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Venus And The SAKURA  作者: モカ☆まった~り
貴族領地編
100/165

0098 四者会談

「リョウタ・サカグチ!」とゼノン司祭が驚きの声を発した。

「バレット、何か知っているのか?」

「い、いえ、古い文献に同じ名前が載っていたような気がしただけです。」

「二ホン国国王、リョウタ・サカグチ殿、私はヤヌス国王バレット・クロゲワギュウ・コローレである!この度はご足労頂き、誠に感謝する!このような場所では話もしずかろう、食事でもしながらでどうか?」

「いたく、感謝を致します。」とリョウタは深々とお辞儀をした。


ー***-


 ここは、応接室・・・。と言うより王族が食事をする所。

 長いテーブルに無駄に多くの椅子が並べられている。

 そのテーブルの端、上座にバレット、下座にリョウタが座る感じになっている。


・・・リョウタって、人間の姿になるとこんな顔になるのか。普通のオッサンだな。


「これは、私の妻でカレンと申します。」赤い生地に桜の刺繡。リョウタが紋付き袴の姿に合わせたのだろう。相変わらずの隙のない美しさである。

「これはこれは、何とも美しいご婦人ですね。うらやましいですね。」

「私には出来すぎた妻でございます。」リョウタとカレンさんは深々と頭を下げた。


「それでは、私はリリアさんと料理を作りますので、これにて失礼を致します。」

カレンさんは、リリアと共に出て行った。


「これは、私共のお酒と調度品でございます。」と差し出されたのは、ニホンシュに漆器、ニホンシュを飲むための細かい細工を施したガラスの容器が並べてある。

 その精巧さにバレットは驚き、「これほどの物を作る技術があるのですね。素晴らしい!」

「まずは、乾杯と行きましょう!」と俺は両者に促した。


「まずは、お刺身をお持ちしました!」と茜達ニンフがワゴンに乗せてやって来た。

「生の魚ですか・・・。」バレットとゼノン司祭が怪訝そうな顔をする。

「はい。新鮮な魚は生でも食べることが出来るのですよ。こちらのソースを付けて食べてください。」と黒い液体を差し出す。

「このソースは王国では見た事がないですな。」 ゼノン司祭が不思議そうに眺めている。

「このソースは「ショウユ」と言うもので、大豆という植物から出来た物です。」

「でも、あたりはしないのですか?」とバレットが半ば心配そうに言うので

「では、こちらを少しだけ乗せてお召し上がり下さい。」緑色の物を差し出す。

「これは?」

「これは『わさび』と言う植物で、水が綺麗な所にしかない貴重な物です。食あたりを防ぐ効能があります。」

「では、一口。」バレットとゼノン司祭が口に入れた。

「おお、これは美味いですね。」とバレットが舌鼓を打つ。

「私の国には海もございますので、他にも美味い魚が沢山あるのですよ。」


「それでは、話を致しましょうか」と俺が持ちかける。

「そうですね。それでは、お伺い致しますが、二ホン国とはどこにある国なのでしょうか?」

「王国から、アムス山脈の向こう西側にあります。」

 その言葉にバレットとゼノン司祭が勢いよく立ち上がる。

「それって、魔王国ではないのか?」

「以前は、魔王国と言っておりましたが、オウカ殿に二ホン国と名乗るようにと名付けをしていただきました。」

「やはり、リョウタ・サカグチと言う名前は・・・。」とゼノン司祭が口にする。

「はい、300年前に亡くなった先代勇者の名前をオウカ殿に賜りました。」


「魔王国と国交なんて結べるか!」とバレットが声を荒げる。

「私も反対ですぞ!」とゼノン司祭も同じように声を荒げる。

「まあ、待ってよ。」と俺は二人をなだめる。

「そういう事になると思って、今日はもう一人呼んでいるんだ。」

「誰を呼んだと言うんだ!」とまだバレットは興奮気味。


「私の声を聞きなさい。」と美しい声が響く。女神クリス・サリーナの声だ。


 その声にバレットとゼノンは跪き、リョウタは頭を下げる。

「バレット国王、ゼノン司祭よ、私の話を忘れたのですか。」

「何の事でしょうか?」と跪きながらバレットが伺う。

「オウカを信じなさい。と言う話です。」

「確かに伺いました。しかし、魔王国と取引をする訳には参りません。」

「それは何故ですか。」

「魔王国は人類の敵であるからです。近年中に魔王国が攻めて来るとの話を聞いています。」

「魔王国が悪い者だと言うのですか。」

「はい、しかも裏切者のリョウタ・サカグチの名を語るのも納得できません」ゼノン司祭もサリーナに訴える。

「ゼノン司祭よ。先代勇者が悪者だと何故、言い切れるのですか。」

「古い文献にリョウタ・サカグチは裏切者と書いてあったからでございます。」

「何故、リョウタ・サカグチが魔王国を庇ったのか、文献には書いてありましたか。」

「いえ、ただ、裏切者だとしか。」


「ほほう、なぜ裏切ったと思っているのですか。」

「魔族側についたからです。」

「魔族側についたとして、その理由まで考えたことはありますか?」

「いえ、考えたことはございません。」

「そうですか・・残念です。」


 リョウタが口を開く。「実は良太様は、我々が何もしていないことを解ってくれたのです。」

「なんだと!魔族軍は人間の領地に攻め込んで来たではないか!」バレットが口を荒げる。

「我々は攻め込んではおりません。実際に、確認をされましたか?」

「いや、私が生まれる前の話だからな。文献しか残っておらん、そこには魔王軍が攻め込んで来たので、応戦したと書いてある。」

「事実は、攻め込んできたのは人間だったのですよ。」と魔王が落ち着いて話す。

「なんだと!デタラメな事を言うな!」

「それは本当の事ですよ。バレット国王。」サリーナだ。

「私も見ていましたから。」

「そ、そんなことが・・・。」バレットは冷や汗を流している。

「それで、今回はそれを理由に人間の領地に攻め込むとでもいうのか?」

「それは、先代の勇者様に誓ってありません。」

「なぜだ!?」

「先代勇者様には恩義しかありませんから。そして、いつかは人間と共に生きるようにと言われましたので。」


「オウカ様はこうやって、我々とサリーナ様を引き合わせてくれたのに、何故、先代勇者はそれをしなかったんだ!?」

「それは、先代勇者は人間に召喚されたからですよ。」サリーナの声。

「人間たちが同じ過ちを繰り返さないように、今回は私が召喚したのです。」

「一番悪いのは、人間と言われるのですか?サリーナ様。」

「残念ながら、そうです。理由は解りますか?」

「いえ、私には解りません。是非、教えてください。」バレットが懇願する。

「よく聞きなさい。」


「人間という生き物は、位を付けたがる生き物です。そして、その位を守ろうとする者、奪おうとする者が現れます。現にあなたは守るために兵を付け、近隣諸国は奪う為に戦争を始めようとしています。それほど、人間という種族は欲深いのです。」


「そして、身分の高い物にはへりくだり、弱い物には見下す言動をとる・・・。すこし違うだけで、差別の対象としてしまいます。」

「身分が高くなると、自身の欲望は一時的に満たされる訳なのですが、自分が強いと確認をしたがります。それが魔族への侵略です。」


「魔族という種族にはそう言った欲望はありません。ただ、毎日美味しい物を食べ、楽しく過ごすことが出来ればそれでいいと考えている種族です。まぁ、人間と違い永遠と言われる寿命のせいでもあるかもしれませんが・・・。」


「そんな魔族の本性を見たから、先代勇者は剣を置き、自身の持てる文化を魔族に教えました。その行動は欲にまみれた人間種より魔族の方が幸せに暮らす権利があると判断したからです。」


 バレットは肩を落とし、「我々人間の欲望と思い込みで勇者を反逆者として殺してしまうだなんて。なんとお詫びをすればよいのか・・・。」


「そこで、提案があるのですが・・・。」俺が話を始める。

「まずは、魔族、人間種との共存を目標に、王国と二ホン国とで国交を開くのはどうでしょうか?」


「リョウタ、どうだ?」

「それが出来れば、共存の足がかりになりますな!オウカ様!」

「その考えがいいと思うわ!」サリーナ。

「バレット、どうでしょう?公に出来ないのは解っていますので、私にお任せいただければと。」

「本来ならば、貴族達の意見を聞かねばならない所だが、この案件に関しては私の独断で決めよう。オウカ様、リョウタ・サカグチ殿、そしてサリーナ様、どうぞよろしくお願いします。」


 国交は締結され、バレット国王、二ホン国国王リョウタは握手をした。

「ところで、バレット国王よ。」サリーナが言う。

「何でございましょうか?サリーナ様。」

「何で、この国にある私の像は全部、不細工に作ってあるのですか?」

「あの像は、我が国一番の職人に作らせているサリーナ様の美しさを称えた美の結晶でございます。」とバレットは焦った口調で答える。

「私は、あのような不細工ではありません。今、オウカのドワーフに私の像を作らせています。全部、それに取り替えなさい!」

「バレット、その意見は聞かなくてもいいと思いますよ。」俺は言った。

「何だとー!オウカよ!いつになったら私の美しさに気が付くんじゃー!」スマホを切った。


「ささ、友情の証にお酒を飲みましょう国王陛下!」リョウタが日本酒とガラスで出来たグラスを取り出す。

「おお!リョウタ、また新しい技術を習得したんだな!」

「やはり、吟醸は冷酒に限りますからね!オウカ様もどうぞ!」


 国王も、リョウタの人の好さにすっかりご満悦、この日は少し遅くまでのパーティーとなった。


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