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Venus And The SAKURA  作者: モカ☆まった~り
リンド法国編
105/165

0103 エール

 ベルサイユ宮殿に俺達は戻って来た。

「お帰りなさいませ!ご主人様!」足早に妻たちが迎えてくれる。

「主殿!お帰りなさいませ!」男性陣は敬礼する。

「お帰り~。」と子供たちが駆け寄ってくる。


 こうしてみると、実に大家族だなとも思ったりして。

「皆の顔を見れて嬉しいよ!今日から正式に帰って来たからまた皆と楽しく過ごそうな!」

 ワーーーッ!と言う歓声と拍手が聞こえる。うん、帰って来たんだな。


「ジギルにローズ、リリア、茜、他の皆も本当にご苦労様!」と玲子が労う。

「いえ、とんでもございません!主と共にいるのは幸せでした!」とジギルが言う。

「ごしゅじんさまぁをほとんど独り占め出来たからぁ、満足よぉ」とローズの言葉に他の女性陣が殺気立つ。喧嘩は止めようね。


「さあ、今夜は慰労会よ!皆で楽しく飲みましょう!」と玲子がはしゃぎだす。一番うれしいのは玲子なんだろうな。

「じゃあ、料理を作って来ます」と厨房に行こうとするリリアを玲子が止めて、「貴方も主役の一人なんだから、桜花さんの隣に座ってなさい。」

「いいんですか?」リリアは顔を赤らめて俺の隣に座る。

「ジギル!貴方たちも主役なんだからゆっくりとしなさいよ!」

「か、畏まりました!しかし、なれないもので・・・。」

「いいから座ってなさい!」

「は、ハイ!」と椅子に座る。

 ローズは・・・と言うと、言う訳でもなく俺の隣に座ってべったりとくっついている。


 キッチン担当のシェフを筆頭に作りだされた料理がドンドンと運ばれてくる。

 それもこんなに食べれるのか?というすさまじい量だ。

 肉が中心だった為か、獣人の傭兵団の皆は貪りつくように食べて行く。すさまじい。


「あれ?こんな料理作れたっけ?」出てきたのはピザである。

「ええ、コックにこんなものが出来ないかと相談したら、一生懸命に作ってくれたのよ。」

「へぇ~、コックを呼んできてくれよ。」

 分かったと玲子が厨房に入り、コックが帽子を脱いでやって来た。

「このピザを作ったのって、コックなの?」

「はい、そうです・・・。」

「一から考えて作ったの?」

「はい・・・。お口に合わなかったでしょうか?」

「でかしたよ、コック!美味いよ!大変だったろう!ご苦労様。」

「い、いえ、お褒め頂き、ありがとうございます。」両手に持ったコック帽を恐縮しているのか握りしめている。

「いや、本当に美味いよ!」コックはパァっと明るい顔になった。

「コックはイタリアンが得意なのよ。」玲子がコックの事を自慢げに言う。

「そうか、レストランミツヤ3号店が出来たとしたら、洋食屋でもいいかも知れないね。」

「そ、私もそのつもりよ。」計画にあるのだろう玲子はウィンクをする。

「それでは失礼します。」コックは厨房に戻って行った。


「ピザを食べるんだったら、ワインもいいけど、ビールが飲みたくなるなぁ~」

 そう、この世界にはビールがないのだ。ヒガシムラヤマ領でも作ろうと試行錯誤をしてみたのだが、知識がないために作れない。麦とホップが必要とまでは知ってるんだけどなぁ。

 リョウタに聞いたけど、二ホン国は専らニホンシュだし、ワインもなかったものなぁ。


「ああ~、ビールが飲みたい!」

「そんなに飲みたいのですか?」

「ああ、ピザにはビールでしょ!」

 ん?誰の声?聞きなれた声だけど。

「オウカさん、お帰りなさい。」声の主はバレットだった。今回は傭兵数人を連れている。

「オウカさん、ところでビールって何ですか?」

「ああ、黄金色で、シュワシュワしていて、飲むと喉にキューって来る少し苦い飲み物だよ。」

「へぇ~、そんな飲み物があるんですね。」とバレットは感心している。

「そのビールというものとは違いますが・・・。」と傭兵に樽を持って来させる。

「似たような飲み物でしたら、用意出来ますよ。エールって言うのですが。」


 エール。異世界物のビールって言ったらこれでしょ!

「飲みたい!そのエールっていう物をくれ!」

「はいはい、今開けますから。」と専用の台に樽を乗せて栓を開ける。

 すると琥珀色の液体が出て来た。これがエールか!

「頂きます!」と一口飲んでみる。

「どうですか?」バレットが覗き込むように見てくる。

「美味いんだけど、これで冷えてたら言う事ないなぁ~。」

 そう、俺達は冷えたビールがある日本で育ったのだ。外国には常温のビールがあるらしいけど、やはり冷えたビールが最高なのだ!


「冷やせばいいのですか?ご主人様」とポトフが声を掛けてくる。

「私の氷魔法で冷やせますよ。」

「何!是非とも頼む!」とグラスと樽ごと冷やしてもらった。

冷えたエールを一口。喉にキューっと来る感じ。これよ、これ!

「美味い!ポトフ、ありがとう!」と頭を撫でる。

「まだまだありますよ!」するとバレットの傭兵が樽を6個持ってきた!

「皆!飲め飲め!」と全員に冷えたエールを促す。

「改めて、乾杯!」



「しかし、この王国にエールがあるなんてな、知らなかったぜ。」

「これは、特別なルートで入った物なんですよ。」

「特別?どこから?」

「シェラハ王国です。」

「へぇ〜。そんな国があるのか。」

「中立国家ですけど、何を考えているのか解らない所なんですよね。現在の所、友好的にお付き合いが出来ないか模索中です。」

「そのお見上げがこのエールって訳?王国からは何を持って行ったの?」

「コショウです。」

「コショウ?そんなものでいいの?」

「オウカさん、知らないのですか?コショウと言えば、金と同じぐらいの価値があるのですよ!」

「へぇ〜コショウと言えばヒガシムラヤマ領でも栽培してるけどね。あれにそんな価値があるものなのかね~。」

「ええ、ですので王直轄の畑でコショウを育てているのです。」

「ふ〜ん。どこの貴族の管轄なの?」

「いえ、どの貴族にも触らせていません。全てレイコ夫人に任せています。」

 え?そんな話、聞いてないよ?いつの間に?


「お〜い玲子〜」少し酔っぱらったみたいだ。

「な~に?」

「お前、畑でコショウを作ってるんだって?」

「正確にはコショウもだけど栽培してるわ。」

「人材はどうしたんだ?」

「戦争で焼け出された人達を雇い入れたのよ。」

 なるほど。福祉活動も兼ねてる訳ね。


「それじゃあ、このエールを飲んじゃいけなかったんじゃないのか?コショウのお返しだろ?」

「いいんですよ。私はエールは苦手ですし。」と気まずそうなバレット。

・・・ん、この雰囲気、もしかして。


「バレット、何か隠しているだろう?」

 ギクッとしたバレットが「そ、そんな訳ないじゃないですか!」とあたふたしている。

「怒らないから、正直に言ってみなよ。」

「そ、それでは。」

 バレットはコホンと咳ばらいをして、

「今度の日曜日、開けといて下さい!」

「はぁ?なんで?」

「実はヒガシムラヤマ領再興の栄誉を称えまして賞詞と言いますかお礼と言いますか・・。」

「つまり?」

「はい、オウカさんが嫌いな硬い式典です。」


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