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俺以外、全部勇者。  作者: サイトウ純蒼
第三章「ホワイト領の大躍進!!」
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57.暗闇の抱擁

 ドン、ドドドン、ドオオオオオン!!!


「ひぃ!?」


 村比斗はマーベロン家の階段下にある暗く小さな隠し部屋で、男爵の娘マーガレットとふたり身を潜めていた。村比斗達がここに来てからすぐ、家の外だろうか大きな何かを破壊する音と人々の騒ぐ声が聞こえ始める。



「な、なあ、俺達何か悪いことでもやったんか……?」


 狭い密室でマーガレットと身を寄り添うように座る村比斗が尋ねる。マーガレットが答える。


「わ、分かりませんわ。村比斗様が彼らから襲われるような心当たりもありませんし。でも大丈夫。私がお守りしますわ!!」


 マーガレットは隣で小さくなって震える村比斗のことが愛おしく、そして不思議と身を挺してでも守りたいと思ってしまう。




 一方、マーベロン家の鉄門前に集まった農業勇者達は、その門を揺らしながら大声で騒いでいた。


「村比斗様を出せーー!!」

「我々が村比斗様をお守りするっ!!」


 集まった農業勇者達へマーベロン家の守衛が怒鳴りつける。



「帰れ、帰れ!! お前達が騒いでいい場所ではないぞ!!!」


 しかし農業勇者達の興奮は収まらない。


「黙れっ!! 村比斗様を差し出せ!!! うおおおおお!!!」


 そう言いながら一斉に門を破壊しようとする。そこへこの騒ぎに怒り心頭の領主マーベロン男爵がやって来て言う。



「何だ、お前らは!! 何をしに来た!!!」


 怒りで紅潮した顔でマーベロンが言う。農業勇者達が答える。


「村比斗様を解放しろ!! あの方は我々の神だ!!」



「神だと!? 一体何を言っている!!」


 意味が分からないマーベロンの語気がさらに強まる。農業勇者達が続けて言う。



「お前達が村比斗様に無理強いしているのは分かっている!! 今、あの方に何かあったり、万が一でもここを去られたら我々がどうなるか分かっているのか!!」


「な、何を言っているんだ……」


 彼らの気迫にマーベロンが一瞬たじろぐ。農業勇者が言う。



「村比斗様からの農業指導もまだ不十分。それにあの方がご心配されていた雨不足による干ばつの危険もある。一刻も早く村比斗様と共に灌漑施設を完成させなければならないんだ。だからあの方をすぐに解放しろ!!」


「か、干ばつだと!?」


 初めて聞くその言葉にさすがのマーベロンも驚く。農業勇者達から合唱が起こる。



「村比斗様を解放しろ!!!」

「村比斗様を救え!!! うおおおおお!!!!」


 勇者でもある彼らが一斉に門に攻撃を開始する。



 ドンドン、ドドドドオオオオオン!!!



「だ、男爵は避難を!!」


 守衛が必死に守りに入るが鉄門は今にも崩れそうである。男爵は後退しつつ屋敷の兵に向かって叫ぶ。



「特殊守護兵を呼べ!! 今すぐにだ!!!」


「はっ!!!」


 そう答えた兵士の顔がその事の大きさに青ざめる。



 ドン、ドオオオオオン!!!


「ぐわあああ!!!」


 男爵が避難していると鉄門の方から破壊された音が響く。敷地内に入って来た農業勇者達が口々に叫ぶ。



「村比斗様を探せえええ!!!」

「おおおおお!!!!」


 敷地内にいた守備兵達と戦闘を始める農業勇者達。その数と勢いで守備兵達がどんどん押されて行く。

 しかし、マーベロン男爵が呼んだ()()がやって来てから事態が一変する。



「不法侵入者を殲滅せよ!!」


 金色の特殊合金の鎧を着たマーベロン男爵直属の精鋭『特殊守護兵』隊長が号令を出す。



「はああ!!!」


 長槍と盾を持った特殊守護兵達が敷地内で暴れる農業勇者達に襲い掛かる。



「ぐわあああ!!!」


 圧倒的強さ。

 この時代、爵位を持つ貴族は皆自衛のための私兵部隊を持つのが一般的。その中でもマーベロン男爵の私兵は群を抜いていた。


「ふん、雑魚勇者共め!!!」


 自慢の特殊守護兵の活躍により一気に形勢逆転したマーベロンが、少し離れた場所から余裕の表情で目の前の戦いを見つめた。






「な、なあ。さっきからなんか俺の名前を呼んでないか? その声もだんだん近くなっているような気がするんだが……」


 マーベロン邸宅の隠れ部屋で身を寄せ合って潜む村比斗がマーガレットに言う。マーガレットはより村比斗に密着して答える。


「どんな理由があるか知りませんが、村比斗様を拉致しようとする輩には渡せません!!」


「ら、拉致!? 俺、攫われるのか……!?」


 ここに来て一生懸命皆のために頑張って来たのに、何故そんな酷いことをされなければならないのか全く理解できない。恐怖に震える村比斗をマーガレットが優しく抱きしめて言う。


「大丈夫ですわ、村比斗様」


「マ、マーガレット?」


「お父様には最強の私兵『特殊守護兵』がいますわ。そこらの勇者ごときには決して負けませぬ」


「『特殊守護兵』?」


「ええ、上級勇者の中でもさらに精鋭を選りすぐって結成した部隊。お父様の命を守る最強の部隊ですわ」


「そ、そうか……」


 村比斗はそう聞いて一旦は安堵するも、どんどん大きくなる悲鳴や破壊音を聞きやはり不安になる。



「な、なあ。なんか騒ぎがマジで近くまで来ていないか??」


 狭く真っ暗な隠れ部屋。窓もなければ覗き穴すらない。外から聞こえてくる音だけで状況を判断しなければならない。マーガレットが言う。



「だ、大丈夫ですわ。村比斗様。お父様の部隊が出れば負けることなど決して……」



「ぐわあああああ!!!!」


 マーガレットはそう言いながらも、恐らくすぐ近くまで来ている()()によって悲鳴を上げる兵士の声を聞き体が震える。村比斗が言う。



「マ、マーガレット。なんかヤバくないか……」


「……」


 無言のマーガレット。すぐ近くにいるとてつもなく強い気迫を感じ声が出ない。



「え?」


 村比斗が扉がある個所から光が漏れるのに気付いた。



 バキッ、バキバキ!!!!


「ぎゃああ!!!」



 突然、壊される隠し部屋のドア。

 狭く暗い場所にいた村比斗とマーガレットは突然の光に驚き、思わず抱きしめ合う。




「む、村比斗様ああああ!!!!」


「村比斗っ!!!!」



「へ?」


 村比斗は長い時間暗闇にいたため目が慣れず、その目の前に立つ人物がすぐには見えない。しかし確実に聞き覚えのある声に驚き、同時に安堵する。目が明るさに慣れて来た村比斗が言う。



「ラスティール、ローゼンティア!!!」



 そこには【白銀の双剣】ラスティールと、六騎士【深紅の花傘】ローゼンティアがふたりで立っていた。助かったと喜ぶ村比斗だが、ふたりの視線が氷のように冷たい。ラスティールが言う。



「む、村比斗、お前、一体何を……」


「村比斗様ああ、わたくしという妻がおりながら、この様な不貞行為を……」




「へ? ……あっ!!」


 村比斗はふたりの前でずっと抱き合っているマーガレットの存在に気付く。しかもいつの間にかマーガレットの胸を揉むような形で抱き合っている。暗闇で気付かなかた村比斗が慌てて離れる。



「わっ、ご、ごめん、マーガレット!!」


「ああん、そんなに急に動かさないでください。村比斗様ぁ……」




「む、村比斗おおおおおお!!!!!」


 ラスティールの双剣が銀色に光り、そしてローゼンティアの花傘が真っ赤に輝くのを見て村比斗はひとり慌てて逃げ出した。

お読み頂きありがとうございます。

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