0129 リンド評議国建国
リンド法国クーデターから3か月後。
変わった事と言えば、レストランミツヤの価格設定の変更。所謂、値上げだ。
客足が遠のくと思っていたけど、意外にも今までが安すぎたんだと、お客さんも納得。
今でも連日満員御礼。
更に、サウラさんとブニールさんが料理人を本当に見つけてきた。レベルは50。
年齢で言うと20歳ぐらいであろうか、人間族の女性である。
名前は?と聞くと、やっぱりないという事なのではあるが、名付けはしないでおこう。
リリア、そんな目で俺を見るんじゃない。俺は名付けはしないぞ。
さすがに2ヶ月で全ての料理を覚えるのは難しいので、王都に帰ってからも時々、様子を見に行きますとリリアが言ってくれた。本当にいい子だ。
元神殿があった場所は工事をして、評議会会場にすることにした。
並びに商人ギルド、冒険者ギルドも設立。
なんで、こんなに大きな倉庫が必要なのですか?と商人ギルドの職員に聞かれたけど、ギルドの業務に関しては、口を出さないようにしよう。
後でキリキリ舞いに忙しくなるのは目に見えてるし。
その倉庫には冷却作用がある鉱石を敷き詰めている。俺とローズ率いるラミア三姉妹は連日のように、ラミア族の洞窟に入り、鉱石を大量に持ち帰った結果だ。
ラミア族の族長サーペントは、もっと沢山必要になるかもと、他の洞窟も開拓してくれるそうだ。
王国からリンド法国への配達はレストランミツヤが請け負っている。
この辺りの抜け目はない。なんで、運送業者もレストランミツヤの名前のままなの?と玲子に聞くと、この世界の人はレストラン=食事をする所という感覚はなく、レストランミツヤで、一つのブランド名だと思っているらしい。だから名前を変えないのだとか。
後でこっそりと教えてくれたのだが、名前を変えて商人ギルドに提出をすると、新規の扱いとなり、手数料が発生するのだとか。名前を変えない場合は、こんな商売もやりますよと申請をするだけでいいらしいし、節税にもなるらしい。覚えておこう。
商人ギルドの提案で、街の在庫を一括で引き受けるのはどうかと聞かれたのだが、今後の為にも、そのような事は評議会で決めて欲しい。
冒険者ギルドが設立されたことも国には大きな収入となる。
冒険者が依頼をこなせば、そのうちの数パーセントが国に収められる。その代わり、宿屋には格安で泊まれるようにしたらしい。
冒険者の間で噂になり、冒険者が集まって来るようになった。
お陰で、冒険者に向けた武器を始めとする商売を始める店や鍛冶屋、商人ギルドが認めた健全な露店が立ち並び、飲食店の数も増えた。
宿屋も冒険者や行商人の往来が増えてきたこともあり、閑散としていたことが嘘のように賑わっていて、店主たちの顔色も明るい。
誰かが思い切って風呂屋を開業した。
薪でお湯を沸かすのだが、これが日ごろ汚れた体を使う冒険者にヒット!かなりの売り上げを叩きだしているらしい。
また風呂屋は風呂屋で薪の採取を冒険者ギルドに依頼をして、冒険者と風呂屋はいい付き合いをしているようだ。
冒険者が増えることによって飲食店の「味」にも変化が起こっている。
体を酷使する冒険者は汗をかくので、どうしても塩分の濃い物を好んで食べるようだ。
それならば、ヒガシムラヤマ領で俺が好きだったフライドポテト屋を誰かに作ってもらおうとしたが、リリアに猛反対されてしまった。リリアよ。何があった?
その味の変化に冒険者は喜んだのだが、商人や普通の暮らしをしている人にはウケが悪い。そう言った教訓も生かされ、この店では味の濃い物、あっちの店では味の薄い物と分かれて共存できるように自然となって行った。
ヒガシムラヤマ領と同じく、この国でもリリアの人気は高く、色々な店を回っては、料理のコツを教えている。そのお陰で、今ではどの店や露店に行っても、まずはハズレはないだろう。
そんな中・・・。
とうとう、評議会会場が完成した。
記念すべき第一回目の協議は、「誰が議長になるか?」。
商人ギルド、冒険者ギルドからの人間は当然、議長になることは出来ないし、とはいえ、他の人達に出来るのかという意見が多かった。
ジェイドさんは、そんな議員をただ、おろおろと見守っているだけで、それならばジェイドさんでいいんじゃないか?と半ば強制的に議長になった訳だ。
しかし、そんなジェイドさんにも意地がある!
その内容は、小さな物でいいので神殿を作って欲しいという事であるが、この意見には立派な神殿を作りましょうとの嬉しい答えでまとまった。
ただ、神官はジェイドさんがやるんだけどね。
俺は、王国よりちゃんとした女神クリス・サリーナの像を寄贈すると約束をした。
更に、センキョ委員会が誕生。不正がないように、センキョ管理委員会も自然と作るようになり、センキョをするにあたって、何が必要かと聞かれたので、「国民を愛し、いたわる気持ち」「国民一人一人が幸せに暮らせる政策」「弱い者の味方をする祭りごとをやります!」という意思表明があればいいんじゃないかと言うと、何故か俺を立候補させようという動きがあった。俺はセンキョに出馬もしないし、王国に帰るからな。絶対。
時々、バレットも評議会の見学にやってくる。
それにくっつくように、リョウタ達ニホン国一行の姿があった。
どうやら、二ホン国は怖くないですよ〜と認知してもらう為に、今は黙ってなじんでもらう為に顔を出しているらしい。将来的には二ホン国とリンド法国が国交を結ぶことを祈ろう。
そして、いよいよ、この日がやって来た。
俺とリリアがヤヌス王国に帰る日である。
今までレストランミツヤに通ってくれていた常連さんはリリアに別れを惜しみ、飲食店、露店の店主たちもリリアとの別れを惜しんだ。
あれ?俺は?
いじけている俺にジェイド議長が贈り物ですと2人の男女を紹介した。
「あっ、この二人!」
「お気づきですか?」
「ああ、俺はこの「影」に助けられたんだ!」
「それで、これからはオウカ殿のお供として雇ってあげて欲しいのです。」
「影」の二人は片膝と片手拳を地につけ俺に敬服をする。
この二人なら、文句はない。引き取ろう。
「とりあえず、名前はあるの?」
やはり、名前はないらしい。
「それじゃあ、名前は・・・。」
女性は肌が透き通るように白いから「シラユキ」
男性は雷のような鋭い動きだったからサンダー?→「サン」にした。
シラユキが俺にすり寄って来るのは解るのだが、サンよ。何故、お前まですり寄ってくるのか。
「最後にお願いがあるのですけど」ジェイド議長が紙と筆を用意した。
「この国の名前を付けてください!」
「え?リンド法国じゃダメなの?」
「違うのがいいんです!」
「解ったよ、それじゃあ、「リンド評議国」だ。」
「リンドの名前を変えなかったのはリンド法国時代の良かった点、悪かった点をしっかりと覚えておくようにとしたためたものだ。」
「解りました。今日よりこの国はリンド評議国と名乗ります!」
「それじゃあ、また来るよ!」
俺達一団は、新たな仲間二人を連れヤヌス王国に戻った。
その夜・・・。
何故か俺の寝室の前が騒がしい・・・。また夜這いをローズが守ってくれているのか?
今夜だけは、ゆっくりと休ませて欲しい。
意外にも部屋に入って来たのはサンだった。
男なら、守ってくれるからいいよね。と俺は布団にくるまる。
その布団の中にサンが入って来た。
俺は慌てて飛び起き、何をやっているのかと聞くと
「私は体は男でも心は乙女なの♡」
イヤー!ナイワー!俺は慌てて部屋から逃げようとするが、サンの動きの方が速い。
そうだった。サンは「影」だった。
「私が一晩で虜にしちゃうわよ♡」
「やめてくれー!」
「・・・あ♡」
俺は新しい扉を開けてしまったのかも知れない。




