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俺以外、全部勇者。  作者: サイトウ純蒼
第一章「唯一の村人、異世界に降り立つ!!」
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18.『六騎士』ローゼンティア、登場!!

(本当に分厚い壁なんだな……)


 王都ベガルドへ向かった村比斗達。

 途中魔物の襲撃を受けたがラスティールとミーアによって無事撃破。そして城壁都市であるベガルドに向かい、その大きな城壁にある門へと辿り着いた。



「うわ~、すっごく大きな門だね~!!」


 初めて訪れるミーアがその巨大な門を見上げて言う。

 三人は門にある検問所で身分証と簡単な質問を受け答える。『六騎士』から降格したとはいえ名門ホワイトの名はまだ健在で、ラスティールの名を聞くと大した質問されることなく入場を許可された。




「おおっ!! これが王都か!!」


 城壁に負けず劣らず高い建物が立ち並び、その内側は整然と敷かれた石畳にたくさんの木々や小川も流れている。

 多くの人が行き交い、店やレストランで溢れ大変な活気がある。ラスティールの屋敷やここに来るまでに見た小さな村などとは、やはり規模が違う。


 ただ村比斗が思う。


(それでもやはり建物などの劣化や破損が目につくな……)


 人々が多く活気も多い。

 しかし建物の一部が壊れていたり、不思議と着ている服も野暮ったかったりする。それに中央付近にあるお城のような建物。恐らく王城か何かだろうが、そこに何かとても嫌な感じを覚える。

 同じく初めて王都に来たミーアが周りをきょろきょろ見渡して言う。



「すっごおい、活気があるねえ!!! 凄い凄い!!」


 ラスティールが答える。


「そうだろう、どうだ? 村比斗。王都は……、ん?」


 村比斗は王都を行き交う人々をじっと見つめている。ラスティールが言う。


「お前、何そんなにじろじろ見てんだ? やっぱり変態なのか?」



「ち、違う!! これも勉強だ、勉強!!」


「やれやれ……」


 呆れるラスティールをよそに、村比斗は通り行く人達のステータスを可能な限り見ていた。



(分かっていたがやっぱり全員『勇者』だ。名前に色んな修飾句が付いているお陰で、おおよそどんな奴かは分かるが)


 そしてステータスを見ていた村比斗がある事に気付く。



(そう言えばステータス画面に出て来る名前に色がついているな。基本は黒のようだが、時々違う色がある。あ、確かミーアの名前は紫だったな)


 最初の頃見たミーアのステータス画面。当時はあまり気ならなかったが、今思えば彼女の名前は紫色で表示されている。


(きっと何か意味があるのだろう。まあそのうち分かるか……)





「おーほほほほほっ!!! おやまあ、こんなところで。奇遇ですわ~」


 村比斗がそんな感じで周りの人達を観察していると、突如後ろから甲高い声が響いた。


「ん? 誰だ?」


 村比斗が振り返ると、そこにひとりの真っ赤なロリータドレスを着た少女が立っていた。フリルがたくさんついた服。手にはその服と同じ真っ赤なロリータ傘を持っている。

 傍に数名のお供を従えているところからそれなりの身分なのだろう。ラスティールが言う。



「ローゼンティア……」


 そのローゼンティアと呼ばれた少女が真っ赤な口紅が塗られた口を開く。



「あら~、ラスティール。お久しぶりだこと。一体この王都へ何の御用かしら?」


 ローゼンティアは手にした真っ赤なロリータ傘をゆらゆらと揺らしながら言った。村比斗が言う。



「誰だ、この女? お前の知り合いか、ラスティール」


「ああ、彼女は……」


 ラスティールの言葉を遮るようにローゼンティアが言う。



「ねえ、あなた。死ぬ? たかだか下男の分際で、このわたくしを『この女』呼ばわりするとは!!」


 一瞬の沈黙。

 村比斗がラスティールに近寄って言う。



「なあ、あいつ。お前の親族だろ」


「ち、違うわ!!」


 ラスティールが即座に否定する。そしてミーアがローゼンティアの胸に付いた紋章を見て言った。



「あー、もしかして『六騎士』の!?」


 ミーアが指差すローゼンティアの胸の紋章。

 それは美しく均整の取れた六角形の中央に、ベガルド王国の紋章が象られたまさに選ばれた者だけに与えられる『六騎士』の証。ラスティールが言う。



「彼女はローゼンティア。別名『深紅の花傘』と呼ばれる六騎士のひとりだ」


 ローゼンティアが傘をくるくると回しながら言う。



「ラスティール、あなた随分前から失礼なお人と思っていましたが、やはり間違いはなかったですね。それに何ですか、そのお供。貧相で弱そうで、まあ、あなたにぴったりだこと。おーほほほほほっ!!!」


 ローゼンティアは辺り響くような甲高い声で笑う。村比斗はこっそりと彼女のステータス画面を開いた。



 トントン、ボブッ


(ええっと、なになに……、『ヤンデレ勇者』だって? ヤンデレ? どこにデレ要素があるんだ!? それともどっかのイケメン貴族とでもできてるんか?)




「……けせ」


「ん?」


 村比斗が気付くとラスティールが顔を赤くしてローゼンティアを睨み何か言っている。



「何か仰って?」


 ローゼンティアが持っていた花柄の傘を肩に乗せてラスティールに言う。



「取り消せ、今の言葉……」


 一瞬、言っている意味が分からなかったローゼンティ。しかしすぐに言葉の意味を理解してラスティールに言う。



「おーほほほほほっ!!! 何ですか、何ですか何ですか!? あなた、ただの下男を庇うおつもりでして!? これは傑作、笑いが止まりませんわ!!」


 ラスティールが言う。



「彼らを侮辱するのはこの私が許さんっ!!」


「ラスティちゃん……」


 ミーアがラスティールを見つめる。村比斗は思う。



(そう言ってくれるのは嬉しいけど、これまで散々侮辱してきた奴にそう言われてもなあ……)


 ラスティールの真剣な声にローゼンティアの手、そして花傘に魔力が宿る。



「お嬢様」


 お供の者に言われてはっとするローゼンティア。すぐに言う。


「いけませんわ、わたくしとしたことが。お恥ずかしい。まあ、ランディウス様にお会いもできないあなたにはそのような男がお似合いですわね」


(ランディウス?)


 村比斗が初めて聞く名前に反応する。ラスティールが言う。



「騎士団長とは月一報告でお会いしている。それ以上もそれ以下もない!!」



(ああ、ランディウスってのは『六騎士』の団長さんか何かか……)


 村比斗は会話からその人物を推測する。ローゼンティアが立ち去りながら言う。



「まあ、いいですわ。それで。どちらにしろ王都ここにはもうあなたの居場所ななくてよ。御用が住みましたら早々にお帰りあそばせ。では失礼」


 ローゼンティアはそう言うと赤い傘を揺らしながらお供と共に去って行った。




「嫌な感じだね~、ラスティちゃん」


 それを見たミーアが言う。


「ああ、昔からウマが合わなくてな。村比斗、お前にも迷惑かけたな。あまり気にしないで……、ん、村比斗?」


 ラスティールがそう村比斗に声を掛けたのだが、肝心の本人が見当たらない。



「おい、ミーア。村比斗はどこへ行った?」


「え? あれ~!? 村比斗君~!!」


 ふたりは突如いなくなった村比斗を探して大きな声を上げた。

お読み頂きありがとうございます。

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