0122 桜花救出作戦
ジェイド副司祭に連れられ再び牢屋に戻って来た。
「オウカ殿、これを。」
ジェイド副司祭が渡してくれたもの・・・。「桜花」。父親が命名した日本刀である。
「これで、私の事を信じてくれる気になりましたか?」
ジェイドは悪戯っぽく笑いかける。俺もつられて笑ってしまった。久しぶりだ、笑うのって。
「後は、私の「影」を2人、お付けいたします。その時が来ればこの者達が動いてくれますので、しばらく辛抱してください。」
「ああ、よろしく頼むよ。」
「それでは。」
ジェイド副司祭は暗闇に消えて行った。
その日の夕食に「ジェイド副司祭がこれをお前にとよ!」と何やら飴玉のような物を渡された。
飴玉を持ってきた神官は「何でも、お前が悔い改めやすそうな下準備らしいぞ。有りがたく食え!」コイツ・・・。俺が自由になったら、一発、殴ってやる。
その飴玉を口にして、体に変化を感じた。魔力が回復したのである。
どうやら、回復魔法が込められた物だったらしい。これで体も万全だ。今なら一人で脱出出来る自信がある。
***
2日後の夜。裏通りにある広場で松明の火が明るく灯る。
「いいかお前ら!今から神殿を攻め落とす!」
ジギルが気合を入れんと鼓舞をする。それに応えんと傭兵団300名も雄叫びをあげる。
「いいわね!まずは桜花さんを無事に救出します!その事を忘れないように!」
玲子の一言で、更に傭兵団の士気が上がる!
作戦はこうだ。
ジギル達突撃隊は神殿の正面から攻める。当然のように騎士団が出迎えるから、これらの注意を引く事が目的。
魔法師団への対処は玲子を含めポトフとアラン、3人では戦力不足だと、ダダンとラムが加わることになった。最悪、ドラゴンのブレスで焼き払う算段だ。
正面に注意を引いている間にセバス率いる隠密隊、ローズ率いるラミア三姉妹が、桜花の救出に向かう。ジェイド副司祭が手際を整えてくれている。
桜花の救出後、一旦離脱。態勢を整えて、今回の悪の根源と言われる魔石の破壊と幹部の捕縛。
「みんな、魔法耐性のリングを付けたわね!それと今回は、我が愛しの桜花さんをいたぶった罰として、桜花さんが望まないかも知れないけど、建物を破壊してもよし!抵抗するなら殺してもよし!みんなの事を信じてるわ!戦うわよ!」
『ウォオー!』
傭兵団、全員の士気はマックスまで高ぶった。
***
あれから2日過ぎた。明日は刑の執行が行われる。
執行当日に救出が行われるのか?いやいや、どこのヒーローのアニメだよ。
来るとすれば、今夜に違いない。桜花は部屋の隅で刀を持っていることを隠すように座っている。
夜も遅くなり、暗い部屋が更に暗くなる。
牢の番人も俺が逃げ出さない事を知ってかどうか、毎度の事ながら居眠りをしている。
そんな時に声が響いた。
「敵襲!敵襲!」
神殿の騎士団だろうか、慌てたような声が聞こえた。
「何!敵襲⁉」と飛び上がる牢の番人はすぐさま、立ち上がろうとするが、背後からジェイド副司祭の影2人に落とされてしまった。
「オウカ殿、こちらです!」影のひとりが錠前を外し、鉄格子を開ける。
陰に案内されるまま、牢を出て左に真っすぐに走ると三又に解れる道があった。
「右の通路を進んでください!」
「解った!」
その道を進もうとしたが、俺は足を止めた。
暗闇にキラリと光る物を見たからだ。
その物の持ち主は大柄で筋肉質、宗教とは全く無縁だろうと言うオーラを纏い、俺に向かって笑いながら、ゆっくりと歩いてくる。
「オウカ殿、ここは私が!」
影の一人が大男を目掛け、突っ切って行った。
「馬鹿!待て!」
俺の静止の声と同時に、グシャっと音が鳴った。
一瞬にして、影は倒されたのである。音からして武器ではなく、素手での攻撃だろう。
大男は余裕なのか、まだ笑いながらゆっくりと向かってくる。
このまま、突っ込むのは得策ではない。大男のいる通路の中は狭い。
であれば、少しでも広いこの場所で戦うのが自然だろう。
俺は、相手の徴発とも取れる薄ら笑いを気に留めず、この場にやってくるのを待った。




