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Venus And The SAKURA  作者: モカ☆まった~り
悪魔対峙編
159/165

0158 砂の国の王子様

 マイカ帝国との国交が成立したことにより、ハイマギーの森を通れるようになるのだが、この森にはリザードマンやゴブリン達がいる。

 いくら桜花の支配下にあっても人間からすれば見た事のない怪物は警戒するものだろう。冒険者ギルドに知れる前に手を打たなければならない。


「なぁ、見た目を何とかすることは出来ないのか?」

 ゴブリンの長であるガハクと門番吸血鬼のヴラドに聞いてみた。


 リザードマンは開拓地より離れた所に住んでいるので問題はないのだが、ゴブリンだけは何とかしなければならないし、冒険者に退治されるのは嫌だ。


「魔王様なら、何とかしてくれると思うのですが・・・。」


 リョウタが?確かに魔王だから何でも出来そうだけど、そんなに万能なのか?一応、聞いてみることにした。


「リョウタ、お前ゴブリン達を人間の見た目に変える事なんて出来るのか?」

「いや、申し訳ないですけど、それは出来ません。」

「やっぱりなぁ。分かった。」

「しかし幻影魔法で、人間に見えるようには出来ますぞ。」


 リョウタがハイマギーの森にやってくるとゴブリン達はひれ伏し、ガタガタと震えている。こうしてみると、リョウタって魔王なんだなと改めて思ってしまう。


「あの、兄者。本気の魔法を掛けるので、本来の姿に戻っても良いでしょうか?」


 どうやら、人間の姿になっている時は魔力が落ちるらしい。リョウタは本来の姿になると、青い身体は大きくなり、角まで生えていた。


「では、参ります!」


 ゴブリン達がいる範囲を魔法陣が包み込み、あれよあれよとゴブリン達は人間の姿になって行った。それを確認するとリョウタは人間の姿に戻っていた。


「これで、人間と認識されるのだな?」

「ええ、人並外れた体力と筋力以外は人間と同じです。」


 俺の元々の認識ではゴブリンと言えば知能が低い者と思っていたのだが、この世界のゴブリン達は知能が高い。今度、ポトフとアランに教育してもらおう。そうすることによって森の管理者とこれから開かれるであろう海の外のつながりを作るための港町を作ってもらおうと思う。早速、森の開拓に入ろう。


 皇帝ロンベルクとバレット、領主でもあるリョウタに集まってもらい、ハイマギーの森の開拓作業へと移るための会議を行った。


 海外との交渉はマイカ帝国が行うとして、通行税を二ホン国に、ヤヌス王国は開拓の一部を担う代わりにマイカ帝国と同様に海外との交渉も出来る事となった。

 開拓はハイマギーの森に住むゴブリン達に任せ、広めの通路を作り、時折休憩所を儲け、そこで儲けを出すという算段だ。


 しかし、そんな美味しい事情を商業ギルドが黙っているはずがなく、当然のようにサウラさんが顔を突っ込んできた。


 サウラさんが言うには休憩所ではなく、宿場町を作るべきだという。そうすることにより私ども商業ギルドはウハウハよ!と言っていたので、宿場町を作ることにした。当然、管理は商業ギルドに任せる事とゴブリン達は優先的に雇い入れてもらう事で話しは落ち着いた。


 そして、数か月後。


 とうとう森の開拓が終了し、港町が出来た。管理はゴブリン達だ。


 バレットが海外の国に行くと言うので船を作ったのだが、この世界の船はものすごく揺れる。そう、船酔いが凄いのだ。当然、バレットも例外なく船酔いの餌食となっていた。


 船での航海と言っても向こうの国は見えていて、船で2〜3日もあれば着く距離にあった。


 やっとの思いで付いた海外の国は・・・辺り一面、砂。砂漠だった。


「王よ、この先は何もないようです。本当に進まれるのですか?」


 近衛兵が心配とおののきで、恐る恐るバレットに進言をしたのだが、初めての海外という事でテンションの上がってしまったバレットは進むことを決断した。


 しかし、辺り一面は砂漠。時折吹く風に舞い上がる砂埃。歩く足元は砂に覆われ、思うように進まない。日中は暑いのに日が暮れると恐ろしく寒い。そんな日を過ごし3日が経っていた。


 もう、バレットのキャラバン隊は進むことが困難となり、諦めて戻ろうかと決めたが、今いる場所がどこかわからない。砂漠のど真ん中で目印となるものがないのだ。


 次々と倒れて行く仲間たちを見て、初めて自分の犯した哀れな行為をバレットは悔やんだ。このまま死んでしまうのか・・・。バレットもまた砂に倒れてしまった。





「ハッ!」バレットは目覚めた。

 砂漠ではない。どうやら助かったようだ。しかし・・・。ここは牢屋だ。


 見た事のない衣類を纏った男どもがバレットを見ている。周りを見るとキャラバン隊全員が捕らえられているようだ。とりあえずは全員、生きているようだ。


 それにしても、身動きがとれない。どうやら手足を縛られているようだ。

 男たちは、水を掛けてくる。嫌がらせなんだろう。しかし、何も言わない。


「ここは、どこなんだ?」


 水を掛けられる。


「どうして、こんなことをする?私達はヤヌス王国の者だ。」


 水を掛けられる。


 一人の小太りの男がやって来た。


「お前たちは、何しにやって来た?侵略者だろう?」

「違う!私達はこの国に友好を結ぼうとはるばる海を越えてやって来たのだ!」


 男たちの笑い声が聞こえる。


「どうやってだ?まさか泳いできたのか?」

「船を作ったんだ!」

「フネ?何だそれは?」

「異世界からやって来た勇者の知恵を授かって作った物だ!」

「ほう。勇者、異世界人か。」

「そうだ!」


 小太りの男は少し黙り、他の男に何かを告げているようだ。


「異世界人は敵だ。よって、お前達も敵だ。よって、処刑する。」


 また水を掛けられた。




 その夜。


 水に濡れた身体にこの国の冷え込みは堪える。バレットはガタガタと震えていた。

 そこに牢屋に入って来た男がいて、手にはナイフの光が見えた。


 もう、ここで終わりかと観念をしたら、その男は手足のロープを切り、キャラバン隊全員のロープも切り、こっちに来いと手招きをした。


 その男について行って逃げたのがバレたのか、男たちが追って来たのだが、助けてくれた男たちの弓矢に倒れ、最後には建物に火が放たれた。


 目の前には大きなカエルのようなものが繋がれた荷車があり、それに乗ると荷車は、物凄いスピードで、砂地を掛けて行った。


 暗闇で解らなかったが、松明のお陰で何やらの建物に入ったのが判った。ここで、濡れた衣類を捨て、着替えると良いと親切にも食べ物まで用意してくれた。


 そして、疲れた我々は、眠ってしまった。




 翌朝。


 深い眠りについてしまったのか、身体がスッキリとしている。

 キャラバン隊達は既に起きていたのか、バレットが起きるのを待っていたようだ。


「お目覚めですか?」


 褐色の男は礼儀正しくも胸に手を当てお辞儀をした。


「昨日はありがとうございました。お陰で助かりました。」

「いえ、あの者達は野盗でして、指名手配の輩たちだったのですよ。その場で処刑致しました。」


「ところで貴方は?」

「私はミュウ王国のシルと申します。王直属の親衛隊長をしております。」

「では、私達を助けてくださったのは?」

「ええ、王子様の命ですよ。」


「お着替えください。王子が会いたいと申されております。」


 バレットたちは、正装なのか白い布をすっぽりとかぶったような衣服にサンダルのような履物に変えシルの後をついて行った。


 熱い国独特なのだろうか、吹き抜けが多く、扉という物がない。

 バレットたちは一番奥の部屋に通され、そこにいる少年を見た。


「よくぞ参られた。異国の者よ。我はミュウ王国の第一王子ショウと言う。」


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