0050 棟梁のプライド
「断るって、何故ですか?」
「そのカタナと言う最高の一品を見てしまったからだよ。」
「でも。王国一の物より優れている訳ですし・・・。」
「俺らはよぉ、鍛冶に関しては誰にも負けねぇって思って鉄を打ってきた。しかしどうだ?俺達が長年鍛えて来た物を、兄ちゃんが持つカタナはあっさりと切っちまった。それでは、俺たちのものは2流って事になる。そんなものを売れるか!」
「それでも、日本刀は僕の世界にしかない物ですから、この世界ではドワーフさんが打つものが最高だと思うんですよ。刀が優れているだけです。」
「俺のプライドが許せねぇんだよ!」よく見ると棟梁の目に涙が光ってる。
「解りました。」俺は続けて
「確かに、この国の武器や防具は僕の国よりもレベルが低いです!」と強めに言った。相手の鼻を折るのと同時にやる気を出させるためだ。
「なので、この刀でも切れない防具とその防具を切る事が出来る剣を発注します。これでどうですか?」
「だから、俺たちの腕じゃ、作れないって言ってるだろうが!」
「そこですよ、棟梁!修行を積めば腕が上がるんでしょ?」
棟梁は不思議な顔をして、「そう言えば、そうだな・・・。」
「なので、棟梁には日本に来てもらって、俺の親父に修行を付けて貰います!」
「俺が異世界に行って修行だと?そんな事、出来る訳ねぇじゃないか!」
「大丈夫ですよ!」と俺はスマホを取り出し、
「あ〜もしもし、サリーナ?この世界のドワーフさん達を俺の親父の元で修行させたいんだけど、出来るよね?ああ、ありがとう、じゃ、その時が来たらまた連絡するから・・。」
俺はスマホを切った・・・棟梁が固まってる?
「今、誰の名前を言った?」
「え?クリス・サリーナですよ。それが何か?」
「それが何かじゃねぇーだろ!」
「あ~国王様、いや、棟梁殿。」
「なんだ!」
「何度も言いますけど、オウカ殿は女神クリス・サリーナ様に召喚された神の使者様なのですよ。」とダダンが棟梁に言い含める。
「そ、それは本当の事か?」
「ええ、サリーナに頼まれてこの世界にやってきたんですよ。」
すると棟梁は満面の笑みを浮かべて、「そう言う事なら、早く言ってくれ!」と俺の背中をバシバシと叩いてきた。
「それじゃぁ、それで大丈夫ですね?」
「オウ、もちろんだ!最高の腕が付くんだ!これ以上の喜びはないぜ!」
「修行は簡単には終わりませんよ。」
「望むところだ!」
「じゃぁ、その間の間に合わせとして、僕らに剣と武具を打って下さい。」
「間に合わせか・・・仕方ないな。」
「それでも、最高の物を作って下さいよ!王国の物よりひどかったら、許しませんからね!」
「解ってるって!よし、今夜は宴だな!」
また宴?この世界の人たちって・・・と言うか、ドワーフって酒に強い種族だよね?大丈夫かな?俺の体・・・・。




