0123 進撃
「突撃ー!」
声を荒げるのはジギルである。
とは言ったものの、普通は進軍を命令した者は動かないか、後から付いてくるものではないだろうか?
この突撃部隊はジギルが先頭に立って突っ込んで行った。
夜も遅いという事で、騎士団の数も少ない。
その上、休んでいる騎士団はどこにいるのかも調査済みなので、突撃部隊は3部隊に分かれて突撃をして行った。
ジギルが突撃して行ったのは、礼拝堂の破壊の為。
何故なら、憎き神殿の関係者を一人残らず、叩きのめす為だった。
ジギルの予想は大当たり。大人数の神官たちが酒池肉林に溺れているところに突っ込んで行き、ほぼ一方的と言わざるを得ない状態で幕は閉じた。
第2部隊は休んでいる騎士団、及び魔法師団の殲滅の為に宿舎に突っ込んでいった。
宿舎の扉は、特殊な魔法で鍵が掛かっていたようだが、力押しで扉を破り、一気になだれ込んでいく。
就寝中の騎士団がほとんどだったので、武器庫を制圧、抵抗しないのであれば殺しはしないと、抵抗なき者の衣服を剥ぎ取り、裸のまま縛り付けると、そのまま重力魔法で動けなくした。時間にして15分。実にあっけない終わりだった。
第3部隊は副司祭達が住む居宅へと進軍。
余りにも豪華な建物に「はぁ~、いい家に住んでんな。」と日ごろ、ベルサイユ宮殿に住んでいるにも関わらず、声が出てしまった。それ程の贅の極みの建物だった。
こちらも戦闘に特化した相手ではなく、あくまで副司祭と神官のみ。
同じく、裸にして縛り上げた。
余りにもと言うあっけなさに、やることがないとぼやき始めたダダンとラムが、何やらこそこそと話しはじめ、二人そろって神殿に向かって炎のブレスを打ち込む。
「はぁ~、スッキリスッキリ」とにこやかにしている二人に
「あなた達、何をしているのかな?」
そう言って来たのは玲子である。
「私は、最悪の場合は破壊しても良いとは言ったけど、暇つぶしに焼けとは言ってないわよ~。」
「すみません。」「反省してるっちゃ。」
「解ればよし。」
ドラゴンのブレスに焼かれている神殿を見ながら玲子は気になった。
桜花さんの所が一番、危ないんじゃないかしら?
玲子の予想は大当たりで、地下に兵力を集めていたようだ。
セバス達、隠密隊とローズ率いるラミア三姉妹は地下へと潜って行く。
地下の道は、何本にも枝分かれをしていて、道を間違えれば、敵は出てくるし行き止まりという仕掛けらしい。
「これって、私たちの住処より性質が悪いんじゃない?」
ローズが嘆く。
「後からくる人たちの事を考えて、はずれの道は破壊しておきましょう。」
『はい、お姉さま!』
それに引き換え、セバス達隠密隊は迷う事無く進んでいく。
「セバス様、どうしてこんなにスムーズに行けるのでしょうか?」
「以前にここには探索で来ていますからね。誰にも解らないようにマーキングしておいたのですよ。」
「ローズ様達にも教えて上げた方が良かったのではないですか?」
「これは、私とした事が。」
そんなのんびりと話している最中にも敵は襲ってくるが、そんなものは音もなくセバス達に始末されていくのだ。
「見えて来ましたね。」
「オウカ様のいる牢屋ですか?」
「いえ。大男です。本気で戦わないといけない相手のようですよ。」
セバス達は戦闘態勢に入るが、足元に一人、倒れている人間を確認した。
この人はジェイド副司祭の言っていた「影」ですか。
見た所、かなりの重傷のようです。助けてあげたいのは、やまやまなのですが。
「大丈夫ですか?」
「は・・い・・。」
「今は少し、休んでいてください。すぐに終わらせます。」
セバス達は音もなく、大男に忍び寄って行った。
***
「みんな、大丈夫!」玲子は全員が無事かを確かめている。
「ええ、大丈夫です。」
「こちらも、問題ありません!」
それにしても・・・。ジギルが帰って来ない。まだ、暴れているのかしら?
止めに行こうかと考えていたら、ジギルが帰って来た。やけにスッキリした顔である。
「気が済んだ?」
「はい!あっ、いえっ、主が無事に帰ってくるまで安心してられません!」
「そう、じゃあ、桜花さんを迎えに行ってあげて。なんだか、あそこが一番厳しいような気がするのよね。」
「解りました!行くぞ!」
ジギルは1部隊を率いて地下へと進んでいった。
「さ、私達は魔法を放つという鉱石の破壊に行きましょう。」
玲子とダダン、ラムと1部隊は神殿の中へ・・・。
「ジ~ギ~ル~!」玲子の声が震えあがる。
玲子はジギルがスッキリとした顔をしている理由を一瞬にして理解した。
何と言っても、ここはなんだか解らない。どこが廊下で、どこが部屋なのかも解らない。
唯一、解るのは、床に刺さっているのが、人間だという事ぐらいで、その他は何かが蹂躙された後のような感じもする。
そんな玲子の怒りを買うような行いをしたジギルだが、やることはやっているようで、魔法が込められた鉱石を一か所に集められていたのだ。
「まっ、許すか。」玲子は肩からため息を吐き、ダダンとラムに破壊してと告げたら、どういう訳か、二人はバリボリと食べてしまった。
これには玲子も唖然として、「大丈夫なの?」と心配をしてみるが、
「最近、歯ごたえのあるものを食べてなかったんですよね。」
・・・二人はドラゴンだった。良しとしよう。




