76.魔王対策会議
「ローゼンティアっ!!!!」
真っ先に村比斗がその変わり果てた姿の彼女に駆け寄った。そして倒れそうなその体を支えながら叫ぶ。
「ローゼンティア、大丈夫か!? ローゼンティア!!!」
ローゼンティアは村比斗の腕の中で少し笑みを浮かべて言う。
「ティアでございますわ……」
一瞬動きが止まる村比斗。しかしすぐに叫ぶ。
「大丈夫か、ティア!!!」
それを聞きローゼンティアの目に涙が溜まる。
「なんと嬉しいことでしょうか。村比斗様に、わたくしの名を呼んで頂けて……」
「大丈夫なのか!?」
「村比斗様、お約束ですわよ。帰ってきたら強く抱きしめて頂くって……」
村比斗はすぐにローゼンティアを抱きしめる。
「もっと……」
ローゼンティアの声に村比斗が更に力を入れて抱きしめる。ローゼンティアが答える。
「嬉しいですわ……、村比斗様……」
周りに集まったラスティール達も今ばかりは仕方ないと言った顔で見つめる。そしてすぐにデレトナに言う。
「急ぎミーアを呼んで来い、デレトナ!!」
「承知っ!!」
デレトナが急ぎ部屋を出る。弱っているレナがローゼンティアを見て言う。
「ティア、大丈夫かい? どうしたんだよ、それは一体??」
ローゼンティアは村比斗の腕の中で答える。
「ランディウス様にやられましたの」
「!!」
一同、驚きで静まり返る。
『六騎士』であるローゼンティアがここまでやられる相手となるとそうはいない。ラスティールが言う。
「本当なのか? もう少し詳しく聞かせてくれ!!」
ローゼンティアは頷いて自身に起こったすべてを皆に話した。
「キュアヒール!!」
ローゼンティアは話をしながら急いでやって来たミーアの回復魔法を受ける。そして彼女が話し終えると、皆の顔は暗く、そして悲痛なものとなった。ラスティールが言う。
「信じられぬ。騎士団長が、そんなこと……」
しかし『六騎士』ボロケーニャの死、ローゼンティアへの仕打ち、そしてレナの話を考えるともはや疑う余地はなかった。ラスティールが言う。
「と言うことはお父様を拉致したのも……」
ラスティールの言葉にデレトナが続く。
「それも魔王の仕業ということか……」
沈黙する一同。
ミーアがレナに尋ねる。
「それでレナちゃん、ゾルドってのは近いうちにここにやって来るんだよね~?」
レナが答える。
「そうだよ!! だからやっつける準備をしなくちゃね!!」
同じ系統の生き物なのか、妙に息の合うふたり。レナもミーアの回復魔法ですっかり元気になっている。しばらく黙って聞いていた村比斗が皆に言う。
「作戦会議を開きたい。メンバーはラスティール、ミーア、レナにローゼンティア。悪いがそれ以外の者は一旦退室し、この後に出す指示に従って欲しい」
「分かりやした!!」
「はい、村比斗様っ!!」
デレトナやシルフィーユがそう言って退出して行く。残ったマーガレットが村比斗に尋ねる。
「あの、私は……」
「マーガレット。お前は急ぎ自領へ戻り万が一に備えて軍の整備をして欲しい。基本、魔王は俺達が止める。だから軍はもしもの時のため。とりあえずこれまで通り領地の開発と流民の保護を主に続けて欲しい」
マーガレットは頷いて答える。
「分かりましたわ。村比斗様!! 一旦私は戻ります、それでは!!!」
マーガレットもそう言って頭を下げ退室する。
「さて……、座れるか、ローゼンティア?」
回復魔法で幾分良くなったローゼンティアに村比斗が尋ねる。彼女は未だ村比斗の腕の中。首を横に振ってローゼンティアが村比斗に答える。
「嫌ですわ。ティアはこのまま村比斗様の腕の中でずっと……」
「落とすぞ、お前……」
「ローゼンティア!! いい加減ふざけるのは止めろ!! もう回復したんだろ!?」
ずっと我慢してきたラスティールが怒りの表情で言う。ローゼンティアは仕方がないと言った顔をして立ち上がると椅子に座る。
政務室にローゼンティア、ラスティール、ミーアにレナ、そしてその中央に村比斗が座る。村比斗が皆に言う。
「まず状況の整理だ。王都を襲ったのは恐らく魔王ゾルドの手下。死霊リッチに神竜ティアマット。ミーア、ティアマットは強かったか?」
ミーアが首を振って答える。
「うーん、あんまりかな……」
この時点で普通の『六騎士』と『レベルアップ組』との差が既についていることが分かる。ローゼンティアに尋ねる。
「ローゼンティア」
「ティアでございますわ」
「それはもう終わった。騎士団長ランディウスは強いか?」
『六騎士』でありレベルアップをしたローゼンティアは言ってみれば最強の勇者のひとり。ローゼンティアが答える。
「強かったですわ。ひとりでは勝てませぬ。特にあの六聖剣が厄介でございます」
『六聖剣』、それは騎士団長だけが持つことの許される如何なるものでも切り裂く剣。村比斗が言う。
「そうか。ランディウスがその強さとなると、魔王ゾルドも同等、またはそれ以上と見ていいだろう。で、そのゾルドがこのホワイト領に向かっているんだな? レナ」
「うん、そうだよ!! ボク聞いちゃったんだ!!」
レナが嬉しそうに答える。ミーアが言う。
「レナちゃん、すごーい!! ちょーほーぶいん、だね!!」
「そうだよ!! ボク、すごいでしょ!!!」
ちょっと緊張感のないふたり。場が明るくなると村比斗が苦笑する。
「そこで提案がある」
村比斗は一同を見て言った。黙って聞く一同。村比斗が言う。
「俺のことを、レナに話したい」
皆は静かにそれを聞いた。
予想以上に強い魔王軍。信頼できる強き者ならこちら側に引き入れたい。ラスティールが言う。
「賛成だ。異論はない」
「ミーアも大賛成!!」
「夫の決めたこと。妻であるわたくしが反対する理由などございませぬわ」
「ん? みんな何言ってるの? ボクはもう村比斗君のこと知ってるよ~」
ひとりだけ意味が分からないレナが首を傾げて言う。村比斗が笑って言う。
「ああ、お前は俺のことを知っている。ただ、俺の正体はまだ知らない」
「正体? えーっと、実はヘンタイとか!?」
レナの言葉にラスティールが反応する。
「それはもうそのままだろ、レナ」
「おい! ふざけるなっ!! ……実はな、俺は村人なんだ」
「ん? 村比斗?」
村比斗、並びに皆がレナに説明をする。
「えーっと、つまり村比斗君は『村人』であり、村比斗君を助けると貢献ポイントが貰えて……、えーっと、レベルアップできるってこと?」
「そうだ」
ぽかんとするレナにラスティールが言う。
「意味は分かったのか?」
「うん、分かったよ」
絶対分かっていないだろうと皆が思う。村比斗が言う。
「これより俺はレナとふたりで森へ向かう」
「お、襲う気か!!!!」
ラスティールが顔を赤くして言う。
「ば、馬鹿なこと言うな!! 俺が襲っても絶対勝てないし、それに俺はロリコンじゃない!!」
「前半は分かるとしても、後半は説得力ないな」
ラスティールが椅子に座り直して言う。ミーアが言う。
「レナちゃんのレベルアップをするんでしょ?」
「ああ、そうだ。ラスティールとミーアはここの守りを。ローゼンティアは怪我の治療。俺は唯一レベルアップしていないレナを強化してくる」
ラスティールが答える。
「分かった。安心して行ってこい」
「夫である村比斗様がお決めになったこと。わたくしも従いますわ」
「レナちゃん、頑張って来てね~!!」
レナが答える。
「うーん、良く分からないけど、ボク、頑張るよ!!」
「よし、それでいい。ランディウスが魔王軍の一員となると王都が心配だ。時間はない。すぐに行くぞ、レナ!!」
村比斗はレナの頭を撫でながら笑顔で言う。ラスティールはそんな村比斗を見ながら思う。
(出会った時はどうしようもない底辺勇者だと思い踏みつけたりもしたが、いやはや我ら勇者よりもずっと頼りになる男になるとは……)
ラスティールは魔王がどれだけ強くても、彼がいればきっと何とかなるだろうと心に思った。
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