族長の間にて
俺たちは朝食を頂いた後、ドラゴン族族長に会うことになり、昨日俺達と戦ったドラゴンに案内をされ、族長のいる部屋に向かった。
「なぁ、昨日、俺達を襲った理由って、ちゃんとあるんだよな?」
「はい、それに関しては族長である我が父にお尋ね頂ければと・・・。」
「ドラゴン族って、何匹?何人いるんだ?」
「それに関しても、父にお尋ね頂ければと・・・。」
「何か、昨日と違って今日は大人しくない?」
「だって、昨日はとことん叱られたんですよ〜!これ以上、父の怒りを買いたくありません!」と涙目になって訴えてきた。
この娘が恐れる父親と戦ったとしたら、俺たちはひとたまりもないんだろうな・・・無難にやり過ごすのが一番だろう・・・オウカはそう決めた。
族長の部屋と聞いていたので、さぞかし大きな部屋だと思っていたのだが、意外と小さい。
まるで人間の来賓用の部屋みたいだ。
それに、ドラゴンと言うのだから野性味あふれた部屋のイメージとは違い、王宮のそれにも似ている・・・。
部屋の奥、一段高い場所に鎮座しているのが族長、その周りに20人はいるだろうか、王国で言う所の貴族達が列をなしている。
それに・・・全員が「人間」なのだ。
「昨夜はよく休まれましたかな?」族長の第一声。
「ありがとうございます。おかげで皆すっかりと元気になりました。」
「それは良かった。昨日は早とちりとは言え、娘が失礼な事をした。全く、こ奴は親の注意も聞かないお転婆娘でしてな、どうか許してやって欲しい。」と頭を下げてきた。
「父上、人間に向かって頭を下げるなどもってのほか!おやめください!」
あっ、貴族の人と思ってた人は息子だったんだな。という事は、ここにいるのは、全員家族か・・・。
「今からでも遅くはありません。全員、殺しましょう!」と言うのは、また違うご婦人・・・。この人は娘なんだろうな。それにしても、全員殺す?ふざけたことを言ってんじゃないよ!
「全員、黙るのだ!儂の顔に泥を塗るつもりなのか!」と族長の一言で、場内が静まり返る。
「しかし、こいつらの強さを図らずして、友好を築く訳にも参りません!私と勝負させて下さい!」一人の騎士風の男が出てきた。
「やめよ!」族長の声は、怒りに変わりつつあるのだが、
「解りました。そこまで言うのなら、手合わせを願いたい。」
売り言葉に買い言葉。俺は、やり過ごすつもりだったが、イラッと来たので、思わずそう言ってしまった。
「そうでなくてはな!軟弱な人族よ!」騎士風の男が剣を抜く。
「くれぐれも、殺さないで下さいよ。」と一応、ことわっておいた。
「それは、保障出来かねる!」と、一瞬で間合いを詰めてきた!
男は剣を振りかざしてくる!俺はとっさに刀を抜き、剣を防御、俺が不利な態勢になってしまった。
「どうした?人族よ!こんなもんか!」と男はあざ笑う。
俺は、態勢を建て直すために後ろに飛ぶように下がると同時に刀を降り下ろした…ら、
男の持っていた剣を切り落としてしまった・・・親父、ありがとう!
「まだまだ!」と今度は素手で俺に攻撃をしてくる!
俺はその攻撃をいなしていく。やけに軽いな。あ、俺って、スキルで打撃は効かなかったんだよね。
「えい!」と男の鳩尾に一撃軽く食らわした。
「え?」俺の放った拳は男の防具を割り、体にめり込み、男はその場でうずくまってしまった。
「そこまで!」族長の声が響く。




