22.スマホって凄いんだね!
「なるほど、それは興味深い」
ローゼンティアのお供レザルトを退けた村比斗達。再び屋敷へ向かって歩き出したのだが、三人は村比斗の前世の話で盛り上がっていた。
「で、その『すまほ』と言うやつを使えば、遠くにいる人間と会話ができるんだな?」
「まあ、そういうこと」
村比斗は『こちらに来る前にいつも大事にしていた道具を教えてくれ』と聞かれ、転生する前毎日の様に使っていたスマホの話をした。ラスティールが尋ねる。
「な、なあ、村比斗」
「なんだ?」
「その道具はお前にとってとても大切だったものだろ? また欲しいか?」
村比斗は考える。
前世では確かに必須のアイテムだったが、無ければ無いで何とかなっているし、それに今あってもネットなどできないのであまり価値はない。
「まあ、そうだな。俺としては……」
「もし仮にだ、わ、私がもっともっと強くなれば、勇者魔法にな『通信魔法』ってのがあって、と、遠くにいる人間とも通話が可能になるんだ。いや、別に無理に私を強くしろとか、あの快感が忘れられないとか、そういんじゃなくてだな。単にお前のことを思って……」
「『通信石』ならできるよ!!」
「ん?」
ふたりの会話を聞いていたミーアが大きな声で言う。
「村比斗君、遠くのお人とお話がしたいならね、『通信石』って道具を使えばできちゃうんだよ~。すっごく高いけどねっ!!!」
「おお、なるほど!! それは便利だな!!」
手を叩いて感心する村比斗とミーアを見てラスティールが思う。
(ミ、ミーアッ!!! 貴様、友人だと思っていたが、何故そのような邪魔をするっ!!!)
村比斗が言う。
「まあ、スマホに関して言えば通話もそうだけど、よく使っていたのがSNS。う~ん、『メッセージ機能』みたいなものかな」
「メッセージ機能?」
首を傾げるふたりに村比斗が説明する。
「ああ、スマホにメッセージを書き込んで相手に送るんだ。それを相手がいつでも見られて便利なんだぜ」
すぐにそれに反応するラスティール。
「ああ、あのだな、村比斗。勇者魔法にも相手に伝言を送る魔法があって、お前がどうしても望むのなら……」
「『伝言石』でもできるよ、村比斗!!」
「ん?」
すぐに得意げな顔になって村比斗に説明し始めるミーア。
「共有化させた『伝言石』に送りたい言葉を書けば、時間はかかるけど相手にもその言葉が届くんだよ!!」
「ほお、それは凄いな」
(ミ、ミーアッ!!! 貴様、今日から敷地外で寝泊まりさせるぞ!!!!)
珍しくミーアに怒りの表情を向けるラスティール。そんなこと全く気付かないミーアと村比斗。村比斗が言う。
「あとよく使ってたのはやっぱり写真かな」
「しゃしん?」
ラスティールがその言葉を繰り返す。
「ああ、そこにある景色や人を全くそのまま切り取る機能だ。あ、別に切り取ったからってなくなったりはしないぞ。スマホの中や、紙にプリントしたりできる」
村比斗は口を開けて話を聞くふたりに、更に詳しく説明をした。ラスティールが尋ねる。
「絵、ではないのだな?」
「違うな。一瞬で、全く同じ物ができる」
「それは、大した道具だ……」
そんなものは魔法でも聞いたことがない機能。感心するラスティールにミーアが嬉しそうに尋ねる。
「で、さあ~、村比斗君はその『すまほ』の中に、どんな写真を入れて見ていたの~??」
「うっ!!」
ミーアが興味深そうな顔で尋ねる。焦る村比斗。
(ソシャゲーのスクショとか、アニメキャラとか、あ、あと、えっちな写真ばっかり入れていたとは恥ずかしくて言えないぞ……、って言うか、俺が死んでからあのスマホって誰か見たりするのか!?)
異世界転生して全く考えてなかったのだが、前世に残して来たスマホやPCの中を誰かに見られたら、それこそ自殺ものである。ラスティールが少し小さな声で尋ねる。
「き、気になる女のしゃしんでも、い、入れていたのか?」
「ああ……」
村比斗の頭の中は到底人様には見せられないいかがわしい写真や動画の映像で一杯になっており、質問したラスティールの問いに深く考えないまま答えてしまった。
「きゃー、村比斗君の、えっち~!!」
なぜか、意味もなく鋭いミーアが、嬉しそうにからかいながら村比斗に言う。焦る村比斗が答える。
「バ、バカ!! 俺はそんなにたくさん、いや、いいだろ、べつに……」
それまで黙っていたラスティールが口を開く。
「い、いいんじゃなか、別に」
「は?」
思わぬ言葉にラスティールを見つめる村比斗。ラスティールが続ける。
「む、村比斗がむこうで何をしてたのかそれは村比斗の勝手だし、わ、私は村比斗に好いた女がいようともそれは別に不思議な事ではないし、いや、別にそんなことを気にしている訳じゃないんだが、私もそのしゃしんとやらに入って……」
(写真に入る? 何を言ってるんだ、こいつは?)
「ラスティちゃん……」
ミーアも心配そうな顔でラスティールを見つめる。ラスティールが村比斗に尋ねる。
「なあ、村比斗」
「なんだ?」
「そのしゃしんってのは、撮りたい相手が生きてなきゃダメなんだろうな?」
「生きて? ……ああ、そうだけど」
「そうか、そうだよな」
ラスティールが思う。
(もしそのような道具があれば、私はいつでも亡き母上とお会いできたと言うことか……)
焦ったり怒ったり、照れたりしんみりするラスティール。村比斗が声を掛ける。
「な、なあ、ラスティール。大丈夫……」
「素敵な世界だな、お前のいた世界と言うのは」
「素敵?」
意味が分からない村比斗。ラスティールが言う。
「いつか叶うなら、私もお前の世界に行って見たいもんだ」
少し空を見上げてそう言うラスティールの横顔を、村比斗は不思議と美しいと思った。
「ただいま戻りました、父上っ!」
屋敷に戻ったラスティールが出迎えた父親に言った。
本邸の馬繋ぎ場に見知らぬ馬が数頭繋がれている。立派な装飾。すぐに王都の使いだと思った。父親が言う。
「ランディウス殿からの使者がお待ちだ。さ、中に入れ」
「騎士団長から?」
ラスティールは着替えもせずにそのまま応接室へと向かう。
「お待たせして申し訳ございません。ラスティールでございます」
ラスティールは紅茶を飲んでいた使者ふたりの前に行き、頭を下げて言った。使者が立ち上がりラスティールに言う。
「いえ、こちらこそ急にお邪魔しまして恐縮です」
ラスティールと共に椅子に座る使者達。ラスティールが尋ねる。
「それで、一体どのようなご用件で?」
使者は真剣な顔でラスティールに言った。
「はい、明後日に開かれる『六騎士会議』に、ラスティール様もご参加頂きたいとランディウス様からのご伝言をお預かり致しました」
そう言って差し出す騎士団長ランディウス直筆の書状。そこには間違いなく『六騎士会議』に出席して欲しいとの記載がある。
(私が、なぜ……?)
突然の命に、ラスティールは頭が真っ白になった。
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