41.ローゼンティア、孤軍奮闘!!
「お怪我はございませんか?」
真っ赤なロリータドレス。そして深紅の花傘。
それは最強の勇者のひとり『六騎士』ローゼンティアであった。老人が言う。
「お、お主は……、かたじけない」
「よろしいですわ、それよりも……」
攻撃を防がれた魔王ガラッタの目がカッと吊り上がる。
「ふんっ!!!!」
「きゃあ!!」
開かれた真っ赤な花傘。辛うじて老人への強烈な一撃を防いだローゼンティアだったが、更に力を込めた魔王の追撃に老人と共々横へと吹き飛ばされる。
「ローゼンティア様っ!!」
ローゼンティアの護衛勇者であるレザルトがそれを見て叫ぶ。
「下がってさなさい!!」
初撃で魔王の力を察したローゼンティアが叫ぶ。レザルトが答える。
「は、はい」
続けて立ち上がりながら老人を横目で見て言う。
「あなた達もお帰り頂けませんか? はっきり申し上げてますが、足手まといですわ」
老人は女勇者の元で意識を失っているグロウを見て頷き答える。
「お主の言う通りじゃ。我々はまだ力不足。すまぬがその言葉に甘えさせてもらうぞ」
そう言って遠距離移動魔法を詠唱中の女勇者の元へと駆け寄る。それを見た魔王ガラッタが言う。
「ああ? 逃がさねえぜ、てめえらはすべて俺の強化要員!! ひとり残らずぶっ殺してやるっ!!!」
魔王は太い腕を振り上げながら魔法を詠唱して動けない女勇者の元へと接近する。
「そんなこと、させませんわ!! 花傘防御っ!!!」
ローゼンティアが素早く魔王の前に行き、傘の防御を張る。
ガンガンガンガン、ガン!!!
「くっ……」
魔王の強烈な拳の雨が真っ赤な傘に降り注ぐ。
(まだ、ですの……? さすがに防御だけでは、これ以上は……)
ローゼンティアがそう思った瞬間、詠唱を終えた女勇者が叫ぶ。
「できた!! 遠距離移動魔法!!!!」
女勇者は倒れたグロウと老人の体に触れ叫んだ。体が消えゆく三人。老人がローゼンティアに言う。
「六騎士殿、申し訳ござらぬ。決して死なぬよう……」
そこまで言うと三人の姿は完全に消えて行った。魔王ガラッタが言う。
「くそっ、逃げられたか。さすがは六騎士ってことか。まあいい。お前で穴埋めをするぜ!!!」
魔王ガラッタは全身の邪気を強める。
黒光りする筋肉がめきめき音を立てながら一回り大きくなる。六騎士を相手に完全に戦闘モードに入った様子。ローゼンティアが思う。
(予想以上に、強いですわ……、わたくしひとりで一体どこまで戦えるのかしら。いえ、弱気はいけませんわ。魔王を倒し、あの方に認めて頂きますのっ!!!)
ローゼンティアは持っていた花傘に全魔力を込める。ぼんやりと赤色に光る傘。それを後方から見ていたレザルトが言う。
「あれは、ローゼンティア様の全魔力放出。最初から本気と言うことか……」
【暗黒の時代】の所以とされる魔王。
その強大な相手に様子見などできない。六騎士と言えども最初から全力で行かなければやられる。
少しの沈黙。
それを破ったのは魔王ガラッタだった。
「ぬがあああああ!!!!」
黒光りした筋肉。鉄のような両拳でローゼンティアに襲い掛かる。
「負けませぬっ!!!」
ガンガンガンガンガンガン!!!!
ガラッタの拳と、魔力を帯びたローゼンティアの傘が激しくぶつかり合う。両者一歩も引かぬ打ち合い。ローゼンティアの魔力とガラッタの邪気が激しく衝突し、見る者を飲み込むような威圧を発する。
(な、何て凄い力なんですの!? このままでは……)
ドオオオオン!!!
「きゃああ!!」
打ち合いを制したガラッタの攻撃がローゼンティアにヒット。直撃を受けた彼女はそのまま後方まで吹き飛んだ。
「ロ、ローゼンティア様っ!!!」
主の傷つく姿を見たレザルトとその他お供の勇者達が、怒りの形相で剣を抜き魔王に突撃する。
「うおおおおおおっ!!! 魔王、許さぬぞおおおお!!!!」
倒れながらもそれに気付いたローゼンティが叫ぶ。
「お下がりなさい!!! すぐに、戻りなさい!!!!」
しかし魔王を前に、興奮した勇者達にはそんな声は届かなかった。魔王がにやりと笑う。
「ふんぬうううう!!!!!」
ドンドンドン、ドン、ドオオオオン!!!!!
魔王は斬りかかって来る勇者達を片っ端から殴りつけた。
「ぎゃああああ!!!」
悲鳴を上げて吹き飛ばされるお供の勇者達。
実力のない者はその一撃で即死。
多少腕に自信のある者でもその攻撃で倒れ意識を失う。
「ロ、ローゼンティア様、申し訳ございませぬ……」
最後まで立っていたレザルトも口から血を吐いて倒れる。ガラッタが笑いながら言う。
「ぐははははっ、久しぶりに骨のある勇者を葬った。これで俺様も強化だああ!!!!」
喜ぶガラッタを前にローゼンティアが震えながら言う。
「あなた、あなたは、絶対に許しませんわ!!!」
魔力が漲る深紅の花傘。ローゼンティアがその傘を振りかざして突撃する。
「咲き乱れ傘!!!!!」
深紅の花傘がまるで降りつける雨の様にガラッタを襲う。
ザンザンザンザン、ドン!!!
「きゃあ!!」
ガラッタはその攻撃を体で受けながら、自慢の太い腕でローゼンティアを吹き飛ばした。
口から血を吐き倒れるローゼンティア。
今更ながら勢いに任せて単独討伐に踏み切ったことを早計だと後悔し始めた。
(ですからと言って、わたくしが退けば……)
ローゼンティアはまだ倒れて息のある供の勇者達を見て思う。
(この方達が皆殺しにされますわ。それだけは決して……)
ローゼンティアは痛みできしむ体に魔力を込め何度も傘で殴りつける。しかし強化された魔王ガラッタはそれを余裕で受けながらカウンターを放つ。
「ぎゃあ!!」
致命傷に近い一撃を受け地面に倒れるローゼンティア。
「さすが六騎士。そこらの雑魚勇者とは違うな。だが、もう楽にしてやるよ」
そう言ってゆっくりと近付くガラッタ。ローゼンティアは最後の力を振り絞り、傘を杖にして立ち上がる。
「ほお」
感心するガラッタ。ローゼンティアが言う。
「わたくしは栄誉ある『六騎士』。如何なる時でも決して諦めたりはしませんわ……」
しかしその言葉とは裏腹に声は擦れて覇気がない。意識も朦朧としており、歩み寄る魔王をしっかりと捉えることすらできない。一瞬、死を覚悟した。
その時だった。
「キュアヒール!!!」
(え?)
ぼんやりと光るローゼンティアの体。
怪我が癒えていく。
「はあああああ!!!」
ガン、ガン!!!!
そして魔王ガラッタに打ち込まれる真っ白な二本の太刀。
ローゼンティアはその金色の美しい髪の女性を見て言った。
「【白銀の双剣】……」
その二つ名は騎士団長が『六騎士』に就任した際に彼女に与えたもの。ローゼンティアの横に立った彼女が言う。
「何をしておる、それでも『六騎士』か? 怪我が癒えたら私を援護しろ!」
「ラスティール……」
ローゼンティアはその言葉を聞いてふっと意識が遠のいて行った。
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