97.第三の魔王レーティア降臨
「ラスティちゃん……」
「ああ、分かっている」
ホワイト邸にいたミーアがその恐るべき魔力に気付きラスティールに言う。ラスティールも感じたことの内容な圧倒的な力に身震いしながら村比斗に尋ねる。
「感じるか?」
「ああ、感じる。なんだ、これは……」
村比斗の全身に鳥肌が立っている。
明らかにこれまでの魔王とは一線を画すもの。ミーアが言う。
「ここに来られちゃまずいね。さあ、外に出るよ!!」
「ああ!」
そう言って勢いよく館の外で出る。
「ミーアちゃん!」
同じくその圧倒的魔力を感じて外に出てきたレナがミーアに気付いて声を掛ける。ラスティールが尋ねる。
「レナ、これがお前の戦った少女の魔王の気か?」
レナが頷いて言う。
「うん、そうだよ。でも、あの時よりもっと強力になっているかな。何と言うか禍々しさが増えたというか……」
「とりあえず外に出よ! ここじゃみんなをまき込んじゃう!!」
「分かった!」
「な、なあ、俺はどうしよう!?」
一緒に居た村比斗がラスティール達に尋ねる。
「足の震えは大丈夫か?」
村人である村比斗にとって魔王の存在は計り知れない恐怖。対峙するだけで気を失うほどのもの。それを知っているからこそラスティールが気を遣って尋ねる。
「ああ、大丈夫。お前らが守ってくれるんだろ?」
「ああ、無論だ」
「村比斗君がいると強化が掛かるからね!」
ミーアが笑いながら言う。
「ああ、遠くから見守ってやるぞ!」
「じゃあ、迎え撃つぞ!!」
「うん!!」
ラスティール達が屋敷の門を出て外へ飛び出す。
「みんな!!」
既に屋敷の離れた場所に残りの『六騎士』であるローゼンティアにマッドが、王都の空の方を見つめていた。村比斗がやって来たことに気付いたローゼンティアが甘い声を出して喜ぶ。
「村比斗様ぁ、ティアはお会いできて嬉しゅうございます!!」
そう言って村比斗に抱き着くローゼンティア。しかしすぐに村比斗を見つめて真面目な顔で言う。
「でも村比斗様。今回は少し離れた場所でご覧ください。あれは危険でございます」
そう言って再び王都の方を見つめるローゼンティア。
「来るぞっ!!」
一番前に立った【筋肉】マッドが細心の注意を払いその少女を迎える。
「あれが……、第三の魔王……」
ラスティールが空をふわりと飛んでくる汚れた白のワンピースを着た少女を見つめる。第三の魔王レーティアは皆が見つめる中、ゆっくり地面に降りると周りを見回した。
「あなた達ね、強い勇者ってのは」
「お前が魔王だな?」
マッドがそう言いながらレーティアを見つめる。
汚れた白いワンピース。真っ青で長い髪。顔の色も血色が悪いのか、もともとそのような色なのか青い顔をしている。
「魔王? そうね、魔王かな」
レーティア自身、正直まだ魔王と言う名前はしっくりこない。与えられた名前だから名乗っている。その程度だ。ラスティールが言う。
「なんて強い魔力だ。これまでの魔王が可愛く見える……」
口には出さないが、その場にいた皆が感じていたこと。一瞬でも気を抜いたらいつ殺られるか分からない。
「もう怪我は治ったのかな?」
以前交戦したことのあるレナがレーティアに尋ねる。
「怪我? ああ、気持ち悪かったやつね。治ったわ。もう大丈夫」
レーティアが少しだけ笑って答える。
(おいおい、なんだよ、あれ……)
村比斗は一番後ろにいてラスティールの影からレーティアを覗いている。一介の村人である彼にとって本来このような場所にいるべきではない。簡単な戦いに巻き込まれても死んでしまう存在。ステータスを見たがここに居る誰よりも強い。村比斗は腰が抜けて今にも失神しそうであった。
「ひとりだけ、変なのがいるね……」
レーティアが村比斗の存在に気付く。
「変なのって言うか、最も殺したい相手……」
レーティアが村比斗をじっと睨む。その視線に気付いた村比斗があまりの恐ろしさに立てなくなる。
「大丈夫だよ」
(え? ミーア!?)
そんな恐怖に染まる村比斗の前にミーアが立つ。手には先にエルフの里で入手した秘宝『エルフの杖』。そしてみんなに言った。
「みんな、少しだけ時間を稼いでくれる?」
ラスティールが尋ねる。
「どういうことだ? ミーア」
「うん。あの子ね、なんて言うか強い呪術によって心が蝕まれているようなの。やったことないけど私がそれを祓えば意外と簡単に倒せるかもしれないんだ」
マッドが尋ねる。
「できるのか? お前に」
「分からない。でもこの杖があればきっと何とかなる!!」
その自信に満ちた顔を見てラスティールが答える。
「分かった。じゃあ、みんな。少しの間、時間を稼ぐぞ!!」
「おう!!」
国を守る最高の勇者『六騎士』がミーアの前に盾の様に並ぶ。そのミーアの後ろでガタガタと震える村比斗。ミーアが小声で言う。
「村比斗君はそこでじっとしていてね。ミーアから離れないでね」
「あ、ああ……」
離れようにも足が震えて動くことすらできない。ミーアは前を向くとエルフの杖を前にかざし魔法の詠唱に入る。
「いくよ!!!」
まず先にレナが飛び出した。ぼんやりとこちらを見るレーティアに向かってレナがこぶしを振り上げ突撃する。
(あの子は強い。でもボクもあれから鍛えたんだ!!)
レナの頭には前回敵わなかった経験がこびりついている。今回は絶対倒す。意気込んでレナの先制攻撃が始まる。
ガンガン!!!
レナの両拳の突きを、レーティアは手に出した魔法障壁でガードする。
「まだまだ!!!」
レナはその魔法障壁ごと更に全力で殴り続ける。
ドンドンドンドン!!!!!
当たりの地面が振動するような重い音。【天才勇者】と呼ばれたレナが、その全力を持ってただひたすら拳を打ち込む。
「くっ……」
さすがのレーティアも絶え間なく撃ち込まれる拳の嵐に少し後退する。
「うっとうしいよ……」
レーティアはもう片方の手を殴り続けるレナの目の前に差し出す。
ボン!!!
その瞬間レナの目の前で小さな黒き爆発が起こる。
「きゃああ!!」
咄嗟に腕でそれを防いだが、ほぼ直撃を食らった形のレナが後ろに吹き飛ばされる。
「休ませませんわ!!!!」
レナに代わって素早くローゼンティアが深紅の花傘を持って攻撃に入る。
「咲き乱れ傘!!!」
一瞬油断したレーティアに赤き傘の弾丸が撃ち込まれる。
「うぐっ!!」
レーティアが防御姿勢をとりながらその攻撃に耐える。そして小さな声で言う。
「邪魔よ……」
(魔力が、膨張して……!?)
攻撃を行いながらローゼンティアがその暴発しそうな魔力を感じ一瞬怯む。
「邪魔邪魔邪魔邪魔!!! 壊れろおおおお!!!!」
レーティアを中心に暴発する魔力。
「筋肉防御!!!!!」
ローゼンティアの前にマッドが防御姿勢をとりながら立ちはだかる。
ドオオオオオオン!!!!
「きゃああ!!!」
大きな爆音。
地面が揺らぐほどの爆発。
もくもくと黒い煙が立ち込めた後、そこに倒れるマッドとローゼンティアを見てラスティールが駆け出す。
「貴様あああああ!!!!!」
双剣を振りかざし、一気にレーティアへ詰め寄る。
「魔法障壁」
再び張られたレーティアの防御壁。
ドフ!!!
その壁に吸い込まれるようにして止まるラスティールの双剣。
「くそっ!!」
その瞬間、再び黒き小さな爆発がラスティールの前で起こる。
ボン!!
レナが食らったのと同じ暗黒爆発。
「きゃああああ!!!!」
ラスティールの体が後方へ吹き飛ぶ。
「ラスティール!!!!!」
村比斗はただミーアの陰に隠れてそれを見ていることしかできなかった。
お読み頂きありがとうございます!!
続きが気になると思って頂けましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。
評価はこのページの下側にある【★★★★★】をタップすればできますm(__)m




