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Venus And The SAKURA  作者: モカ☆まった~り
リンド法国編
120/165

0119 国民一揆

「最近、レストランミツヤの休業が長くねぇか?」


 毎日、通っている客の一人がレストランの「臨時休業」と書かれた張り紙を見ながら、嘆いている。


「ああ、本当だな。もしかして潰れたのか?ここの酒が飲めなくなって残念だぜ。」


 同じく、レストランにやって来ている客と話している。

 そこにリリアが扉を開け、開店準備を始めた。


「おっ、リリアちゃん。今日は店を開けるのかい?」


「ええ。そのつもりです。でも、最近は仕入れに行ってないので、余り食材がないので、簡単な物しか出せませんが・・・。」


「いいよいいよ。酒さえ飲ませてもらえれば!」


「それならよかったです。まだ準備中ですが、どうぞ中に入ってお待ちください。」


「それじゃ、遠慮なく。」




 まだ開店もしていないのに、もう満席状態だ。


「先にお酒でも飲んで待っていて下さいね。」


 リリアは冷酒を客に出していくが、そこに、いつもの笑顔がない。


「なんだかリリアちゃん、暗い顔をしてるね。何かあったの?店主もいないし。」


「ええ、実は神殿の人に攫われちゃって・・・あっ!言っちゃいけなかったんだ!」


 リリアは慌てて両手で口を塞ぎ、カウンターの中に入って行った。


 リリアのこの一言は、レストランの客、全員が聞いてしまい、客同士の話はいつの間にか神殿のやり方への不満へと変わって行った。


 その噂は一気に広がり、洗脳されていない国民、いわゆる裏通りの人間達の不満は、ふつふつと怒りに変わり、集会が開かれるようになる。


 集会所は何か所も出来、それぞれのリーダーが集まり情報交換をし、ひとつの決断に至るようになった。




 クーデターを起こす。





 それが国民の総意となり、小さかったうねりは日に日に大きくなって行った。

 しかし、洗脳されている国民との衝突も当然のように起こり、いつの間にか法国の治安が悪くなり、行商人達は国を離れ表通りの活気も薄らいでいくようになって行った。


 国直轄の露店に誰かが襲撃を起こし、金銭・物品を盗む事件が起きるようになる。これが元で襲撃を受ける露店が増え、とうとう露店の姿も見えなくなっていった。


 いくら高い品物でも、露店がなくなるのは国民全体の死活問題となり、その原因は神殿にあるとの話を聞くと飢えから来る怒りは洗脳された者であっても神殿に向けられるようになって行った。


 次に狙われたのは国直轄の卸売り商店。


「メシ食わせろ!」


 狂乱状態となった国民の襲撃に商店側もなす術もなく、全ての食材が奪われてしまった。

 当然のように食材を保管している倉庫も襲撃の的とされ国民が集まっている。


「この場所を守れ!」


 そう檄を飛ばすのは騎士団の団長。とは言っても騎士団は150名程しかおらず、数万という数はさばききれない。

 窮地に晒されている騎士団を救ったのは、魔法師団。次々と国民を倒す。と云うよりも眠らせて行く。


 それでも、国民の数は多い。

 倉庫にたどり着いた一団は、倉庫の中身を見て、そして叫んだ。


「おい!この倉庫には肉が沢山あるぞ!酒もだ!」


 その言葉で国民は一瞬にして神殿の人間だけいい思いをしていると悟り、怒りが爆発を起こした。


 雪崩のように襲い掛かる国民に対し、万策尽きた騎士団・魔法師団共に撤退、大量にあった肉・酒、食材全てを奪われてしまった。


 飢餓から一時的に逃れることが出来ても、国民の怒りは収まることを知らず、誰ともなく神殿に集まるようになって行った。





「何の騒ぎだ、これは!」


 荒れ狂っている法国を見て驚きの声を上げたのは、バレットである。


「報告します!」


 バレットに報告にやって来たのは、先に放っていた斥候の兵士でバレットに片肘を着き報告をする。


「どうやら、国民によるクーデターが起こっているようです!」


「そんなことは、見れば解る!原因はなんだ!」


「ハッ!どうやら、オウカ殿が原因だそうです!」


「オウカさんが?このクーデターを起こしたと?彼は攫われたのではないのか?」


「いえ。オウカ殿が攫われた事が原因となっている模様です!」




 オウカさんが攫われたことが原因で国民がクーデターを起こす?オウカさんはもう、国民の心を掴んだと云うのか?いやいや、いくらオウカさんでも、そんな芸当は出来まい。何か間接的に関与していると考えた方が妥当だ。


「バレット様・・・。」


 声を掛けてきたのはリリアである。


「おお!リリア殿!無事で何よりだ!このような所を歩いていて大丈夫なのか?」


「はい。皆さんはレストランミツヤの味方ですので。」


 リリアは気丈に振る舞っているが、肩が震え今にも泣きそうである。





「リリアちゃん!」


 慌てて、リリアの傍にやって来たのは玲子。リリアをぎゅっと抱きしめると緊張の糸が切れたのか、大声で泣き出した。


「何があったか、話してくれるわね?」


 リリアはヒックヒックと嗚咽を出しながらも、首を縦に振った。

「私たちがお世話になっている宿屋に案内します。詳しいことはジギルさん達にお願いします。」


 バレット・玲子一行はリリアが案内する宿屋へと急ぐことになった。


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