98.空腹の少女
「ごほっ、ごほっ」
魔王レーティアの攻撃を受けうずくまるラスティール。レーティアが笑いながら言う。
「壊してあげる」
そしてレーティアより放たれる暗黒弾。村比斗が声を上げる。
「ラスティール!!!」
まだ立てないラスティールに暗黒弾が迫る。
「花傘防御!!!」
ドオオオオオオン!!!
真っ赤な花傘が倒れたラスティールの前に可憐な花の様に咲く。
「ロ、ローゼンティア……」
ようやく目が覚めたラスティールが自分の前に立って攻撃を受けるローゼンティアに声をかける。
「何をしていらっしゃるの? あのような女子さっさと倒してしまいますわよ!!」
ローゼンティアはレーティアの攻撃を受けきるとそのまま花傘を持って突進する。
「ああ、そのつもりだ」
ラスティールも双剣を持ち直すと改めてレーティアに向かって突進。
「ラスティール、ローゼンティア……」
村比斗が力なくふたりの名前を口にする。
村人がいて強化が掛かっているはずなのに、これだけの人数で攻撃しているのに、平然とその相手をする魔王レーティア。村比斗は遠目から見ているだけでその圧倒的力に潰されそうになる。
「ミーア、まだなのか……」
自分の目の前で必死に魔法の詠唱を続けるミーア。しかし村比斗の問いかけにミーアからの返事はない。
「はっ、はっ、はあああっ!!!!」
ラスティールの双剣、六聖剣が力強くレーティアに撃ち込まれる。
「はあああ!!!」
ローゼンティアの魔力を帯びて真っ赤に輝く花傘も同時に攻撃。
「ま、負けないよおお!!!」
倒れていたレナも自慢の拳でレーティアに殴り掛かる。
「ど、どうなってやがるんだ……」
しかしその総攻撃をレーティアは自身の周りに張った魔法障壁で耐えている。
「きゃあああ!!!」
もう何度目だろう。
攻撃を繰り返しながら反撃を受け吹き飛ばされるラスティール達。
現状での最強の勇者たちを集めてもたったひとりの少女の魔王にこれほどまでに一方的にやられるとは。
「村比斗君……」
ミーアの陰に隠れていた村比斗に声が掛かる。
「ミーア?」
前に突き出したエルフの杖に輝くほどの白い魔力が充満している。その小さな体は経験のないほどの強い力に震えている様にも見える。
「い、行けるのか?」
時間を稼いでと皆に依頼したミーア。その準備が整ったようだ。
「うん、村比斗君。ちょっと下がってて……」
「あ、ああ。無理するなよ」
そう言いながら村比斗は体までも白く光り始めたミーアから離れる。
(綺麗だ……)
杖を構え、真っ白に輝くミーアを見て村比斗はまるで彼女が天から舞い降りた天使のようにも見えた。ミーアが小さな声で言う。
「我に宿りしエルフの力よ……」
ミーアの体から天に向かって白い渦が巻き起こる。
「我は命じる。今、その力を持って目の前の邪悪なる存在を浄化せよ。我の名はミーア。望むはは聖なる力。天に轟かしその力で邪を祓いたまえ!!!」
ミーアは持っていたエルフの杖を天高く掲げる。
「神聖魔法・浄化の光!!!!」
ミーアの叫び声と同時に彼女から竜巻の様に天へと延びる真っ白な渦。それは一筋の光の様に天に届くと、更に輝きを増して真下にいるレーティアに向かって勢いよく落ちた。
「下がってえええ、みんなあああ!!!!」
魔法を放ちふらふらのミーアが声を上げる。
「え?」
レーティアと撃ち合いをしていたラスティール達がその声に気付き天を仰ぐ。
「な、何だあれ!?」
そう言うより先に無意識にその場から離れる。
ドオオオオオオオオン!!!!!
一瞬だった。
天から落ちて来た光の渦が、禍々しいオーラを放っていたレーティアに直撃する。
静寂。
光りの渦が落ちた後、大きな音を立ててから辺りが静かになる。直撃を受けたレーティアが目を閉じてその場に倒れる。
巻き沿い避けて離れていたラスティール達が剣を持ち、その様子をじっと見つめる。
「やった、のか……?」
ラスティールが小さくつぶやく。
「う、ううっ……」
その時倒れていたレーティアから小さな声が聞こえ、その華奢な体が動いた。
「まだ生きておるぞおおお!!! とどめを刺せえええ!!!」
一番近くで見ていたマッドがボロボロの体でレーティアへ向かう。
「待てっ!!!」
攻撃をしようとしたマッドに村比斗の声が響く。
「ど、どうしたの? 村比斗君?」
村比斗の隣で力なく座るミーアが声をかける。村比斗は立ち上がり、レーティアの方へ歩きながら言う。
「感じないんだ……」
「村比斗?」
ラスティールも村比斗に付き添い歩き始める。
「彼女から感じないんだよ。邪気を……」
「村比斗……」
村比斗は歩きながら、これまで感じていた魔王としての恐怖が全くなくなっていることに気付いていた。魔王どころか、魔物としての恐怖も感じない。こうして自分が近付いているのがその証拠である。
村比斗はレーティアの近くまで行くと腰を下ろし、小さな呻き声を上げているレーティアを見つめる。
(痩せた体。弱々しい声。邪気が抜けて魔物ですらなくなったと言うのか……?)
「む、村比斗。気を付けるんだぞ……」
近くに寄って来たラスティールたちが心配そうな顔で言う。村比斗はそれに頷いて応える。
「大丈夫か?」
村比斗がレーティアに声をかけた。
「ううっ……」
うつ伏せに倒れたまま小さな声を出すレーティア。
「起きられるか?」
レーティアが少し顔を上げて村比斗を見つめる。
「……お腹空いた」
村比斗は少し笑って倒れているレーティアに手を差し出し、その細い体を背負う。
「む、村比斗っ!?」
予想外の村比斗の行動に驚くラスティール達。村比斗がレーティアに言う。
「俺の作った美味い野菜があるぞ。一緒に食べるか?」
村比斗は歩きながらレーティアに言う。
レーティアは背負われながら小さく頷いて応える。
「村比斗様ぁ?」
「村比斗君??」
皆が呆然と見つめる中、村比斗は軽く片手を上げそれに応えホワイト邸へと歩いて行った。
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