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Venus And The SAKURA  作者: モカ☆まった~り
ハイマギーの森編
134/165

0133 友好国二ホン

 ここは桜舞い散る花の都「二ホン国」


 転移魔法でサウラさんとブニールさんバレットと、何故かジェイド評議長の顔があった。 どうやら、リョウタが何度もリンド評議国に顔を出していたので、もしかして良い人なのでは?と付いて来たのだ。


 清潔な街の中は人の賑わいが見える。どの人も笑顔だった。

 街ゆく人が板前を見るなり、挨拶をするので、ブニールさんは人気があるのだなと言うと、この人はこの国で一番人気がありますから。和服美人は答えていた。


 板前は酒蔵に二人を案内、ここでニホンシュが作られるのですよと説明をすると、二人は飲めないのか?と言うのもだから、特別に出来立てを用意してもらった。


 次に案内をしたのは、全面が黄金色をした田んぼ。ここではライスを作ってます、ニホンシュの材料にもなるのですよと説明をしていた。


「それよりも、この国には傭兵がいないな。休憩中なのか?」

「この国には傭兵どころか、兵士はいませんよ。でも、冒険者ギルドはありますが。」

「二ホン国にギルドを作った覚えはないのだが?」

「ええ。真似事ですよ。覗いてみますか?」


 北町奉行所と書いて「冒険者ギルド」と読む。

 ギルド内は活気に溢れている。と言うのも冒険者達は宴会をしている。

 これは冒険者ではないのではないか?とブニールさん。ですので「真似事」なのですよ。と板前は答えていた。


「冒険者ギルドがあるという事は商人ギルドもあるのよね?」

 サウラさんは見学をする気マンマンなのだが、

「ありません。二ホン国に通貨はありませんから。」


「じゃあ、商売はどうしているの?」

「誰も商売をしていませんよ。」


「でも、お店があるじゃない?」

「その材料を揃える人がいるので、お金の代わりに食べている。それだけです。」

 資源は豊富にありますからね。と女性は付け加えていた。


 一行は、国王が居るという「江戸城前」に来ていた。

 サウラさんは、何もかもが違う事を悟り、ブニールさんは犯罪がないことに驚きジェイドさんは、ひそかに胸を撫でおろしていた。


 バレットはというと・・・。露店にある料理にご心酔。さっきまで緊張して食べ物が喉を通らなかったせいか、色々な店を回りバクついていた。


 江戸城の中に入り最上階に続くエレベーターにまたもやみんな驚き、一番奥の部屋にてお待ちくださいと案内をする二人。


 お待ちしている間にこちらをと差し出されたのは、抹茶アイスクリーム。冷たい食べ物に皆が驚き、サウラさんは商売になるのにと残念がっていた。


「ところで、オウカ殿。二ホン国国王とはどんな人なのだ?」

 ブニールさん、探りを入れて来たな。それもそうか。

「ええ、とても良い奴ですよ。安心してください。」


 待つこと15分。扉が開き、お待たせいたしましたと、赤い振袖姿の女性・・・。先ほどの着物美人の女性の正体エレンさんが姿を現した。

 続いて紋付き袴姿の男性・・・。先ほどの板前。


「大変お待たせを致しました。私が二ホン国国王リョウタ・タチバナと申します。」

 サウラさん、ブニールさんはあっけにとられていた。それもそうだ、さっきまで料理を振る舞っていた板前が国王なのだから・・・。


「これは、先ほどは国王とは知らずに無礼を働き、申し訳ございませんでした。」

 ブニールは平謝り。

「と、いう事はこちらの女性は・・・。」

「ええ、私の妻のエレンと申します。外国の言い方では王妃でしょうか。」

「それは、失礼をいたしました!」

 もう、二人はさっきまでの酔いと勢いはどこへやら・・・。急に畏まってしまった。


「いえいえ、こちらこそ騙すような事をしまして申し訳ございません。いくら二ホン国と言っても、元は魔王国と言うのは消えない事実ですから、こうするしかないだろうと兄から言われまして。」

「兄とは?」

「はい、オウカ様です!」


「まあまあ、私の人となりは分かってもらえたと思いますので、飲みなおそうじゃないですか。エレン、何か酒の肴をだしてくれ。」

 リョウタはガラスで出来た猪口を差し出し、酒を注ごうとするとその余りにも美しい猪口にサウラさんが感激をして、この器もこの国で作られているのですか?と聞いてくる。

 さすがに女性は肝が座っているというか何と言うか・・・。早い話がなじんでしまったのである。


「今更、何をしたってどうにもならないじゃない。だったら、さっきと変わらないのが一番いいですわよ。ブニール。」

「そんなもんかね?じゃあ、俺もそうさせてもらうか!」

「ええ、ええ。先程と同じ態度で寛いで下さい。では、改めて乾杯!」





***





「それにしてもよ、国王様?」

「国王様だなんて!どうぞ、リョウタと呼んでください。」

「そう、それそれ!リョウタ・タチバナって、裏切者の勇者の名前といっしょだよな?」

 ブニールさんは、グイッと猪口に入った酒を飲み干すと続けざまに

「もしかして、アンタが勇者だったのか?」


「違いますよ!先代の勇者様に私たちは救ってもらった身です!同じ名前を語っているのは我が兄であるオウカ様が私にこの名を授けて下さったのですよ。」


 ブニールさんは、桜花が兄と言う所に引っかかりを感じている。見た目からしてリョウタの方が年上・・・。しかし、なんで桜花を兄というのか・・・。


「オウカ殿、まさかそなたは魔族・・・。」


 そんな訳があるはずもない。桜花は説明をするか悩んだのだが、この状態のブニールさんが面白いと感じてしまったので、黙っていることにした。


「オウカ殿・・・。」

「・・・」

「オウカ殿・・・。」

「・・・」

「オウカ殿!」


 面白かったけど、これ以上ほっておけば、本当に魔族と思われてしまうのもなんだし。そろそろ本当の事を打ち明けようか・・・。


「オウカ殿・・・。」

「・・・」

「オウカ殿・・・。」

「オウカ殿!」

「わかった!わかった!わかりましたよ!」


 俺とリョウタは兄弟盃を交わし、生まれや血は血がへど、兄弟である契りを結んだのだと説明をした。


「兄弟盃?何ですかそれは?」

「こっちの世界にはそういうのはないのですか?義兄弟になるって儀式は?」

「ないですなぁ。」


「ところで、タチバナ国王殿!私とも兄弟盃を交わしてはもらえませんか!」

 ブニールさん・・・。何を考えているのか。リョウタは断るだろう。その時にブニールさんはどんな顔をするのだろう。考えただけで・・・笑いが止まらん!

 だってさ、あのイカツイ顔で泣くんだよ?鼻水なんかも垂らしたりなんかして。面白い事この上ないじゃん!さあ、断れ!リョウタ!


「良いですよ。」

 あれ?断らないの?


「但し、盃を交わした後は、私の事を兄と思い、オウカ様の事も兄と思ってください。」

「ああ、解りました。」

「では、別室で・・・。」

「ちょっと待て、もっと手軽に出来る兄弟盃のやり方を知っている。」

 俺は盃をリョウタに渡し、酒を注いだ。


「リョウタ、この酒を三度で飲み干せ。」

「解りました。」

 リョウタは言われた通りに三度で酒を飲み干す。


 その盃をブニールさんに渡し、酒を注ぐ。

「ブニールさん、この盃を受けたら、私とリョウタを兄と慕い、お互い何かがあれば助け合う事を誓ってください。やめるなら飲まなくて結構。酒は捨てて、盃は割ってください」


 酒が注がれた盃を見つめ、決意を固めたブニールさんは酒を飲み干した。

「これで、俺達は兄弟です。ブニールさん、その杯は持ち帰ってください。」


 以上で、兄弟盃は終了した。


「我が、冒険者ギルドは元・魔王国、改め二ホン国を全面的に信用し、敵対行動はしないと誓います!」


 それを見ていたサウラさんが、負けず嫌いなのか、はたまた羨ましかっただけなのかは別として、エレンさんの手を掴み姉妹の契りを致しましょうと言った。


 姉妹の契り・・・。玲子の影響で百合本もたしなむ俺の頭の中はもんもんとした妄想が膨らむのだが、現実はどうなのだろうか?兄弟の契りがないのだから姉妹の契りもないと思うのだが?


 サウラさんはエレンさんの顔に両手を・・・。

 そして、口づけ・・・。

 突然の事にエレンさんは目をむいてしまったが、時はすでに遅く、二人は舌を絡ませていた。


「商人ギルドも、二ホン国を全面的に支援致しますわ!」


 この世界では衆道もあれば百合もあるのか・・・。


 こうして、バレット国王の希望通りに冒険者ギルド・商人ギルドと二ホン国は繋がりを持つことに成功した。

 これは、全世界が二ホン国と敵対しない、一つの友好国であるとの事実を掴んだと同じ意味を持つことになる。



 あっ、せっかく忘れていたのにサンとの事を思い出してしまった。あれだけ嫁達に酷いことをされたんだ。もう、何もしてこないだろう。今は、忘れることにしよう。



 この数週間後、桜花は悪夢を見ることになる。



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