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Venus And The SAKURA  作者: モカ☆まった~り
王都動乱編
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0075 玲子の望む平和

 5年前、シエロ・ムール・コローレ王は「シエロ・ガバル・ムール・コローレ」と名前を変えた。

 理由は「女神クリス・サリーナ」から、神託が降りたという事だった。

 名前を変える前と後で違う所が現れた。

 それは「税の高騰」で、このおかげで、王都民が苦しみだし、商売をしている所は人件費の削除という理由から従業員を解雇、解雇された者は次の仕事にありつけず、家に住む事すらできずに獣人族が住みつくスラム街に住みつくようになった。


 税が上がったのだから、商品の値上げをすればいいと最初は考えられたのだが、消費するものが減り、今度は客の争奪戦が起こり物価が安くなってしまった。


 卸業者は金額を釣り上げるか、同じ金額でも量が少なくなる・・・。末端の業者は安い値段でなければ売れないと、悲鳴を上げるようになった。

 卸業者は卸業者で、金額を上げてしまったがために、売れ残りが生じた結果、廃棄処分を余儀なくされ、捨ててある物を使って末端の商売をする・・・。


 これが、王都で起こっている「物価の安さ」の原因である。


 その税金はどこに行くのか?と言うと、王家の私腹を肥やすのと同時に、どこかに送られているようだ。


 元老院は元の税率に戻そうと協議をするのだが、その度に王に却下される・・・。

 王は更に税率を上げようとしたが、王妃に止められ現在に至っている・・・。

 そんな時に「魔王軍が攻めて来る!」と言われた為に慌てて召喚をして呼び出されたのが「勇者オウカ」。


 戦争はないが、色々なところで「崇められている」のは、現状の生活を何とかしてくれるとの王都民のささやかな願いかも知れない。

「宮廷料理が味がしない」理由は、物価の高騰の為に「調味料」が輸入できず、輸入したとしても、金額が高いためにいくら王宮であっても買えないのが現状。

 結局、廃棄処分になった調味料は末端の露店で使われるようになって行った。


 その困窮している王都で目覚ましい発展を遂げているのが「レストランミツヤ」。

 レストランミツヤも最初こそ、調味料が手に入らないので、日本から持ってきた調味料を使用していたのだが、魔王国改め、「二ホン国」と繋がりを持ったために、経路を確保、今は軌道に乗っている状態だ。


 そして、貴族をターゲットにした訳ではなかったのだが、貴族たちの目に留まり、見栄が大事な貴族からは材料に見合った料理として相応の対価を頂く。

 さらに、知り合った貴族に材料費を抑えるために、節約術を伝授し、領土の誰もが出来るように接客マナーを教える対価として、この世界にはない野菜や果物、家畜の飼育を頼んでいる。



「レイコ様、こちらが本日の売り上げになります。」と明細表を渡すのはアラン。エルフだ。

「この子達は頭がいいから」という事で玲子の側近として使えさせたエルフのポトフとアラン。

 今現在は、アランが経理担当、ポトフが秘書を担当している。


「うん、今日の売り上げも上々ね。それじゃあ今日は終わりにしましょう。明日は月末だから、全部の材料費や売上、何が売れて、何が残ったかを調べてまとめて頂戴ね。」

「畏まりました。」


「今日は他に予定はあったかしら?」

「本日の予定はございません。レイコ様。」とポトフが答える。

「それじゃあ、3人で帰りましょうか!」


 玲子はポトフとアランを連れて部屋を出る。レストランホールや厨房をかたずけている者達に労いの言葉も忘れない。


「さぁ、今日の晩御飯は何でしょうね!」と玲子が二人に話しかける。

「今日の料理当番は誰でしたっけ?」とアラン。

「今日はシェフとコックだよ!」とポトフ。

「じゃあ、中華かイタリアンだね!」


 シェフとコック。元々はスラム街に住んでいたのだが、オウカ率いるローズに才を見いだされ、料理への道へと歩むのだが、舌の肥えてしまった皆が、いつもレストランミツヤのメニューばかりは飽きるという事で、では試しに中華とイタリアンをと、これが大うけ。シェフが試行錯誤で中華を、コックがイタリアンの道に進んでいる。いつかはレストランミツヤのメニューに加えよう。


 実はレストランミツヤの閉店時間は早い。お昼営業を中心としていて、午後3時には掃除も終わり扉の鍵を締めてしまうほどだ。なので、他の露店の邪魔にはならない。


 いつかは、この露店の人たちにも香辛料や野菜、肉などを適正価格で卸したいものだとも考えている。そうすることによって、町全体が潤うからだ。

 玲子は決して利益を独占しようとは思わない。街全体、最終的にはこの世界の全部の人を幸せにしたいと思っている。それが勇者オウカの仕事なのだから。


「ベルサイユ宮殿」に到着。

「ほら、気合が足らんぞ!」とジギルが吠えている。

 傭兵団の指導に当たっているのだ。

「今日は格闘技の日なのね。」とくすくす笑う。


 ジギルが担当する日は肉弾戦に特化した武術の訓練。実戦訓練とあって皆、気合が入る。

「今日こそは、1発だけでも!」と団員が突進していくのだが、ジギルには敵わない。

 そして、負けた団員はローズ率いる「ラミア3姉妹」の拷問に似た特訓が待っている。

「後で、回復魔法を掛けてあげなきゃね。」と3人で笑いながら庭を通って行く。


「明日の予定って何だっけ?」ポトフに尋ねる。

「明日は実験で栽培をしている野菜と果物の入荷・及び新しいメニュー開発です!」

「そう・・・これが上手く行ったら、次は香辛料の栽培ね。」


 大体の調味料や食材は「二ホン国」から調達出来る。のだが、

「あの国は和食ばっかりだから、香辛料に種類がないのが難点だわ。リョウタさんに言って、栽培してもらおうかしら?」独り言のようにつぶやく。


「まっ、当分は家での試食になると思うけどね。」


 屋敷の扉を開け、桜花さんがお帰りと出迎えてくれたので、ただいまのキス。

 ポトフが羨ましそうに見てるのに、桜花さんは気づかない?気づかないふり?どちらなんだろう?と思っていたら、お疲れ様とポトフに口づけをしていた。さすが桜花さん。


 食事までは、結構な時間があるので、風呂に入ることにする。先客に茜といろは、みどりがいた。

 この3人は、元々は女神クリス・サリーナのニンフ達。たまたま桜花さんが名前を付けてしまったために「嫁」になったのだ。普段は何をしているのかと言うと、給仕の責任者という事もあって、掃除洗濯などの指示、レストランミツヤで働く給仕の教育係や、貴族御用達の給仕の教育を担当している。


 私と同じ「最初の嫁」なのだ。


 風呂から上がり、庭に出て風に当たっていると、スマホのベルが鳴った。リリアからだ。


「もしもし、お疲れ様、どうしたの?」

「お疲れ様です。あの、レイコ様にお客様ですけど・・・。」

「え?今日の予定はもうないわよ。」

「はい、もうお帰りになられたので、ご不在と申し上げたのですが会わせてくれって聞かなくて・・・。」

「わかったわ。お名前は聞いた?」

「はい。バレットと言ってます。」

「え!すぐに行くって伝えといて。それから、何でもいいからお茶と食事をお出しして。」

「畏まりました。」


 私は慌てて、桜花さんの所に行き、

「桜花さん!一緒に来て!」

「え?何処にだよ?」

「レストランミツヤよ!」

「何かあった?」

「バレット王子が来ているのよ!」

「解った!すぐに行こう!」


 私たちは「転移魔法」でレストランミツヤに飛んで行った。


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