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Venus And The SAKURA  作者: モカ☆まった~り
リンド法国編
126/165

0125 黒い石からの誘い

 俺達が地上に出て、普通は「娑婆の空気はうまいぜ!」のセリフが好ましい。

 でも、俺の出たセリフは「何?これ。」だった。


 だってさ、薄々感じてたよ。焦げくさい臭い。でも、まさか、ね。

 地上に出て目に入る光景。神殿の半分が消し炭になってる!


 誰がやったかなんて、考えなくても解る。

 俺がダダンとラムの方へ視線をやると、二人は明後日の方を見て素知らぬ顔をしている。


 アイツら・・・。


「随分と派手にやってくれましたねえ。」

 拍手をしながらジェイド副司祭がやって来た。

 神殿を潰すって言ってたけど、意味が違うもんなぁ、絶対。


「すみません。すみません。ウチの部下がすみません!」

 俺はひたすらに謝った。


 するとジェイド副司祭はクスッっと笑いながら

「言ったじゃないですか。神殿を潰すって。手間が省けるって物ですよ。後で残りの半分も焼いてもらいましょう。」


 ジェイド副司祭、大人だな。俺なら、完全にキレてる自信がある。


「それよりも、オウカ殿。」

 ジェイド副司祭の目つきが真剣な物に変わった。

「法王の部屋は、まだ、残っているのですよ。一緒に行って頂けますね。」

「ああ、勿論!」

「ところで、こちらの高貴な方は・・・?」


 何も言わずに立っているバレットの方を見た。まずい。


「お初にお目にかかります。私、ヤヌス王国より参りましたバレット・クロゲワギュウ・コローレと申します。」

 バレットは宮廷式のお辞儀をした。

「はぁ・・・バレット・・・。どこかで聞いたような・・・。」

 ジェイド副司祭は解っていないようなので、俺は腹を括って紹介することにする。

「ジェイド副司祭、こちらはヤヌス王国国王のバレット様です。」


「ハハハ、まさかバレット国王がこんな辺鄙な国になんて、オウカ殿、冗談がうまいですね。」

「ジェイド副司祭、残念ながら冗談ではありません。この方は正真正銘のバレット国王様です。」

「ええ!で、では何故にこの国に参られたのですか・・・?」

 ジェイド副司祭は、何かを感じたのであろう顔面が引きつってる。


「ええ、私の兄弟にも当たるオウカさんが攫われたと聞きましたので、助けに参った次第です。」

 バレットも、言わないといけないと思ってるんだろうな。これは外交としての筋だからね。

「そ、それでは、まさか我が国に宣戦布告に来たと・・・。」

 ジェイド副司祭の顔は、真っ青になっている。

「本来ならば、そうなるのですが、オウカさんも無事に救出出来ましたし、それには貴方の貢献なしでは成しえなかったと聞いています。ですので、今回はオウカさんを攫うようにした人達を我が王国に差し出して頂ければ、不問と致します。」


 バレットは終始笑顔、対してジェイド副司祭の方は膝がガクガクと震えている。

「も、もし断ったら・・・。」ジェイド副司祭の声は蚊が鳴くように小さい。

「我が軍が、この領地のすぐそこに控えておりますが。」

「解りました・・・。善処致します・・・。」


 ジェイドさん、よく漏らさなかったね。それだけは褒めないと。


「で、では、バレット国王様も、ご一緒願えますか?」

「ああ、勿論だ!法王に会えるのか!楽しみだ!」

「バレット、期待するなよ。」


 法王がいる部屋は俺が閉じ込められていた牢屋を通り過ぎないと行けないようになっているらしい。一度、地下に潜って、また地上に上がると言った感じだ。

「本来ならば、地上からも行けるのですが、めちゃくちゃになりましたし。」

「ハハハ、すまんな。」


「こちらです。」あれほど壊滅していたのに、この空間だけは無傷で済んでいる。さすがに法王の部屋と言う所か。

「扉を開けますが、バレット国王様。驚かないで下さいね。」

「え?んん。ああ。」

 ジェイド副司祭が重い扉を開ける。


「これは!」白骨化している法王を見てバレットが思わず口にする。

「そうなんだよ。法王は既に亡くなっていたんだ。」

「では、どうやって祭りごとをしていたのだ?」

「この白骨化している法王が亡くなったのは300年前と聞いております。」

「祭り事は副司祭、副神官が集まって決めてきたのです。それが不幸の始まりでした。」


「不幸の始まり?どういう事だ?」バレットは自国も不幸になったから他人事ではないのだろう、ジェイド副司祭が話しやすそうに質問をする。

「最初は、と言うより法王様がクリス・サリーナ様は実は男の神だったと妄言を吐くようになった所からおかしなことになったのですが・・・。」


「ちょっと待て。ここにある白骨は法王なんだよな?だったら、今は法王がいないと言うことだろ?」


「実は、神殿長が法王と偽っていたのです。」


「何でも神殿長は、この石を神殿内、神殿を囲むように置くと本来のクリス・サリーナ様が見れるようになると言われたそうです。その際に、名前も授かったそうです。」

「その名前とは?」俺もバレットも嫌な予感がした。


「ガバルです。」


 バレットと俺は目を合わせた!シエロ前国王が突然付けた名前と同じだ!


「それから、法王は今までは国の税金は、余り取らなかったのですが、その名前を受けてから、事あるごとに税を収めよと命令をするようになりました。」

・・・ヤヌス王国と全く同じだ。そして内乱の後、国王は自害したけど。


「前・神殿長が亡くなってからも、私以外の神官たちの総意で法王は生きていることにして、神の教えだと表では言い、裏では金の亡者となってしまったのです。」

「それら全ての原因がそこにあります!」

 ジェイド副司祭が差した指の先に法王と共に置かれた冷蔵庫並みの大きさの黒い石が置かれていた。


「オウカ殿、あの石を斬って貰えませんか!」

 俺は刀をゆっくりと抜き、石を切った。


「ハハハハハ!」石から声が聞こえた。

「我の邪魔をするのはお前か?お前だな。勇者オウカよ。」

 声を特定したいが、複数人が同時に話しているような声で聞き取れない。


「誰だ!何故、俺を知っている!」

「知っている?ああ、知っているともさ。女神クリス・サリーナの使者よ。お前に会いたかったのだよ。我の下に来い。この世界を支配しようじゃないか。」

「何を言っている!俺はこの世界を正したいだけだ!大体、お前とは気が合わん!」

「気が合わない?そうか?ならばこれでどうだ?三ツ谷桜花よ。」

「何!どこでその名を!」

「お前とは、また会う事になるだろう。それではさらばだ!」


 黒い石は、灰となって消えてしまった。


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