0107 151人の誓い
バレットが発狂して一ヶ月。
その間、俺の身に何が起こったかと言うと、全ての嫁からの軽蔑の眼差しを一身に受けていた。
「ご主人様、私に飽きたんですか!」
「最近、呼んでくれないと思ったら、そういう事でしたか!」
「どうせ、私なんて・・・。」
いたたまれない。
俺は嫁全員を呼び、何とか許してくれと頼んだら、玲子が「じゃあ、一ヶ月のお仕置きで許してあげる。」と言うので、その案に乗ることにした。
その内容は・・・俺は毎日、嫁5人を満足させる事だった。
「一日五人で一ヶ月ちょうどでしょ?」と玲子が笑う。悪魔の笑顔だ。
最初は良かった・・・。普通の夜這いと同じぐらいだから。
でも、それが毎日、朝から夜中までとなると話は別になってくる。
「大丈夫よ!リリアに頼んで精が付く料理を作ってもらうから!」
玲子の冷たき言葉・・・。
ある日、傭兵団の男が顔を腫らして帰って来た。
「これ・・精が付くと聞きましたので・・・。」ハチの巣。刺されてまで取ってくるか?
ヒガシムラヤマ領からは山芋とニンニクが送られてきた。
一緒に添えてあった手紙にはこう書いてあった。
「山芋、ニンニク以外でこれが効くとスペリア・ビースト族が言う物ですから一緒に送ります。ご自愛ください。—ジョアン—」
・・・これって「高麗人参」だよね!この世界にもあるんだね!
「ローズ、俺のステータスを見てくれ」フラフラになった俺が指示を出す。
「あらん、ごしゅじんさまぁ、HP,MP共になくなりかかってるわぁ」
俺はサリーナに「助けてくれ!」と連絡を入れた。
するとサリーナは大笑いで、魔法陣で俺を転移、サリーナの口づけで回復、すぐにベッドの上に戻される。そんな日が繰り返されていた。
ある日の休憩時間。
「いい、バナナはこう持って・・・。」
「こうですか?」
「もっと優しく・・・。」
とやり取りをしているのはローズとサリー。何の話をしているのかと聞くとサリーは真っ赤な顔をして走り去り、ローズは平然な顔をしている。
「ごしゅじんさまぁのお嫁さんにぃなるんだものぉ、気に入られるように教えているのぉ」
「何を?」
「私のスキル~。」
俺はため息しか出なかった。そりゃ、ローズはスゴイよ!上手いけどさ、純潔の女の子に普通、教えるか?
また違う日にはローズとサリーがキスをしている。
「解った?こうするのぉ。」
「わ、わかりました。もう一度、お願いします。」とサリーは息を弾ませながら言っていた。
「・・・・。」この二人は百合の世界にでも行くのだろうか。
もう少しで一ヶ月が終わろうとしていた夜。ローズが私で最後と部屋に現れた。
「ローズは最初に来ると思ったんだけどな。」
「フフッ、最後なら心行くまでご主人様を堪能できるでしょ。」
その夜もサリーナの回復に頼ってしまって、朝まで寝かせて貰えなかった。
ー***-
一ヶ月が過ぎた!やっと終わった!地獄のような日々とお別れだ!
とも行かず。
今日はサリーとの結婚式の日。
式は王宮の神殿で執り行われ、ゼノン司祭が牧師のような立ち位置で進んでいく。
「汝、オウカは病める時も健やかな時も〜誓いますか?」
「誓います。」
本当は日本で玲子と一緒に聞くはずだったんだけどなぁ。このセリフ。
結婚指輪の交換も終わり、いよいよ花嫁にキスをする時がやって来た。
サリーのベールをあげ、目をつむったサリーに顔を近づける。
ん?サリー、少し震えてないか?バレットの方を見る。バレットは俺と目があった瞬間に顔を背ける・・・。やっぱり俺は嵌められたんだ。
しかし、ここまで来たら腹を括らなければ男の恥。
俺はサリーの腰を抱き、そっと口づけをするとサリーの目から大粒の涙が溢れていた。
式も終わり、後は家に帰るだけ・・・と思っていたんだけどぉ!
王宮前には白馬2頭が引っ張るオープンタイプの馬車!
どこの英国式の結婚式だよ!
馬車に乗り、王都内を一周。勇者オウカが王女サリーと結婚。
そりゃ、皆、見たくなるよね。おめでとうの声が王都内に響く。
市中引き回しの刑が終わったら、今度こそ家に・・・と思っていたら宮廷内で披露宴!各貴族が集まり祝いの宴!
祝いの宴には全ての領地の貴族も集まり、その中にジョアンの顔もあった。
「この度はご結婚、おめでとうございます!いやぁ~、ヒガシムラヤマ領に居た頃から、お二人はお似合いだと思っていたのですよ!」と調子の良い事を言ってきやがる。今度会ったら、タダじゃ済まないからな!
他国からの祝いのメッセージなども送られて来て、これを機会に外交に踏み出そうとバレットは考えているようだ。
お祝いの席は3日3晩続いて、ようやく家に帰って来ることが出来た。
普通、日本なら「新婚初夜」となるはずなのだが、二人とも疲れて眠ってしまった。
翌朝、起きると嫁達150人が集まって何やら話している。
何を話し合っているのと聞けば
「サリー様だけズルいです!」
「私もウェディングドレスが着たい!」
「ご主人様と結婚式をしたい!」
どうやら、サリーに嫉妬しているようだ。
もう、こうなったらヤケだ!
俺はベルさんを呼んで、「この子達、全員のウェディングドレスと指輪をお願いします!」
「全員って、150人全部ですか?」
「その通り!指輪はこれと同じのでお願いします!」
一か月後。
「ゼノンさん、また牧師をお願いできますか?」
「いいですよ。どなたの結婚式でしょう?」
「俺と、俺の嫁150人との挙式です!」
「しかし、150人ともなれば、王宮の神殿には入りませんよ。」
「大丈夫です!俺の家でやりますから!」
150人合同結婚式当日。
空はどこまでも青く、探しても雲はない。ただ心地よい日差しだけが降り注ぐ。
結婚式は、宮殿の広場で行う事にした。
緑の絨毯に白いドレス姿の嫁が150人。上から見るとさぞかし綺麗なんだろう。
「汝~・・・。誓いますか?」
「誓います!」
「汝~・・・。誓いますか?」
『誓います!』150人の誓いが宮殿に響いた。
俺のスマホが鳴り、出てみるとサリーナだ。スピーカーをオンにしてくれとのリクエスト。
「私は女神クリス・サリーナです。」
自然と全員が膝をつく。
「今日は、結婚式が行われ本当に良かったですね。」
「これからもオウカの事をよろしく頼みますよ。」
『はい!女神様!』
それから一ヶ月間、新婚初夜というまた眠れない日がやって来た。




