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Venus And The SAKURA  作者: モカ☆まった~り
マイカ帝国編
154/165

0153 情報

おかげさまで、あともう少しで10.000PV達成です!

 ヤヌス王国は大陸一の国土・民を持っている大国。ゆえに他国からスパイや刺客が送られていてもおかしくない。


 とは言えども、国民全てに疑いの眼差しを送る訳にもいかない。ましてや我が王国の傭兵団員や貴族など・・・。


 バレットは頭を抱えていた。マイカ帝国皇帝ロンベルクとの講和調印式が行われるまでの時間がないのだ。


 近衛師団団長のアム・ロッシを呼ぶと皇帝ロンベルクが来られた際の安全確保の為の対策を練るように命令したものの、もしかすれば身内にも裏切者がいるかもしれない・・・。そう考えると気が気でないのだ。


 オウカさんの私設傭兵団に頼めば安心も出来るだろうが、それでは我が国の傭兵団の信頼を損なう可能性もある。それだけは避けなければならない。バレットはふぅ~っと深いため息をついては思慮を廻らわせるべく天井を見つめるのであった。





「皇帝ロンベルクの護衛対策会議を行う。」

 ベルサイユ宮殿では、桜花が傭兵団員全員を集め念入りに用意するために会議の場を儲けた。


「セバス、その後の情報はあるか?」

 桜花の隠密部隊長のセバスは桜花の下で挨拶をすると、現在の所は王国内で暗殺を実行するとの情報しかなく、いつ、誰が犯行に及ぶかの情報は入っていないと報告をした。


「王国内での犯行に限るか・・・。城門から王宮までの道のり及び、王宮内が目的になるな。皇帝をお守りするにはどの方法が効果的だと思う?」

 団員達は顔を見合わせ、ざわざわと騒がしくなっている。その中で一人の団員が手を上げた。


「やはり、王族の傭兵団と共同で警備に当たるしかないのではないでしょうか?」

 確かにそれが一番の手だとは思う。内戦以来、傭兵団と私設傭兵団は仲が良くなった。しかし、当のバレットからは要請がないのだ。


「バレットからの要請は晩さん会でのレストランミツヤへの料理提供のみだ。今現在でバレットからの警護の要請は受けていない。要請がなかった場合を考えての意見が欲しい。」


 いくら桜花が異世界人であっても、面子や体裁の事情を考えるバレットの気持ちは分かる。下手に桜花の傭兵団員を配置すれば国の威信にも関わるから、依頼したくても出来ないのだという事も。

 だから、陰ながら応援するしかない答えが出ることも分かっている。


「オウカ様なら、どの様にすれば暗殺が可能だと思われますか?」

 意外な質問が団員から上がった。

 そうだ、守るには暗殺者の気持ちを考えるのも手だと思う。なかなか良い質問だと思う。


「俺だったらそうだなぁ、王国の傭兵団員にまぎれて手を下すのが有効だと思うのだが、それでは、暗殺者は命を捨てる覚悟がいると思うんだよね。」

 桜花達がいた日本がある世界では暗殺は銃が定番アイテムだと思うが、この世界には銃がない。

 遠距離攻撃の弓では当たる可能性が低くなる。確実に仕留めるには至近距離から剣による攻撃しかない。もしくは食事の際に毒を盛るぐらいしか考えられない。だから暗殺者は命を 捨てる覚悟が出来ていなければ実行には移せないと思う。

故に、桜花の中では考えにくい価値観ではあるのだろう。


「ご主人様、ウチラを忘れてへんか?」

 カーミラがここが出番と声を出してきた。

「ウチが傭兵団員に認識阻害の魔法をかけたる。そしたら堂々と王族の傭兵団員に混じってても問題ないで。」


 そうか!この世界は魔法もあるファンタジーな世界だった!認識阻害が出来るのなら、問題が解決するのではないか。

 桜花はカーミラの提案を受けることにした。


「では実際に暗殺が実行された時を考慮して訓練に取り掛かろう。俺はバレットに報告をしてくる。」






 バレットは調印式における来賓護衛について話しを詰めていた。傭兵団幹部や貴族達がテーブルを囲んでの話し合いだ。


「オウカ殿は呼ばれないのですか?」

 ゼノン司祭の質問にバレットは首を横に振る。これは国の面子に関わる事だからだと。


「それは寂しいな、バレット!」

 桜花が扉を開けたと同時に口を開いた。


「俺達は従兄弟なんだぜ?なぜ、そんな細かいことを気にするんだ?お前から言いにくいのなら、俺の方から協力を進言させてくれ。」

「オウカさん・・・。ありがとうございます。よろしくお願いします。」

「それで、いい方法があるのですか?」

「ああ、皇帝には死んでもらう。」

「な、なにを・・・。」

 バレットが震えだした。


「大丈夫だ。」

 オウカがパチンと指を鳴らすと、バレットがオウカの隣にいた。そして桜花は隣にいた近衛兵の剣を素早く取り、切り捨てた。


 あまりの行動に、会議室は緊張感が増し、近衛兵達は桜花に向かって剣を抜いた。


「安心しろ!バレットはそこにいるじゃないか。」

 全員がオウカの指さした先を見るとバレットが立っているが、オウカの足元にもバレットの死体が転げ落ちている。


「オウカ殿、これは一体?」

 桜花がパチンと指を鳴らすと、床に転げ落ちていたバレットの死体が消えてなくなった。


「幻影魔法だよ。これを使う。皇帝には調印式の前日に王宮に入ってもらい、当日はこの幻影に動いてもらう。これなら確実に皇帝を守ることが出来るし、犯人を捕まえることが可能だ。」


 オウカの実演と作戦を伝えられた会議室は、オオっ!これで安心ですなと騒ぎ出し、安堵の空気で溢れていた。


「では、会議を続けよう。」


 作戦会議は夜遅くまで続いた。





***





「報告があります!」

 ここはマイカ帝国軍本部。


「ヤヌス王国の協力者よりの報告で、皇帝ロンベルクのヤヌス王国の訪問は予定の前日になると報告がありました!

 報告によると、式典当日は勇者オウカによる幻影魔法によって作りだされた皇帝が出席するとの事です!」


「そうか。」

 ドレン指揮官は葉巻の煙と共に小さく返事をした。


「ならば、暗部に伝えよ!この情報を伝えた貴族と共に皇帝ロンベルクを暗殺せよ!」


 ククク、面白くなってきた。バレット国王並びに勇者オウカよ、我々の方が一枚上手だという事を思い知らさせてくれる。ヤヌス王国は我がマイカ帝国軍に落ちるのだという事を!


 ドレン指揮官は葉巻をすりつけるように火を消した。


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