神殿の居場所
ラミア族との宴は続き、ローズの父親である王様が近くに寄って来た。
「ささ、飲んでますかな?婿殿。」
「その、婿殿って呼び方はやめてもらえますか?背中がむずがゆくって。」
「では、オウカ殿で。娘の婿という事は他の者はあなたの従者ですかな?」
「男性陣は、俺に忠誠を誓ってくれていますよ。女性陣は全員、俺の嫁です。」
「なんと!オウカ殿は一国の主様でしたか!」
「いえ、違います。あなたの娘さんも含め、全員名無しの者だったので、サリーナの許しを得て、俺が名前を付ける事によって、サリーナの加護を受けさせているのです。」
「サリーナ?女神クリス・サリーナ様ですか!?」
「そうですけど、サリーナが言うには生まれた時に神殿に来ていないから名無しの者がいると聞かされました。」
場内が水を打ったように静まり返ったかと思うと・・・。
「我にも名前を!」「俺が先だ!」「私にも名前を付けてください!」と殺到するので
「皆の者、静まれ!」と王が全員を黙らせた。
「オウカ殿、実は神殿に行くには試練があるのです。」と王は言った。
「試練?どういうことですか?」
「実は神殿と言う物は存在しておりません。神殿を見つけるのが試練なのです。」
「ない物を見つける?どういうことですか?」
「正確には、同じところに神殿はないという事です。日々、場所を変えるのです。」
「なんで、そんなややこしいことを・・・。」
「それは、私にも解りませぬ。」
「ちょっと待ってろ!」俺はスマホを取り出して
「もしもし、サリーナ?聞きたいことがあるんだけど。」
その言葉に場内がどよめく・・・。
「今ラミア族の王様に聞いたんだけど神殿がその日によって、場所が変わるってどういう事だ?もっと簡単にはいかんのか?」
「いや、神殿はいつも同じ所にあるぞ。」
「どういうことだ?」
「神殿はアムス山脈の頂上にある。しかし見つけられんようになったのだ。」
「見つけられなくなった?どういうことだよ?」
「魔王が幻術を使っておるのよ。だから、在る所にはなくて、ない所にある。蜃気楼みたいなものだ。」
「神パワーで何とか出来ないのか?」
「その事の解決も、お前の仕事さ。」
「そうか、切るぞ。」
「女神さまは何とおっしゃいましたか?」
「その神殿に皆が等しく行けるようにするのも俺の役目だってさ。」
「では、それまでは・・・。」
「俺が、サリーナに変わって名づけをしないといけないという事です。」
「では、我に名前を!」「俺が先だ!」「私に名前を!」やっぱりこうなる。
「皆の者、静まれ!」再び、王が叫ぶ。
「オウカ殿、是非、我らに名前をお願いいたします。」王は頭を下げた。
「実は、俺が名づけをするにあたって副作用がありまして・・・。」
「どのようなものっでしょうか?」
「言いにくいのですが、男性に名づけをした場合、俺に忠誠を誓う事になります。」
「それで、女性の場合は、もれなく俺の嫁になります。」
「なるほど、そういうことですか・・・。」
王は諦めたのか、考え込んで・・・。
「我々、ラミア族はオウカ殿に忠誠を誓います!よって名づけをお願いします!」
と、全員に頭を下げられてしまった・・・。




