39.【深紅の花傘】ローゼンティア
【深紅の花傘】こと『六騎士』ローゼンティア・アズレーンは、幼き頃から強かった。
王都にある貴族学校の武闘大会でも上級生を薙ぎ倒し、常にその頂点が彼女の指定席であった。大人ですらひと目置くその存在。魔王に怯え常に強き者が求められる時代に、彼女は幼いながらも自分の存在意味をしっかりと理解していた。
その彼女の方向性を決定づけたのが、ある日街の魔道具店で偶然見つけた『真っ赤なロリータ傘』だった。何かに引かれるようにその傘を手にした彼女は、すぐに運命的な出会いを感じた。
(これよ、この子がわたくしを求めていたのだわ……)
そこから彼女の強さが激変する。
元々強かったローゼンティアの前に、名のある勇者達が成す術なく次々と倒されて行った。
そして、
「勝者、ローゼンティア!! 貴殿を新たな『六騎士』に任命する!!」
ついに勇者最高の栄誉である『六騎士』にまで登り詰めた。
ただそんな強き彼女を、ローゼンティアの優しき姉だけは心配でならなかった。
「ローゼンティア、また断ってしまったんですって?」
結婚した姉のところに遊びに来ていたローゼンティアは、紅茶を飲みながら先日断ったお見合いの話を思い出した。
強く有名になったローゼンティア。元々可愛らしいロリタイプの女の子なので『六騎士』になって以降、実力ある貴族からの求婚が後を絶たなかった。ローゼンティアが溜息をついて答える。
「全てお断り致しましたわ、お姉様」
「やっぱり、あれなの……?」
姉が半ば諦めた顔で言う。
「無論ですわ。おほほほほっ」
ローゼンティアの婚約の条件、それはたったひとつ。
『自分より強い男』、であった。
姉が言う。
「でもね、あなたよりお強い男性など、一体どれだけいるのかしら……?」
ローゼンティアは紅茶のかぐわしい香りに目を閉じながら答える。
「いらっしゃいますわよ」
「はあ、それって……」
「ええ、ランディウス様」
ローゼンティアの頬が赤くなる。
『六騎士』騎士団長ランディウス。その端麗な容姿はもちろんだが、圧倒的な強さで王都中の女性達の憧れの的であった。姉が言う。
「ランディウス様は、それは……、ちょっと無理じゃないかな」
「そんなことございませんわ。わたくしも『六騎士』になりランディウス様とお話しする機会がたくさんございまして。もっともっとわたくしの存在を高めて行けば、きっとあのお心にも届きましょう」
「そう? うん、まあ頑張ってね……」
姉は妹の憧れの対象が、この世で最も難しい相手であることを心配した。ローゼンティアは残った紅茶を飲みながら思う。
(ただ、あのラスティールとか言う女。あの女だけは気を付けなければなりませんわ。せっかく降格して田舎へ行ったのに、ランディウス様はなにかにつけてあの女に関わろうと致しますわ。そのようなことわたくしは絶対に許しません!!)
幼き頃から鍛錬に時間を割いて来たローゼンティア。
気付けは自分より強い男など周りに誰もいなかった。そんな彼女の前に現れたのが最強の勇者である騎士団長ランディウス。恋愛経験の皆無の彼女は直ぐにその男性だけが自分を愛すことができる存在だと思った。姉が言う。
「ローゼンティア、あなたが誰を好きになろうがそれはいいですが、無茶はしないでね」
「分かっておりますわ、お姉様。おほほほほっ」
(無茶か、それでもここまでしないときっとこの方はわたくしをしっかりと見て下さらないわ……)
ローゼンティアは魔王ガラッタ討伐に向けた出陣式の中にいた。
目の前には挨拶を終え、討伐に向かうローゼンティアを笑顔で見送る騎士団長ランディウスの姿がある。
「行って参ります、ランディウス様。必ずや吉報をお届け致しますわ」
「ああ、待ってる。気を付けてな」
ローゼンティアはロリータドレスのスカートを両手で少し上げ一礼すると、そのまま先に出陣したグロウ達を追う様に王都から出発する。
ただそんな一途な彼女には想像することもできなかった。今回の遠征でまさか自分のその想いが一変してしまうことなど。
「おお、うまく行ってるな」
ホワイト本邸の修復作業がほぼ終わりを迎えた頃、村比斗はその作業の出来具合を見て言った。壁の修復材料を入手し、近隣の森で使えそうな木を切り出し、村比斗は本で見た通りに建物の修復に精を出した。
最初は戸惑う勇者達であったが、村比斗の真剣な指導に徐々に修復を手伝うこととなる。
「あとは任せておいても大丈夫かな」
予想以上の雑用勇者達の頑張りに満足した村比斗は、空中をトントンと叩き自分のステータス画面を開く。
ボン!
それをじっと眺める村比斗。そして思う。
(『貢献ポイント』と『経験ポイント』って村人も貯まるんだな……、『村人』としても強化されているようだけど、この『貢献ポイント』は勇者じゃなきゃ全く使い道なし、か……)
村比斗は先日知ったこの件について腕組みをして考える。
(まあ、いいや。あいつらが強くなってくれればそれでいい……)
そう思いつつも、先日の森での魔物退治を思い出す。
(それにしてもあんなに何体も魔物が出て来るとはなあ……、俺、ひとりで歩いていたら命がいくつあっても足らないぞ……)
先日、ふたりを森での魔物退治へ連れて出した村比斗。
魔王ガラッタ討伐に向けてラスティールとミーアのレベルアップは十分に出来た。その分それぞれの副作用で散々な目に遭ったが、それも覚悟をしてのことだ。
「おい、村比斗!!」
ひとりで本邸を見ていた村比斗にラスティールが声を掛ける。村比斗が答える。
「ああ、ラスティールか」
ラスティールが不満そうな顔で言う。
「ああ、とは何だ。私に会うのがそんなに嫌なのか?」
「い、いや別にそう言う訳じゃないけど……」
そう言いながら村比斗は先の森でレベルアップした際のことを思い出す。
直接聞いてはいないが回を重ねるごとに快感度が上がっているんじゃないかと思うほど、レベルアップ時の彼女はキャラ崩壊している。ただ色っぽさも同時に上がっており、美少女のラスティールが悶える姿はかなりエロい。
「おい、村比斗」
「は、はい!」
村比斗は突然名を呼ばれたことに驚いて声が裏返る。
「お前また変な妄想していたな。すぐ分かるぞ、そのだらしない顔で」
村比斗がむっとなって言う。
「お前なあ、いつもいつも俺を見ると『妄想が云々』って言うが、じゃあ俺が具体的に何を考えていたのか分かるのか?」
「あ、当たり前だろう! お前ごときの頭の中など手に取るように分かるわ!!」
村比斗が薄ら笑いを浮かべて言う。
「へえ~、じゃあ、言ってみろよ。俺が何を考えていたか?」
ラスティールの顔が赤くなる。
「そ、それはだな……」
更に赤くなるラスティール。
「早く言えよ」
「ううっ……、手を……」
「手?」
ラスティールが顔を真っ赤にして言う。
「手を繋いで、あ、歩いたり……」
「は?」
予想外の可愛い回答に驚く村比斗。
「そ、そんなこと、なのか……?」
そんな『お子様レベルの妄想』で毎回怒鳴られていたのかと村比斗は信じられない顔をする。それに気付いたラスティールがむっとして言う。
「ち、違うぞ!! そんな程度じゃない!!!」
「何だよ、じゃあ……」
ラスティールはゆでだこの様に真っ赤になり小声で言った。
「ひ、ひ、ひざ枕……とか、だ……」
「ひ、ざ……」
村比斗は目の前で真っ赤になって答える美少女の言葉を聞いて、不覚にも心から可愛いと思ってしまった。
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