0077 コレット村再生計画
「この王国を救ってくれって・・・。」玲子は驚愕した。
バレット王子は5年前から、税の徴収金額が上がった事、そのせいで貧困と富裕層が出来てしまったこと、地方の貴族領に行くとそのせいで、今日一日を生き抜くことで精一杯の村があることを話した。
「あの、王子様。私は、一店舗の主でしかありません。この国を救ってくれと言われましても・・・。」
「解っている。しかし、イリシュ・ウー公爵領やハラカ・マッシュ子爵領の危機を救ってくれたのも事実としてあるのだ。経済状況を変えるためにも、知恵を貸してもらえないだろうか?」
「わかりました。でも、私に出来るのは経営の方法でお金の管理の仕方だけです。それ以外は、何も出来ませんがよろしいでしょうか?」
「構わない。ヒントになるだけで十分だ。」
「畏まりました。」玲子はスマホを持ち「ポトフ?アランと二人でお店まで来てくれる?」
すると、転移魔法陣が現れて、ポトフとアランがやって来た。
「こ、これが転移魔法!」
「ご紹介致しますわ。この二人はポトフとアラン。私の右腕ですわ。」
「その長い耳・・・伝説のエルフ族か!」
「ええ、主人はエルフ族とも仲良くやっていますの。」
「はい、兄弟のように仲良くやってます。」
「エルフ族と言えば「迷いの森」の住民と聞いたが・・・。」
「ええ、迷いの森に探索に行きましたので。それで仲良くなりました。」
「さすがは、勇者と言うしかないのか・・・。」
「アラン、先月の収支のファイルを持ってきてくれる?ポトフは実験のファイルを。」
「「畏まりました」」
収支報告者を見ながら玲子がバレットに説明をしている・・・。
「このように、収入と支出、必要経費が分かれば、どの部分を削って、削った部分をどう補うかを考えることが出来ます。」
「なるほど・・・しかし、今日を生きるのに精一杯の村はどうすれば良いのだ?」
「それは、その村では何を生業にしているのですか?」
「ヤギの肉と乳、それとたまごだな。」
「儲かりそうな事業ですのに・・何がそうさせているのでしょう?」
「実はな、この村では流行り病が絶えないのだそうだ。」
「原因は分かりますか?」
「ああ、水だと思う。なんせ、スゴイキツイ臭いがしたからな。」
「近くに川などは流れていないのですか?」
「ああ、川なら少し離れた所にあったぞ。ただ、この村には井戸があってだな。」
「その水を飲み水と生活用水と一緒にしているという事ですね。」
「ああ、だからあの村の物を食べると病気になると変な噂が流れるようになって、物の値段は安く買い付けられる、ヤギの餌代だけでお金がギリギリ、村の者は畑のイモで食いつないでいるそうだ。」
「酷いですね。」
「どうにかならないか?」バレットが何かを求めてそうな目で玲子を見ている。
「そうですね・・・まとまったお金を借りる、もしくは投資をして貰うしかないですね。」
「借りると言っても、あの貴族ではなぁ~。」
「何か問題でもあるのですか?」
「貴族が私腹を肥やすのは当たり前。領土民は貴族の為に働くのは当たり前と考えてる奴だからなぁ~。」
「それに、借金だと他の貴族に知られるのは貴族の面子に関わるという見栄っ張りだしなぁ~。」
「私たちは、領主様直々にお願いをされて行動を起こした結果ですので・・領主様がそのような方ですとお話になりませんわ。その領土は遅かれ早かれ倒産します。」
「トウサン?とは?」
「潰れるという事です。」
「それでは困る!あの領土も我が王国のひとつなんだぞ!」
「しかし、私に出来る事と言えばこの位ですので・・・。」
「そうか・・・。」バレットはどうするか眉をひそめ始める。
「高度な政治問題ですね。」桜花が口を挟む。
「セイジ?とは?」
「ああ、祭りごとの事です。元老院で話されていることですね。」
「分かってくれるか?」
「そうとなれば、あの人を呼ぶしかないな。」
桜花はスマホを取り出し、誰かと話している。
「誰を呼んだのだ?」
「王子も良く知っている人ですよ。ご安心を。」
・・・しばらくして。
「それにしても。ここの料理は何て美味いのだ!宮廷料理が不味く感じるぞ!」
「そうでしょ、そうでしょう!僕もあの味が嫌で宮廷を出てきましたから。」
「それにしても、「ウシ」やソース?どこから手に入れているのだ?王国にはこのようなものはないはずなのだが・・・。」
「それは、いずれお話しますよ。あっ、来たようですね。」
扉の所に立っているのは王国最高司祭のゼノン・カレラだった。
「お呼びでしょうか?オウカ殿。そして、バレット王子。」
「ああ、すみませんね。ちょっと王子の悩み解決の為に力になってやってくれませんか?」
「王子、どういったご用件でしょう?」
「ああ、実はな・・・。」
「・・・・という訳だ。」バレットはまたもや、ミルクティーのおかわりをせがむ。
「なるほど、それは民が可愛そうですね。」ゼノンはレモンティーを飲んでいる。
「王子と司祭の力があれば、その領主様も、納得するんじゃないかと思ったのですが。駄目ですかね?」とオウカは聞いてみる。
「実はですね。オウカ殿。」
「何でしょう?」
「領地の事は領主に任せているのですが、領主の事となると、国王の許可が要るのです。」
「それでは、ふたりで、国王様を説得されてみてはいかがですか?」
「あの父上が聞くとは思えないのだが・・・。」
「どういうことです?」
「この原因を作ったのが国王、その人だからですよ。」
「どういう事ですか?」
「国王は5年前は今の名前ではなかったのですよ。」ゼノンが桜花に説明する。
「それまでは、この王国はそれは豊かで王国民全員が笑って過ごせるような国だったのです。」
「それで、名前を変えてからおかしくなったという事ですか?」
「それからは、先ほど話した通りの展開なのだよ・・・恥ずかしい。」
「とりあえず、緊急で元老院を開いて、ベルハイツ侯爵に考えを改めるようにして貰いましょう。今は王様以前にコレット村の住民の命が優先です。」
「そうだな・・・。緊急で協議会を開くぞ!ゼノンよ!全ての貴族も招集する旨の手紙を書くのだ!」
「畏まりました!」




