0130 桜花、衆道に堕ちる
「うう・・・。」
玲子の膝枕で泣いているのは桜花である。
何で泣いているのかと言うと、昨晩の事。サンに『奪われてしまった』のが原因。
「男としてしまうなんて・・・。男と・・・。」
身体をまるで赤子のように丸めて泣いている桜花を見た玲子は、前代未聞の問題に、ただ黙って頷いているだけしかできなかったようで、桜花の頭を撫でている。
引き換えにサンはと言うと、スキップでもしたいかのように、嬉しそうだ。
しかし、他の嫁連中は黙っていない。すぐにサンは怒り狂った嫁軍団の袋叩きにあっていた。
そんな最悪の空気の中に知ってか知らずかバンッと、扉を開け満面の笑顔でやってきたのは、バレット国王である。
「オウカさん、おめでとう!」
この言葉がさらに空気を悪くするのだが、バレットが気づく訳がない。
キッとバレットを睨みつける嫁達の殺気ある視線に、何事?とようやく、最悪の空気だったと悟るバレットは恐る恐る、泣いている桜花に話しかけた。
「オウカさん、どうしたのですか?そんなに小さくなって、しかも泣いてるし。」
玲子は、今はただ、そっとしてあげてと言うしかなかった。
「いや、こんな時だからこそ他の事に注意をひいて、今の感情を抑えるしかないでしょう?そうは思いませんか?」
バレットがいう事も一理あるなと桜花も玲子も気づいたようで、バレットの話を聞くことにした。
「それで、バレット。今日は何の用事なんだ?」
気丈に振る舞っている桜花ではあったが、昨晩のショックからは立ち直れていない。
「ええ、リンド評議国解放の件で、賞詞をと思いまして、明日にでも王宮に顔を出してもらえますか?」
またか・・・。堅苦しい式典は好きじゃないけど、気を紛らわせるのには、いいかもしれないなと、バレットの要求に応じることにした。
「それで、聞いていいか解らないですけど、何があったのですか?」
「ギャハハハ!」バレットは腹を抱えて笑っている。
「ギャハハハ!じゃねーよ!相手は男だぞ!お・と・こ!」
桜花は、先ほどまでの悲しみはどこへやら、今は怒り心頭である。
バレットが腹を抱えて笑う理由。それはこうであった。
「オウカさんは知らないかも知れませんが、この世界で衆道は、結構あるものなんですよ!」
「え?俺の傭兵団にも、そんな奴がいるのか?今まで迫られたことはないけどな?」
「もしかするとジギルさん辺りは怪しいんじゃないですか?」
バレットは上半身裸で訓練をしているジギルを見ながらいったものだから、ジギル自身も自分の事を言われていると悟り
「何を馬鹿な事を!私は衆道ではありませんぞ!」
「じゃあ、オウカさんの事は愛していないんだね?」
「そんなことはありません!私は主様を世界一愛しております!」
ジギルはバレットの言葉に反射的に答えてしまった。
「はらね?ジギルさんはオウカさんを愛しているって!」
バレットはいたずら小僧の笑みを顔いっぱいに現わした。のだが・・・。
「ジ、ジギルまで俺の事を狙っていたのか⁉」
今の精神状態の桜花には、バレットの冗談を冗談と理解できないのだから、真実だと勘違いを起こし、ガクガクと震えを抑えられなかった。
「冗談ですって!ジギルさんに限ってそんなことはないですから!」
慌てて訂正するも、狂乱状態の桜花の耳には入らなかった・・・。
桜花が落ち着くまで、少し時間を取ることにし、バレットは申し訳なさそうにミルクティーを飲んでいる。
少し落ち着いた桜花にバレットは申し訳ない冗談ですと謝りながらも、この世界で衆道はそれ程、珍しい事ではなく嗜好の一つとして貴族の間ではポピュラーですとの補足を付けた。
「そんなに多いのか?男同士で身体を重ねる奴は?」
「ええ、オウカさんは知らないかも知れませんが、ゼノンも衆道ですよ!」
「うそー!」
「ゼノンは聖職者ですからね!女性との交わりは禁じられているのです。だから、男に走った訳ですね!」
バレットの言葉に、オウカにはある疑問が生まれた・・・。
「バレット、お前は違うよな?」
「さあ、どうでしょうか?オウカさんの寝込みを襲うかも知れませんよ!」
「止めてくれ!」桜花は自分の身体を抱きしめながら悲痛の叫びを部屋中に轟かせてしまった。
その悲鳴に反応したのは、女性達、所謂、嫁達である。
その余りにもの気迫にバレットは今は冗談は言えないと悟り、慌てて訂正をすることになる。
「ところで、オウカさん?」
「ん?なんだよ?」
「その・・・。男と寝て、何と言いますか・・・。」
「なんだよ?歯切れ悪いな!」
バレットは少し顔を赤らめながらうわめ気味に桜花を見つめ
「よかったですか?」聞いてはいけない事を聞いてしまった。
「バレット!お前な!」桜花はバンッとテーブルを叩き立ち上がる。
「どうなんですか?」
「それが・・・。良かったんだよね・・・。だから余計に落ち込むんだよ・・・。」
「そんなに良かったのですか?」バレットは興味津々だ。
「ああ・・・。正直、他の誰よりも上手かったんだよ・・・。」
桜花は顔を伏せ、また涙目になっている。
涙目になっているのは桜花だけじゃなかった。
ローズ率いるラミア三姉妹である。
エロスキル満載の三姉妹には、自分たちが桜花を誰よりも満足させているとの自負があった。それなのに、男のサンの方が上手いという事に動揺を隠せない。
「ご主人様!私達では満足して頂けなかったという事なんですか⁉」
桜花は慌てて弁明をする。その言葉がラミア三姉妹に火をつける事になる。
「今まではお前たちが一番だと思っていた。思っていたのだけど、サンは男だから、どこを どうすれば気持ちいいか知り尽くしているんだよ!だから俺は抵抗出来なかったんだ!」
その日を境に朝夕関係なしにラミア三姉妹が桜花をベッドに誘い、また屋外であっても誘いとドンドンエスカレートして行くようになる。
「ご主人様!新技を開発したので、今からベッドに行きましょう!」と誘ってくるラミア三姉妹。桜花はサンにされてしまった屈辱を忘れようと、誘い文句を断ることなく、女体に貪りついていた。
そんな日々を繰り返しているうちに、あの悪夢から解放されていく気持ちになっていたある夜。
桜花が眠る寝室の扉が静かに開いた。
今日は、ラミアの誰が着たのかな?と目を瞑りながら楽しみにしていると、そこにいたのは「サン」だった。
桜花は眠ったふりをしているので、来た人物がサンだという事に気づいていない。
いつも通りに桜花の下半身をまさぐる感触を桜花自身が受け入れる。
ビクン、ビクンと反応する桜花自身はたまらなくなってしまった。
そして、気づけば・・・。
桜花自身はサンの中へと、ゆっくり入って行ったのである。
ギシギシと、ゆっくりとベッドがきしむ音を立てている。
余りにもの心地よさに、思わず声をあげる桜花。
桜花は、やっと目を開けた・・・。
そこには桜花の身体にまたがり、腰を振っているサンがいた。
サンも、夢中になっているようで、サン自身も硬くなっている。
「や、やめ・・・ウッ!」
ギシ!ギシ!とベッドがきしむ音は徐々に激しく大きくなっていく!
桜花は、恐怖と心地よさに声が出なくなっていたのだが、身体は快楽に溺れサンの中で迸り果ててしまった。
サンも桜花に合わせるようにドクドクと飛沫を上げていた。
そこにやって来たのはラミア三姉妹である。
三姉妹は悲鳴をあげ、サンを引き剥がす。
引き剥がしたと同時に今度はローズの中に桜花自身が入って行った。
桜花は一度、果ててしまったからか、それとも別の理由からか、桜花自身の力が抜けて行く。
「うそ・・。でしょ・・。」
ローズは愕然として、今度は口を桜花自身に近づけ元気づけようとしたのだが、ダメだった・・・。
「ご主人様!しっかりしてください!さっきまでは「男のサン」なんですよ!ご主人様が嫌がる「男」ですよ!私たちがいるではないですか!」
ローズは涙を浮かべ、桜花にしがみつきながら涙を流していた・・・。
「サン、お前・・・!」
「あら、私の方が良いって、「ご主人様の身体」がそう言っているのよ。悔しかったら私よりも上手くなることね。」
さんざん殴られようともサンは勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「うう、ご主人様・・・。」
悲しみに打ちひしがれるラミア三姉妹と同じく絶望を感じている桜花だった。




