51.ラスティールのお礼!?
「何やってるんだ、お前達?」
村比斗が按摩を施術し始めた頃、『按摩部屋』がある別邸の前を通りかかったデレトナが、見物に来ていた雑用勇者達に尋ねた。
「あ、デレトナさん。村比斗さんの『按摩』ってのがついに始まって……」
「ああ……」
噂は聞いていた。あまり馴染みのない名前だったのですぐに忘れてしまっていたことをデレトナが思い出す。雑用勇者が言う。
「なんでも薄っぺらい服を着て、下着を付けずに体を揉んで貰うらしいですよ」
「な、なんだと!?」
初めて知る按摩の世界。驚いたデレトナが言う。
「そ、そんなことをお嬢様と兄貴がふたりっきりで……、やっているのか?」
「らしいですよ」
デレトナはその巨体から大粒の汗を流した。
「さあ、そこに横になって」
「あ、ああ……」
薄暗いキャンドルだけの部屋。
甘い香りで部屋中が満たされ、風呂上がりのラスティールが中央にある長細いベッドにいざなわれる。ラスティールが言う。
「や、優しくしてくれよ……、本当に痛くないんだな……?」
村比斗が答える。
「ああ、大丈夫だ。さ、うつ伏せに寝てくれ」
ラスティールは軽く頷くと真っ白い太腿を上げベッドの上で横たわる。
束ねた金色の髪がはらりと横に落ちる。短めのウェアから出た真っ白な太腿、うなじ。無防備に横たわるラスティールのその姿は、一瞬で男の理性を吹き飛ばすようだった。
(が、我慢しろ。妙なことをすればあれで一刀両断だぞ……)
村比斗は部屋の壁に立て掛けられている銀色の双剣を見て顔を両手で叩く。そして言った。
「じゃあ、始めるぞ」
「あ、ああ……」
村比斗はゆっくりとラスティールの背中に手を当てる。
「う、ううん……」
それに驚いたのかラスティールが思わず声を出す。村比斗が言う。
「緊張してんのか? ガチガチだぞ」
「そ、そんなことはない……、ない、はず……」
村比斗が続けてゆっくりと按摩を始める。
「う、ううん、あ、あん……」
自然と漏れる甘い声。ラスティールが思う。
(くすぐったい? いや、くすぐったくて気持ちいい……、全然痛くないじゃないか……)
按摩に対する恐怖が薄れていくラスティール。それに比例して体は村比斗の指に合わせて喜びの反応を示す。
(ああ、何とも言えぬ感覚……、全身が何かに包まれているような。村比斗の指、とても硬くて気持ちがいい……)
一方の村比斗も絹のようなきめ細やかな肌に触れ驚きを隠せない。
(あんなに強いのに、なんて柔らかくてすべすべの肌なんだ。もっと筋肉で固いものだと思っていた……)
そして突き出したラスティールのお尻の膨らみを見て思う。
(素晴らしい曲線。もはや芸術に等しい。ただ……)
よこしまな気持ちでそこに手を伸ばそうとすると、不思議と手が鉛のように重くなる。
(俺のスキルは純粋に疲れを取る『按摩』。エロ按摩をしようとすると拒否反応が出る。やれやれ、これじゃ何もできんな……)
村比斗は気を集中してマッサージを続ける。
(ああ、何だか眠くなってきたな……、うとうととするような……)
ラスティールは全身や頭を駆け巡る『リラックス』と言う名の快楽に身を浸す。そして小さな声で村比斗に言った。
「なあ、村比斗……」
マッサージをしながら村比斗が答える。
「なんだ?」
ラスティールは目を閉じたまま尋ねる。
「お前は向こうの世界で、誰か特定の女子とかはいたのか……?」
(は?)
村比斗は意外過ぎる質問に思わず混乱する。
(な、何を言っている? 特定の女? 付き合ったりした女のことって意味か!?)
「いや、そんなのは特にいなかったぞ。俺はモテなかったんで……」
ラスティールが消え入りそうな声で言う。
「モテなかった? ふっ、嘘をつけ……、お前はいつも私に嘘をつく……」
「い、いや、本当だって。女の子に触れたこともないぞ!!」
ラスティールが更に小さな声で返す。
「お前はそうやって、私を……、困らせ……」
そこで言葉が切れた。
「ラスティール?」
村比斗はマッサージを続けながら小さな声で尋ねるが返事はない。
(眠ったのか……)
よく耳を澄ますと、小さな音ですーすーと聞こえる。
(よっぽど疲れてたんだろうな。こんな細い体でずっと家の為に頑張り、魔物や魔王を倒して……、あれ、何この感覚? 俺、喜んでる!?)
村比斗はゆっくり休むラスティールを見て心からの喜びを感じていることに気付いた。
(これは平和のために戦ってくれている勇者に感謝する喜びか、それとも別の感情か……?)
村比斗にはその気持ちの意味が理解できなかった。それでもマッサージを受けて眠るラスティールを見ているのはとても幸せに思えた。
「ん……?」
ラスティールはひとりベッドの上で目が覚めた。
「あれ、私は……?」
目が覚めて事態が理解できないラスティールだったが、すぐに村比斗から按摩をされていたことを思い出す。
「わ、私は!?」
ベッドに横たわり薄いシーツが掛けられている。村比斗は居ない。ラスティールは起き上がり、採光用の小さな窓から空を見上げる。
「こんなに陽が高く、もう昼過ぎなのか!?」
村比斗が按摩を始めたのが朝。と言うことはそれまでずっと眠っていたことになる。ラスティールが顔色を変えて思う。
(お、男の前で無防備に眠るとは!? ま、まさか、変なことはされなかっただろうな……)
怒りと同時に様々な妄想をしてラスティールの体の力が抜ける。思い出されるのはだらしないスケベな顔の村比斗。
ラスティールは直ぐに部屋にあった自分の服に着替えると部屋を出る。
「村比斗っ!!!!」
そして入り口付近でミーアやシルフィーユと一緒に昼食をとっていた村比斗を見つけ怒鳴る。村比斗が言う。
「お、起きたか」
ラスティールの顔が赤く火照って言う。
「起きたかじゃないだろ!! き、貴様、私に何をした!!!」
意味が分からない村比斗。怒っている理由は更に不明。
「おい、何興奮してんだ? 落ち着けよ」
「こ、興奮だと!? この私がそんないかがわしいこと……」
「ラスティちゃん、途中から眠ちゃってたんだよ」
ミーアの声に反応するラスティール。
「わ、分かっている。こいつが変なことを……」
「できなかった」
「は?」
村比斗が静かに語る。
「あまりにも魅力的なお尻だったんだが、手が鉛の様になって動かないんだよ。つまりスキルのせいで純粋な按摩しかできない。エロ系は不可のようだ。分かったか、俺の無罪」
ひとり頷いて言う村比斗にラスティールが剣を抜いて言う。
「何が『無罪』だ……、そのようなことを考えたから手が重くなったんだろ……」
静かに怒りを発するラスティールに村比斗が怯える。
「い、いや、確かに可愛いお尻だなあ、と……」
「む、村比斗おおおお!!!!」
ラスティールが叫ぶと同時にドアが開かれ、その大女が入って来た。
「兄貴っ!」
「デレトナ!?」
そこにはなぜか顔を赤らめて立つデレトナの姿がある。シルフィーユが尋ねる。
「あれ、次はデレトナさんじゃなくて……」
デレトナが内股になりもじもじしながら答える。
「い、いや、俺は断ったんだが、他の奴らが『デレトナさんが先に按摩をどうぞ』と言って聞かないもんで……」
「閉店だ」
それを聞いた村比斗がすぐに言う。
「は? 閉店!?」
驚くシルフィーユとミーア。村比斗が言う。
「ああ、急にめまいがしてきて、立っているのも辛くなって……、ううっ」
「貴様はやはり死罪だ!!!! 村比斗っ!!!!!」
そう言って村比斗に近付くラスティール。
「え?」
しかしそんなラスティールに村比斗がもたれかかる様に倒れる。
「お、おい。村比斗!?」
ラスティールに身を預けるようにして動かない村比斗。その顔を見てラスティールが言った。
「寝てる……?」
ラスティールにもたれかかりすーすーと寝息を立ている。
「村比斗君?」
「あ、兄貴!?」
心配した皆が声を掛ける。ラスティールが言う。
「大丈夫だ。眠っているだけだ」
ラスティールが倒れないように村比斗の体を支える。
「疲れたのだろう。思えば急にここへ来て色んな事をさせてしまった。少し休ませてやろう」
そう言って村比斗を抱きかかえ歩き始める。ミーアが言う。
「ラスティちゃん、どこへ?」
ラスティールが振り返って笑顔で言う。
「ああ、疲れた時には按摩がいいと思ってな。お礼を込めて私がやってやる」
驚く一同。シルフィーユが言う。
「ラ、ラスティール様っ!! それは、それだけは……!!」
ラスティールが笑顔で答える。
「大丈夫だ。私も按摩が何かを理解した。私でもできる」
そう言って村比斗を抱え按摩部屋に入って行くラスティール。
やがてすぐに、勇者の力で揉まれた村比斗の悲鳴が辺り一面に響いた。
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