34.村比斗の新たな力?
「なんで、なんで村比斗はシルフィーユと一緒に行くのだ!? わ、私とじゃ嫌なのか!!」
ラスティールはひとり向かったくっつき草の回収をしながら愚痴っていた。
「それともなんだ。男と言うのはあのようなおさげの少女が好きなのか?」
ラスティールは自分の金色の長髪を両手で縛る様にして持ってみる。そして首を少し振ってみるがすぐにやめた。
「ダメだダメだ、この様な髪形。名門ホワイト家の令嬢には似つかわしくない。それよりもあいつが少女趣味なのが悪いのだ。そうだ、それが原因だ!」
ラスティールはそう自分に言うと急ぎくっつき草を袋に目いっぱい詰め込み、村比斗達がいる岩山へと走り出した。
「村比斗様、こちらがその岩山です」
村比斗はシルフィーユに案内された白い岩が目立つ岩山へと到着した。シルフィーユがその岩山を指差して言う。
「あそこに見える白い岩が白岩石です。どうしましょうか?」
村比斗は少し考えてからシルフィーユに言った。
「今日は試しだから少しでいい。岩の一部を取って来て粉々にしたい。どうすればいいかな?」
そう言って村比斗が考え始めると、シルフィーユが大きな声で言った。
「それでしたらこのシルフィにお任せを!! はああああ!!!!」
シルフィーユは腰につけた剣を取り出すと、岩山を登り白岩石めがけて振り下ろした。
ドン、ドドオオオオオオオン!!!
「ひゃっ!!」
おさげの少女でも勇者は勇者。
渾身の力を込めた一撃は、真っ白な岩を破壊しその一部を持って村比斗の元へと帰って来た。村比斗が言う。
「凄いね……、やっぱり勇者だ」
シルフィーユが不思議そうな顔で答える。
「白岩石は割れやすい石なので……、でもこんなこと村比斗様ならあっと言う間ですよ」
村比斗は未だ彼女達が『村比斗は名のある勇者』だということを信じている。村比斗が苦笑いしながら言う。
「そ、そうだな。ええっと、ついでにこの岩ってもっと粉々に砕ける?」
「はい、かしこまりました!」
シルフィーユはそう言うと持っていた白い岩を地面に置き、何度も剣で叩き始めた。
「はあ、はあ、はあっ!!!」
剣が当たる度に粉々になる白岩石。
あっと言う間に石ころのサイズになったが、そこからが大変であった。
「はあ、はあっ、はあっ!!!」
石ころになると数も増え、さらに粉々にするとなると相当の根気がいる。最初の内は元気だったシルフィーユも次第にゼイゼイと息をし始め、やがて地面に座り込んでしまった。見かねた村比斗が声を掛ける。
「もういいよ、そのくらいで。あと細かくする作業は屋敷に戻ってからやろう」
「は、はい~、すみません。もう腕が上がらないです……」
村比斗はシルフィーユが粉々にした白岩石を袋に詰める。そして腕が辛そうなシルフィーユに言う。
「大丈夫か?」
「はい、ちょっと無理しちゃいました……」
そう言って舌を出すシルフィーユ。村比斗は自分のステータス画面を開け、あるスキルを探す。
(おっ! あるじゃねえか、疲れを癒す『按摩』スキル!! 村人スキルの中にあったぞ!!)
村比斗がシルフィーユに言う。
「シルフィーユ」
「シルフィって呼んで下さい」
即答するシルフィーユに村比斗が言う。
「ま、まあ、それはさておき、疲れた体を癒すにはマッサージがいいって知ってるか?」
「まっさーじ?」
村比斗は少し考えてから言い直す。
「按摩、と言った方が分かりやすいのか?」
それを聞いたシルフィーユが頷いて言う。
「按摩、知ってますよ!! 前時代のやつですよね!!」
(前時代? ということは今の時代には按摩は廃れたのか? まあ、按摩士がいるはずもないからそうなるか)
「ちょっとそこに横になってみろ。俺が按摩を施術してやる」
それを聞いたシルフィーユが首を振って言う。
「い、いえ、いいです!! 村比斗様の頼みでもそれだけは……」
「嫌なのか?」
「はい、痛いし、村比斗様の超怪力で骨が折れるかもしれません」
「骨……」
脳筋の勇者達がマッサージなどすればそうなるかもしれない。
しかしそれは心配無用。当然前世でマッサージとはどのような物か知っているし、村人だって農業の疲れを癒すために夜はマッサージのひとつでもやっていたはず。何より『按摩』スキルがこちらにはある。
「そんなことはしないから、ほら、横になって見て」
村比斗に再三言われて観念したのかシルフィーユが頷いて地面に横たわる。その横に村比斗が腰を下ろし、真っ白なシルフィーユの腕に優しく触れる。
「い、痛くしないでくださいね、村比斗様」
「初めてなのか?」
「はい……、話や本で読んだことはありますが、村比斗様が私の初めての人です」
「そうか、それは嬉しいことだ。痛かったらすぐに言ってくれよ」
「はい」
一体何の話をしてるのかと内心思いつつ、真剣な顔でそう答えるシルフィーユを前にゆっくりと指先に力を入れる。
「んんっ……」
真っ白いシルフィーユの腕がぴくんと動く。
「痛いか?」
「いえ、大丈夫です。ちょっとくすぐったかっただけです……」
いつの間にかシルフィーユの頬が赤く染まっている。村比斗はシルフィーユの胸の膨らみを何度か見ながらゆっくりとその細腕を揉み始める。
「ん、うんん……」
目を閉じたシルフィーユが小声であえぐ。村比斗は規則正しく腕を丁寧に按摩する。
「ううん、はあ、はあ……」
初めての按摩にシルフィーユの呼吸が色っぽくなる。
(や、やだぁ、何これ、気持ちいい……、村比斗様が触れて下さる場所から何か微弱の心地良い電気のようなものが体から、頭へ広がって……、うんん……、ああん……)
「どうだ、気持ちいいか?」
村比斗の問いかけにシルフィーユは薄目を開けて答える。
「はい、なんか昇天しそうです。按摩って、凄くいいですね……、村比斗様を感じられると言うか……、わ、私、いっちゃいそうです……」
村比斗は頷いてそれに応える。
そして反対の腕のマッサージを終え、気持ち良さにぐったりしてしまったシルフィーユを見て思う。
(最近、灌漑施設とかずっとこき使って来たからな。ちょっとご褒美でもあげるか)
そう思った村比斗は、躊躇いなくシルフィーユの太ももを優しく揉み始める。
「ひゃっ!?」
シルフィーユが小さな声で反応する。
「大丈夫だ。俺に任せなさい」
「は、はい……」
そう返事したものの、既にあまりの気持ち良さにシルフィーユにそれを拒否する気持ちはなくなっていた。
(ぐへへへっ、肌すっべすべだな!! シルフィーユっておさげで幼く見えるけど、実際幾つなんだろう?)
村比斗はマッサージをしつつ、真っ白なシルフィーユの柔肌をどさくさに紛れて触りまくった。シルフィーユは相当疲れが溜まっていたのか、マッサージをされながらいつしか眠りについている。
(可愛いあんよだな……、舐めちゃおうかな……)
足の指を揉んでいた村比斗が良からぬことを考え始める。
しかし背後に強い殺気を感じ、ゆっくりと振り返る。
「げっ!! ラスティール!?」
そこには背に大きな袋を背負い、顔を真っ赤にして立つラスティールの姿があった。声を震わせながらラスティールが言う。
「貴様、村比斗……、シルフィーユを眠らせて、一体何をしておる……」
焦る村比斗。すぐに理由を説明する。しかしそれを聞いたらスティールが更に顔を赤くして激怒する。
「体に、足に触れて、揉んだだとおおおお!?」
「いや、だから、按摩は揉まないとできないだろ? 軽く叩いたりもするし……」
「そんなことされてどうして眠るんだ!? 叩かれて寝るはずないだろ!!!」
全く話が通じないラスティール。村比斗が言う。
「知らないんだよ、按摩を、お前らは!! 気持ち良くて眠ったんだよ!!!」
「嘘をつけ!! 何か眠り薬でも飲ませて、これから襲おうとしたのだろう!! 見損なったぞ、村比斗っ!!!」
全くあらぬ疑いをかけられる村比斗。開き直ってラスティールに言う。
「だったらお前もやってやるよ、按摩。さあ、ここの横になれ。俺が揉んでやる!!」
ラスティールの顔から湯気が出るほど真っ赤になる。そして双剣を抜いて言う。
「き、貴様っ、もう許せん!! 死罪だっ、覚悟しろっ!!!!」
「ひ、ひええええ!!! ……ん?」
村比斗が逃げようとした瞬間、その背中に強烈な悪寒が走る。ラスティールも剣を振り上げたまま固まる。村比斗が言う。
「ラスティール、ま、魔物がいる……」
村比斗が周りを見渡す。
「あ、あれは……!?」
少し離れた先に、ヒト型をした魔物が数体こちらに向かってゆっくり歩いている。ラスティールが叫ぶ。
「村比斗、下がれ!!!」
ラスティールはそう言うと村比斗の前に出て剣を構えた。
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