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俺以外、全部勇者。  作者: サイトウ純蒼
第一章「唯一の村人、異世界に降り立つ!!」
20/104

20.やっぱり死罪のようです!?

 王都でラスティール達と離れてナンパをしていた村比斗。全く上手く行かなく、更に人攫いと間違われて王国警備隊によって連行されてしまう。そんな尋問を受け落ち込む村比斗に救いの声がかかった。



「村比斗!!」


 ラスティールが数名の警備隊の者と一緒に村比斗のいる部屋へと入って来た。



「無事か……、良かった……」


 警備隊に尋問され疲れ切った顔をした村比斗を見て驚くラスティールだったが、ひとまず無事が確認でき安心した顔で言った。男が言う。



「これはこれはホワイト家のご令嬢。して、どのようなご用件で?」


 ラスティールと一緒にやって来た警備隊の者が男に説明する。



「なるほど。ホワイト家の下男でしたか。とは言っても彼は……」



「私が責任を取る」


 ラスティールは男の前に立つとはっきりと言った。


「責任?」


「ああ、そうだ。何をしたか知らぬがこいつは悪い奴ではない。すべての責任はこのラスティール・ホワイトが責任を負おう」


「ラスティール……」


 必死に自分を救おうとしてくれているラスティールを見て村比斗は、自分が心底恥ずかしくなってきた。男が言う。



「分かった。どうやら上からもそのような指示が来ているようなので、これでこの男は開放することにしよう」


「恩に着る」


 ラスティールは村比斗の手を掴むと部屋から出て行った。






「ごめん、ラスティール。俺が悪かった」


 警備隊詰所を出た村比斗がラスティールに言う。ラスティールは城壁内の通りを歩く人を見つめながら言った。



「いや、お前を見失った私の責任だ。許して欲しい」


「ラスティール……」


 村比斗は心から自分の愚行を恥じた。偶然に出会ったとは言え、ここまで自分のことを心配してくれる人を困らせてしまっていた。村比斗の口から自然とその言葉が出た。



()()()()()、ラスティール。本当に助かった」


「あ!」


「ん?」


 ラスティールが『ここではやめてくれ』と言った顔で村比斗を見つめる。それにすぐに気が付く村比斗。ラスティールの頭の中で女性の声と機械音が響く。



『貢献ポイントを獲得しました』

『レベルアップします』



「うっ、ううう~ん……」


 ラスティールを再び快感が襲う。

 じっと耐えようとしたが、すぐに頬は赤くなり足も内股になる。そしてハアハアと村比斗の耳元で甘い息を吐き悶え始めた。村比斗が慌てて言う。



「ご、ごめん、ラスティール!! こんなところで!!」


 ラスティールが頬を赤らめて言う。



「ラ、ラスティって呼んで下さいぃ~」


「いや、だからそれはできんって!! うっ!!」



 そういう村比斗の胸の奥にも鈍痛が走る。


「うぐぐぐっ……」


 以前魔物を退けた時よりはずっと軽度だが、それでも締め付けられるような痛みに変わりはない。一方のラスティールが内心思う。



(こ、こんな民衆の眼前で、わ、私はなんて破廉恥な妄想をして……、うぐっ、耐えるの、耐えるのよ、ラスティール……)


 そう自分を戒めるラスティールだが、通りを行く人達の視線、そして股から頭に駆け抜ける快感に次第に立つことすらままならなくなる。



「やっぱり、だめ……、ううん、ああ……」


「ラスティちゃん、大丈夫!?」


 そこへ広場で待っていたミーアが心配して駆けつけて来た。

 膝をつくふたりを見て直ぐにレベルアップしたのだと気付き、ラスティールに肩を貸す。反応が収まって来たラスティールが言う。



「ありがとう、ミーア。もう大丈夫だ……」


 まだうっすらと頬は赤いが、ラスティールはそう言うとひとり立ちあがる。痛みがおさまって来た村比斗が言う。


「ご、ごめん。ラスティール。ついうっかり……」


 ラスティールが答える。



「いいんだ、気にするな。さあ、もうここの用事は済んだろ? うちに帰ろう」


「ああ、そうだな」


 村比斗はミーアとラスティールと共に王都を後にした。





 王都ベガルドの城壁を抜け、一路ラスティールの屋敷へ向かう三名。村比斗が思う。


(色々考えたがやっぱりこのふたりを強化して魔王と戦うしかないかな。右も左も分からないこの世界。俺ひとりが勝手に動いても上手く行くはずがない。それに、黙ってればふたりとも可愛いしな……)



「ねえ、村比斗君~」


(げっ、喋りやがった!!)


 村比斗が声を出したミーアを見る。



(む、無理やりレベルアップさせろとか言わないだろうな……)


 不安になる村比斗にミーアが言った。



「それで村比斗君は~、どうしておまわりさんに捕まっちゃったのかな~?」


 想定していた質問とは違い安心する村比斗。すぐに答える。



「ああ、それは俺がお前らから離れて可愛い子を()()()していたんだけど、酷いことに人攫いと勘違いされたんだ」


「は?」


 そんな話は聞いていなかったラスティールが立ち止まる。そして信じられないような顔で村比斗に言う。



「ナ、ナンパだとお!? か、可愛い子だって!? き、貴様あああ!!!」


 自分の失言に気付いた村比斗が言う。



「え? い、いや、違う!! 俺は色んな可能性を探してだな……」


「この変態スケベの底辺雑魚野郎っ!!! そんな軟派な奴を私が引き取りに……、ああ、なんて恥ずかしい!! ホワイト家に泥を塗りおって!!!!!」


 真っ赤な顔をして怒るラスティールを前に逃げ出す村比斗。



「ご、ごめん!! 悪かった。本当に悪かった!!!」


「死罪だ、死罪っ!! 今ここで叩き斬ってやるっ!!!!」


 双剣を抜いて村比斗を追いかけるラスティール。

 逃げながら村比斗は、やはり絶対にこいつには頭など下げないと心に決めた。

お読み頂きありがとうございます。

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