このベルハイツ侯爵の言葉で、協議会に火が付くこととなる。


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