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今日生まれた星の話

作者: にょろろ

今日、1つの大きな星がまっくらな宇宙の中で生まれました。


それはとても大きな大きな星だったので、宇宙を調べる学者さんたちは「今までどうしてこんな大きな星を見付けられなかったんだろう?」と、みんなで首をかしげていました。


大きな星には秘密がありました。それは生まれる前の記憶があったのです。

大きな星は生まれる前は、地球の生き物でした。


大きな大きな星は地球では小さな小さな虫でした。


虫は地球では嫌われものでした。

一生懸命に飛んでご飯を探していると、手で払われて邪魔にされます。

物で潰そうとされたり、時には苦しい風をかけられてやっつけられそうになってしまいます。

居なくなってしまったお友達の虫もいっぱいいました。


ある日、小さな虫は1つのお家にご飯を探しに入りました。

そこには可愛い可愛い赤ちゃんがいました。

甘~いミルクの香りのする赤ちゃんの側へ小さな虫は引き寄せられました。


赤ちゃんの側には小さなテーブルがあって、ミルクが1滴こぼれていました。

小さな虫は美味しいごちそうをお腹いっぱい飲みました。

あまりの美味しさに後ろに赤ちゃんが近づいて来ているのにも気付かずにミルクを飲んでいました。

小さな虫が振り向くと、そこには赤ちゃんの大きな顔がありました。

ゆっくりと手を上げる赤ちゃんを見て、小さな虫は『潰される!』と目を閉じました。


けれど、いつまで経っても何も起こりません。

小さな虫が恐る恐る目を開けると、赤ちゃんは手をテーブルの近くに置いただけで、不思議そうに虫を見ていました。

小さな虫が逃げると、赤ちゃんは不思議そうに目で追いかけるだけでした。


小さな虫はお家から逃げるのを止めて、赤ちゃんの真上をクルクルと飛んでみました。

すると、さっきまで不思議そうにしていた顔がニッコリとなって、赤ちゃんはキャッキャッと声を出して笑いました。

嫌われものの小さな虫は赤ちゃんの笑顔を見た途端に胸の辺りが暖かくなりました。


『君は僕が嫌いじゃないの?』

伝わらないはずなのに小さな虫は赤ちゃんに尋ねました。

伝わらないはずなのに赤ちゃんは小さな虫を見て、またキャッキャッと笑いました。


『伝わらないはずなのに…』小さな虫は赤ちゃんを見つめました。

『君はヒマワリのように笑うんだね』小さな虫も赤ちゃんを見て笑いました。



その時、部屋中に響くような叫び声がしました。

小さな虫が振り向くと、部屋の入口に女の人が立っていました。

女の人は怖い怖い顔をして小さな虫をにらみつけていました。


「わたしの可愛い可愛い赤ちゃんの側に、汚い虫が飛んでいるわ!」

女の人は金切り声を出しました。

「やめて!近寄らないで!」

女の人は小さな虫を手で追い払いました。


『早くこの家から出ないと!』と小さな虫は慌てて逃げました。

小さな虫は窓から外へ出ようとしました。

『その前に…もう1度だけあの子を…あの子の笑顔を…』と小さな虫が振り向きました。


シューッ!!


白い苦しい風を全身に浴びて、小さな虫は飛ぶことが出来なくなり床に落ちました。


~ …苦しい…苦しい…あの子はこの苦しい風を浴びなかったかな?…あの子は無事だろうか…? ~


小さな虫が赤ちゃんを見ると、赤ちゃんは泣いていました。

虫の方へ向かおうとして「汚いからね、ダメよ」と女の人に抱かれ、腕の中で泣きじゃくっていました。


小さな虫は泣きじゃくる赤ちゃんを見つめながら声にならない声で呟きました。

『泣かないで…泣かないで…僕は大丈夫だから…どうかヒマワリのように笑っていて…』

そこで小さな虫は意識がなくなってしまいました。


小さな虫は天の国に向かいながら、ずっとずっと神様にお願いをしていました。

『神様、どうか僕を生まれ変わらせてくれるなら、大きなものにしてください。

誰にも潰されないくらいに大きく。苦しい風もへっちゃらなくらいに大きくしてください。

そして、ヒマワリのような笑顔のあの子をずっとずっと見守らせてください。

他は何も望みません。お友達が居なくても、あの子とお話が出来なくても構わないから、僕のお願いを叶えてください!』


小さな虫は強く強くお願いをしました。



今日、1つの大きな星がまっくらな宇宙の中で生まれました。


大きな星は地球を見守っているかのようでした。


あるお家の窓から、お母さんに抱っこされた赤ちゃんが外を見ていました。

空に手をかざして、機嫌良くキャッキャッと笑っていました。


その笑顔は、まるでヒマワリのようでした。

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