0067 ドワーフ工房
商人ギルドのベルさんに会いに行った。
「こんにちは。ベルさん、います?」
すると、ベルさんは慌ててやってきて「オウカ様、よくぞご無事で」と労ってくれた。
「ドワーフの件ですが。」
「その様子だと、見つかったのですね。」
「ええ、10名ほど引き抜いて来ましたよ。」
「え?魔王国にいるドワーフを引き抜いた!よく魔王と戦いにならなかったですね。」
「実はココだけの話なんですが・・・」ベルさんの耳に口を近づける。
「魔王は俺の支配下に置くようになったんですよね~。」
「は?」
「いや、これは魔王本人からたっての希望で、俺の眷属にしたんですよ。ですから、魔王軍が人間に悪さをすることはなくなりました!」
「それは、本当ですか?」
「ええ、本当ですとも。」
「それは、めでたいやら、不味いやら・・・。」
「何が不味いんです?」
「世界は今、魔王軍が攻めてくると言う話で持ちきりなんです。そしてその話を持ち込んだのが・・・」
「軍だと?」
「そうです。彼らは、戦争をすることで生計を立てています。今のこの平和な時代が彼らを貧困へと追いやってるのも事実です。そして、貴族を抱きこみ戦争を仕掛けるように動いています。」
「なるほど・・・サリーナが言ってた通りか。」
「今、なんと?」
「実は昨日、サリーナと会って話したんだよ。サリーナの話では、魔王軍よりも怖いのが人間の欲望にかられた心だと言ってました。」
「サリーナ様は全てをお見通しだとは・・・一人間としてはずかしいばかりです。」
「ベルさんは、冒険者ギルドと連携して、各国の情報収集をお願いできますか?俺は俺で動きますので。」
「解りました。」
「それと。」
「何でしょう?」
「今から、ドワーフに会いに行きませんか?今後の商売の話もしたいですし。」
「畏まりました。お供いたします。」
ー***-
「ベルさん、紹介します。こちらがドワーフさんです。」
「初めまして、私は商人ギルドのベルと申します。御用とあれば、何なりとご相談ください。」さすがはベルさん!さすがは商人、相手が亜人でも頭を深々と下げる。
「それにしても、ドワーフって小さい方が多いのですね。最高の武具を作るので、もっと大柄で、筋骨隆々の方達かと思っていたのですが・・・。」
「なんだと!俺達の見た目だけで決めつけるのかよ!何ならここで力比べしたっていいんだぜ!」棟梁の一番弟子。名前を「タクミ」と言う。俺が技を極めた人間の称号からとったと言うと、恥じない働きを誓った極めて真面目なドワーフである。
「実はドワーフの作った武器・武具の販売をしたいと思うのですが・・・」
「それは、売れるでしょうね!なんせ伝説のドワーフですから。」
「いえ、俺は販売はするつもりはないんですよ。」
「え?今販売って言いましたよね?」
「ええ、販売はベルさんの商会でお願いしたいのです。俺らは生産だけ。いわゆる卸業者ですね。」
「なるほど、うちも儲かって断る理由はないですが。でも、直接販売された方が良いのではないのですか?」
「いや〜この世界での商売はやったことがないので、お任せしようかと。それに独占販売ですよ。どうですか?」
「何を考えてらっしゃるのですか?」
「バレましたか?実は工房の手配・維持・原材料の手配・運営を一括してお任せ出来ないかと思いましてね。」
「なるほど、面倒くさい事は我々に押し付けて、オウカ様の会社は人件費だけで済むという事ですか・・・。本当にずるい人ですね。」
「ダメですかね?」
「いえ、ドワーフ作品を独占販売できるんです!これぐらいのリスクは望むところです!」
「では、決まりですね!」
「はい!よろしくお願いします。」
・・・。棟梁には王都での売り上げはドワーフ王国に送るって言ったけど、当面の間はベルさんに儲かって頂こう。




