16.村比斗スカウトされる!!え、婿だって!?
「いやー、これは美味い!! 絶品なんてものを通り越しているぐらいだ!!」
村比斗は本邸に赴き、ラスティールの父親であるホワイトへの為にも料理の腕を振るっていた。父親の横に座ったラスティールも満面の笑みを浮かべながら言う。
「でしょ? お父様。村比斗さん、本当に料理が上手だって」
「ああ、その通りだな。本当に美味い。ちなみに何て言う料理なんだね、これは?」
一緒に食べていた村比斗が少し考えてから答える。
「特に料理の名前はないかな。豚イノシシの炒め物に青菜のおひたし、それにかぼちゃのスープってとこです」
村比斗は食卓に並んだ庶民の料理を見渡す。ラスティールの父親が言う。
「それは前時代の一般的な料理だね。今では作られる人間はほとんどいないと言う料理だ。村比斗君は一体どれだけスキルを持っているのかね?」
村比斗が答える。
「うーん、よく分からないけど、むら……」
「あー、お父様、そう言えば午後から王都に行きますの!!」
村比斗の言葉を遮ってラスティールが父親に言う。
「ん? 王都に? また急だな、何の用だ?」
「え、ええ。記憶を少し失くしている村比斗さんをお連れして、少しでも何か思い出して貰えればなと思いまして……」
そこまで聞いた父親の表情が真剣になる。
「そうか、そこまでしてか。良いのだな、ラスティール?」
「ええ。大丈夫です」
何の話は良く分からない村比斗とミーアが顔を合わせる。父親が村比斗に言う。
「時に村比斗君」
「はい?」
突然名を呼ばれた村比斗が変事をする。父親が言う。
「もしよければうちに仕えないか?」
「は、はあああ!?」
先に娘のラスティールが驚きを示す。父親が言う。
「村比斗君は農業勇者に、調理勇者まで備わっているんだ。正直な話、王都に行っても宮廷料理人として雇って貰えるほどの人材だ。だから無理は言わんが、その気ならばぜひうちで働いて欲しい」
「お、お父様、それは……」
腕を組み無言で考える村比斗。それを見て父親が言う。
「生活に不便は掛けないようにしよう。必要ならば別邸にベッド、衣装棚にカバン。農作業道具に調理道具、娘に移動用の馬車。それから必要な衣服一式に娘のパンツ、あとは……」
「ちょ、ちょっとお!! お父様っ!!!」
それを聞いていたラスティールが顔を赤くして言う。
「どうした? ラスティール」
「どうしたじゃないでしょ!! 村比斗にあげる物に、な、何で『私』が入ってるのよ!! パ、パン……、まで……」
最後は顔を更に赤くしてトーンダウンして言う。父親が答える。
「何だ、嫌なのか? 男は皆パンツが好きな生き物だ。パンツなしでは生きられぬと言っても過言ではない。ホワイト家令嬢ラスティールのパンツ。これを貰って喜ばない男などいないぞ。私も欲しいぐらいだ」
(おいおい、一体どうなってんだ、この父親? まあ、パンツは確かに欲しいが……)
「だ、だ、誰がこんな奴に私のパンツを!!!」
「嫌なのか?」
父親の問いにラスティールが席を立って大声で言う。
「当たり前でしょ!! こんな馬鹿で変態でスケベで、最低の底辺男。絶ー対っ、いやっ!!」
父親が笑って言う。
「そんなに嫌なのか?」
「当たり前でしょ!!」
「だが私にはとても仲良く見えるがな」
「はあ?」
父親の思いがけない言葉に驚くラスティール。
「とってもお似合いって意味だよ。そもそも普段あまり感情を表に出さないお前が、何故村比斗君のことになるとそんなにむきになるのかな」
「そ、そんなこと……」
立ち上がったラスティールは急にトーンダウンして椅子に座る。父親が笑って言う。
「まあ、そう焦らなくてもよい。で、村比斗君はどうするんだね?」
しばらく目を閉じて考えていた村比斗が父親に言った。
「そうですね、ではとりあえず娘さんのパンツを貰ってから考えましょう」
「分かった。すぐに手配する」
「ちょっとおおおおお!!! お父様、何が『手配する』なの!!!」
再び立ち上がったラスティールが大声で言う。そして村比斗を睨んで更に怒鳴りつける。
「貴様もだ、村比斗おおお!!! だ、誰がお前なんかに私のパ、パン……、や、やれるかあああ!!!」
そう言って座っていた椅子を持ち上げ、村比斗に近寄る。
「わ、ま、待て!! 冗談だ、冗談!! いや、パンツは欲しいが。あ、いや、そういう意味じゃなくって!!」
村比斗は椅子を持って追いかけるラスティールから必死に逃げ出した。
(まったくあの父親はやっぱり女好きじゃなくて、変態だな。娘のパンツを……)
「ちょっと、聞いてるの!! 村比斗っ!!」
父親との食事を終え、王都ベガルドへ向けて出発した三人。歩きながら考え事をしていた村比斗にラスティールが大きな声で言う。
「ん? なんか言ったか?」
全く聞いていなかったような顔で振り向く村比斗にラスティールが怒って言う。
「なんか言ったかじゃないでしょ!! あなた自分が村人ってことを他の人に話しちゃだめでしょ!! 分かってるの!?」
「ん? お前の父親にもだめだったか?」
「当たり前っ!! ここに居る三人だけの秘密。いい? 絶対に他の人に話しちゃダメ!!」
「ああ、そうか分かった」
ちょっと不満そうに答える村比斗。それを見たラスティールが早口でまくし立てる。
「大体あなたはただでさえぼうっとしているでしょ? 頭も悪いし、変態だし、ああ、イヤだ。人のパン……、を欲しいだなんて。ああもう考えるだけで寒気がしてきて。そもそもお前みたいな底辺が私と一緒に……」
「ラスティちゃん、もうその辺にしようよね~」
見かねたミーアが口を出す。村比斗が思う。
(くそっ、この変態女め!! 絶対に許さないぞっ!! いつかぎゃふんと……、えっ!?)
村比斗がラスティールの背後から睨みつけながらそう思っていると、急に背中に悪寒が走った。
「村比斗、下がれっ!!」
「わあ〜、真っ黒な蝶々さんかな〜?」
村比斗がすぐにふたりの勇者の後ろに逃げる。そしてその宙を浮くそれを見て言った。
「魔物!? ハチのような、いや、大きなハチの魔物か……!?」
それは三人の少し前の空中にブンブンと音を立てながらこちらを威嚇する、数匹の魔物であった。
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