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Venus And The SAKURA  作者: モカ☆まった~り
リンド法国編
127/165

0126 ジェイドとリョウタ

 桜花救出作戦が行われた次の日、レストランミツヤは大忙しであった。


「リリアちゃ~ん、冷えたエールをお代わりね!」

「あっ、リリアちゃん!こっちもお願いするよ!」

「俺は鶏のから揚げを頼む!」

「こっちは魚を生で裁いた奴!」

「ハイ!えっ、ハイ!少々お待ちください!」


 こんな感じである。このところ店を閉めたままだったから、お詫びのしるしとして、小銅貨一枚で、飲み食い放題にしたのだから。まっ、時間制だけど。

 お客さんも、元を取らねば?飲むピッチと食べる速度が速い事ったら。

 そのせいもあってリリアは目が回りそうだ。


 今日だけのサービスだから頑張ってくれと思っていたら

「店主!サボってないで、リリアちゃんの手伝いをしてあげなよ!酒のお代わり!」

「ハイよ!」





***





「率直に聞きますが、この国をどうしようと思ってるのですか?」

 ジェイドにバレットの剛速球の質問である。

「それにつきましては・・・。これからみんなで考えてと思いまして・・・。」

 何とも歯切れの悪い答えである。明らかにバレットの方が年下なのに押されている。

「みんなで、ねぇ。」バレットはため息をつき、俺を見た。

「先に言っとくが、俺は何にもしないからな!」

「ありゃ、先に言われたか。」バレットは舌を出す。


 静まり返る室内・・・。俺はこの空気がたまらなく嫌だ!


「あのさ、みんなで考えるんだろ?だったら、みんなで考えればいいんじゃないか?」

「だから、みんなで考えてるんでしょう?」バレットは呆れ顔。

「違う、選挙をしろって言ってるんだよ!」

「センキョ?何ですか、それ?」バレットもジェイドも初耳のようだ。


「俺のいた国ではな、複数の国民が、私がこの国の祭りごとをやりますって手を上げるんだよ。それをこの人にならって人に一票入れて、数が多い人、いわゆる人気者が祭りごとに参加出来るんだ。」

「ほう?一国民が祭りごとに参加とは、面白いですね。」

「この世界では、王族や貴族が祭りごとをするんだろ?でも法国には王族や貴族の存在自体がない。だったら、国民で祭りごとをすればいいじゃないか?」


 バレットもジェイドも興味津々である。が

「でもねオウカさん、知ってると思うけど、そもそも祭りごとって簡単に出来る訳じゃないよ。」

「それじゃあ、その道のエキスパートを呼べばいいじゃないか?」

「え、えきすぱあと?」

「国家の運営は経済が基本だ!だから、商人ギルドの人にも参加してもらえばいいし、治安維持には冒険者ギルドにも参加してもらえばいい。」

「なるほど。そこに国民代表が入って、こうして欲しいとかの要望を聞くわけですね。」

 ジェイドも理解をしてきたようだ。


「その話もいいのですが、今考えないと行けないのは目先の食料事情でして・・・。」

「そうですよねぇ~、今回のクーデターも、元を正せば食料事情ですもんね。」

 バレットは空を見つめるように顔を上げる。コイツは考えてないと思わせながら考えている時はこの態度をとるんだよなぁ。


「では、どうでしょう。当面の食糧事情については我が国と、二ホン国に頼ってみては。」

 バレット、いきなり二ホン国との交易をしようなどと思い切ったことを言うな。

「それはありがたいですね。それにしても二ホン国とはどこにあるのでしょう?聞いたことがありませんが。」

 ジェイドは不思議そうな顔をしている。そりゃそうか、魔王国が二ホン国と名前を変えて、そんなに年数が経ってない。


 バレットは満面の笑顔で「二ホン国とは、我が国の西にある大国ですよ!」

「ヤヌス王国の西側って山脈しかありませんよね。更に西側って、え?」

 バレットは更に満面の笑顔で「解って頂けましたか?」

「まさか、魔王国・・・ですか?」ジェイドは恐怖している。

 バレットはもう一押し、満面の笑顔で「そう、元・魔王国。我が国とも国交を開いているんですよ!皆さん、いい人たちですよ!食べ物も美味しいですしね!」


 ジェイドは真っ青な顔色になり「いやいやいやいや、魔王国と国交なんて結べる訳ないじゃないですか!それに食べ物が美味しいって、嘘をつかないでください!」

「すまん、俺の店で出している物は、『全て二ホン国の物』なんだよ。」

 ジェイドは落雷が落ちたかのような衝撃を受ける。

「オウカ殿の店って、今この国で一番美味しいって店ですよね。」

「うん、うん。」

「私もオウカさんが攫われた時にごちそうになりました。」

「うん、うん。」


「一度、考えさせてもらっていいですか?」ジェイドは休憩をしたがっているようだ。

「あれ~、いいのかなぁ〜。持ち帰る時間なんてないよ~国民が腹を空かせて泣いてるよ~」

 バレットがこれでもかとジェイドを煽る。

「解りましたよ!でも、一度魔王様とお会いしたいのです!それまでは、待ってください!」

「それなら、待たせないよ。ねぇ、オウカさん。」

「ああ。」俺はスマホを取り出し、そして切った。

 魔法陣が現れ、そこに和服の男と振袖の女が立っていた。


「やあ、リョウタ。いつもながら、悪いね。」

「まったくですぞ、オウカ様、いや、兄上の望みだから来ているのですぞ!」

「リョウタ殿、お久しぶりです。」

「これはこれは、バレット国王。また今度一緒に晩酌でもしましょう。」


「こ、こんな魔法陣、見た事がない・・・。」

 ジェイドは腰を抜かしている。さすがは元・魔法師団だ。魔法の知識が豊富なんだろうな。


「ところで、そこにへたり込んでいる方は・・・?」エレンが心配をしている。

「ああ、リョウタ殿に紹介したい人なのですよ!名前はジェイド。よろしくしてやってください!」


 バレット・・・。パワータイプの外交をするんだな。いるな、こんな社長。


「わ、私はまだそんなことを約束していませんってば!」

 ジェイドも半泣きである。


 状況を察したリョウタはバレットとジェイドに提案をしてきた。

「恐らく、ジェイドさんは、我々が元・魔王国と知って、おののいているのでしょう。それは仕方ありません。では、お互いの理解が深まるまでは、ヤヌス王国経由でこの国に収めるという事で、どうでしょう?」

「それなら・・・。お願いできますか・・・。」ジェイドは半泣きから涙を流すようになった。

「ウチの国を通すって事だから、その分、お高くなるぜ!」バレットは内心、良かったと思っているようだ。


 後は・・・商人ギルドと冒険者ギルドだな。


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