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付喪神狩  作者: やまだ ごんた
人形編

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26/40

26.帰宅

お読みいただきありがとうございます

『あの者を一人で行かせて良かったのか』

 久しぶりに御門(みかど)の中から真神(マガミ)が姿を現し、気持ちよさげに伸びをしている。

「いやお前伸びなんかしても意味ないだろ。霊体なんだから」

『気分と言うものがある』

 御門のツッコミを軽くいなして真神が言うと、御門は「霊力の無駄使いなんだから出てくんなよ」と呟いた。

『お前を見ていると、あの者が大事なのか違うのかよくわからんな』

 真神の言葉に御門はゆっくりと立ち上がると、部屋を出てリビングに向かった。

 リビングではミケさんが真神を見るや、毛を逆立てて威嚇している。

「ほらほらミケさん。喰われたくなかったらどっか行っちゃってよ」

『霊力の足しになろうとも、猫など喰っては腹を壊すわ』

 ソファの横に腰を下ろすと、長い尻尾でミケさんを払って転ばし、ミケさんもまたその尻尾に嚙みつこうと追いかける――じゃれあって遊んでいるようにしか見えない光景を、御門はキッチンの換気扇の下でタバコに火をつけながら眺めていた。

 ――どう見ても犬と猫だろ。あんなもんが神とか日本おかしすぎるだろ。

 タバコを一本吸い終わる頃には、ミケさんも飽きたのか姿を消しており、真神はその大きな体をリビングの床にのびのびと伸ばして寛いでいた。

「とーるちゃんが付けて帰ってきたあの匂い。人形と同じ霊力を感じた」

 ソファに腰掛けて御門が言うと、真神は片目だけを開けて御門を見た。

「それだけじゃない。あの娘もだし篠川の夫婦もだ」

 家族だから匂いが付くのは当然と言えば当然だが、何か腑に落ちないと言った様子で、御門はソファに体を埋もれさせた。


 真神の姿が御門の中に消えるのを見て、御門は(とおる)の帰宅を察した。

 亨が出て行って2時間ほどしか経っていない。御門はニヤリと笑って「お帰り」とリビングに入ってきた亨に声をかけた。

「その様子じゃ今日も童貞は捨ててない感じだねぇ」

 御門の揶揄いにも反応せず、亨は呆然とした様子で部屋に入ろうとして、御門に抱き止められた。

「ちょっと、無視とか酷くない?」

「――あ、御門さん。すみません。僕――今日はそっとしておいてください」

 そう言うと、亨は御門の腕をそっと解いて自室に入ってしまった。

 いつもの亨ではないことは、御門でなくてもわかる。

 ――童貞は捨ててはないけど……軽く喰われたか。

 御門は亨に沁みついた匂いに確信した。

 いつの間にかリビングに姿を現していたミケさんを抱くと、ソファに腰掛けて「本体はどっちなのかねぇ――」とミケさんに話しかけるでもなく、小さく呟いた。


 唇が触れた瞬間に、亨は驚いて後ずさった。

「な――何を」

 薄暗い中でもわかるほど、亨の顔は赤くなっていた。

 その慌てぶりにまゆみは、我慢できないとばかりに笑い出した。

「ごめん――まさかキス初めて?」

「そ、そんなわけないでしょう。突然でびっくりしたんですよ」

 亨はムキになっているのが自分でもわかっていた。

 まゆみは笑いながら謝ると、亨から少し離れて「もうしないから」と、言って亨の顔を覗き込んだ。

「――最近の若い子は……」

「おっさんか」

「君より6つも上だからね。おっさんですよ」

 まゆみは22歳だったと思い出し、亨は軽く咳払いをして見せた。そうだ。俺はこの子よりも年上なんだから遊ばれていてどうする。

 何とか胸中を落ち着かせると、モヒートをもう一口飲んだ。

「もうしないから拗ねないで」

 まゆみの言葉に、亨はグラスを置いた。

「メッセージでは話したいことがあると言ってたけど、この事なの?」

 亨がテーブルに置いたままの封筒を指さすと、まゆみはそれまでの笑顔から真面目な顔に変わった。

「お姉ちゃんの事――。お母さん達が話してるのを聞いたの。お父さんの生徒達が怪我をしたのってお姉ちゃんのせいなの?」

「――それはまだ……」

「お母さん言ってたの。お姉ちゃん生きたかったのに死んじゃったから、それでみんなを恨んでるんだって」

 まゆみの真剣な表情に、亨は何と言っていいのかわからなかった。

 御門はまだ何も決定的な事を言っていない。ただ暁の生きる執念が人形に沁みついているのだと言っただけだ。

 御門は考えていた。いつもならすぐに祓うのに、そうしなかったのは、原因は暁の想いだけではないのだろう。

「お姉ちゃんは人を恨むような人じゃない。――自分の体が弱くて、いつも謝ってた。お姉ちゃんの心臓が悪くなって、お父さんが演奏を辞めてお姉ちゃんの傍にいられるようにって日本に残った時も、泣きながら謝ってた。そんなお姉ちゃんが人を恨んで怪我をさせるなんて信じられない」

 話しながら目に涙を浮かべるまゆみに、亨は何も言えず、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

「今はまだ調査中で、何も言えない。ごめん」

 亨の言葉にまゆみは、アイメイクが崩れないよう涙を拭くと、小さく首を横に振った。

「私こそ、取り乱してごめんなさい。――でも、本当にお姉ちゃんは」

「分かってるよ。いいお姉さんだったんだね」

 亨が言うと、まゆみは微笑んで姉との思い出を亨に話して聞かせた。

亨ちゃんのデート回です

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