ローズの実家
サイゲの森は王国・魔王国を分ける山脈の麓付近にあり、魔王国の領土だ。面積だけで言えば、王国を二つ合わせたぐらいの広大な森林地帯なのだが、特に資源などはなく、ただただ自然が豊かな地域と言われている。
さて、桜花率いる調査隊は今現在、どこにいるのかと言うと、サイゲの森の東側、北と南の真ん中、北に上がれば魔王国の首都と言う所にいる。
「ねえぇ~ご主人様ぁ~ん。」俺の腕に胸を押し付けているのはローズである。
「ちょっと、寄り道したいのぉ。」
「何処に行くんだ?」
「ここから西に行くと私の生まれた所があるのぉ。」
「ほぉ、お前の実家がね。ってお前、魔族なのかよ!」
「あら~ん、言ってなかったかしらん?」
「そう言えば、お前はラミア族だったな?」ジギルが当たり前のような顔をする。
「そうよぉ。」
「ラミア族って、下半身が蛇の種族だよな!なんでお前は人族のような容姿なんだ!?」
「あら、ラミア族は人間に変身するのは簡単なのぉ。」
「そ、そうか。ここは異世界だし、そう言う事もあるか。で、お前の言う実家ってどんな所なんだ?」
「そうねぇん。洞窟のような入り口で、私たちは最下層で暮らしてるのぉ。」
「それって、ダンジョンなんじゃ・・・?」
「ダンジョンってなぁ~にぃ?」
「入り口から、魔物退治をしながら、地下に進む空間だよ!」
「あ~、それなら私のぉ住む所はダンジョンって言うのかしらん。私たちの住処までは、色々な魔物が出るしぃ。」
ダンジョン。ゲーマーなら熱いシチュエーションなんだけど、俺はゲーマーじゃないし・・・。
「やっぱり、やめ・・・」
「ダンジョン!?行きましょう!燃えるわ~!」
やっぱり、玲子はこういうのが好物だよな・・・。
「それよりも、お前・・・」ローズを見ながら
「この辺の生まれなら、先に言えよ!安全なルートを通れるじゃないか!」
「それは、無理です。」ジギルが言う。
「サイゲの森は一定の期間で変化しますし、幻術も掛かっていますのでいつも通りとは行かないのです。」
「そ、そうなのか?じゃあ何で、今まで順調に来れたんだ?」
「それは」ジギルはアムス山脈を見ながら
「あの山の天辺を目印にして歩いていたからです。」
「しかし、これから行くローズの家は森の奥になりますので、ローズから離れませぬように・・・一生、帰って来れなくなります。」
「ねぇ〜ん、ご主人様ぁ〜ん。久しぶりに家族の顔を見たいのぉ~。」日ごろの甘えた声を更に甘えた口調でおねだりをするローズに根負け。
「わかった、わかったよ!行こうダンジョンへ!」




