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閻魔様との対面

 俺は今、悪魔に先導されて歩いている。


「どこへ向かってるんですか?」

「さっきも言っただろう、閻魔様がお前に罰を下すためだ。」


 閻魔様ってどんな人なんだろう。俺の知っている閻魔様っていうと漫画とかでよく見る帽子被ったでっかい人だが本物もそうなのかな。


「それにしてもお前、なぜ列から外れてあのような場所にいた?死んだばかりのやつはあのような場所にいるはずがない。お前、嘘をついていないか?」


 さっき適当に話していたのがばれそうだ。でも嘘は言っていない、さっき来たんだから。


「いや、嘘はついてませんよ、本当にさっき来ました」

「まあいい、嘘をついているとしても閻魔様に嘘は通用しないからな。ああ閻魔様、早く会いたい......」


 こいつ自分から聞いてきておいて、まあいいとか言って話変えるのが癖かよ。さすが悪魔、性格が悪い。俺がブラックな会社で働いてなかったら文句の一つでも言っていたかもしれない。てかこいつ最後に本音漏れてただろ。

 というか悪魔とずっと一緒にいる一言も話さない鬼はなんなんだ。


「ああ、こいつは新人で私について仕事を学んでいるところだ」


 俺の心を見透かしてるかのように悪魔は鬼を指さした。

 これも仕事なのか......。新人の時は俺も苦労したよ。なんだか鬼に少し親近感が湧いてきた、鬼の方はそんなことはなさそうだが。

  それ以降、会話はなく俺は無言で悪魔のあとをついていった。




 あれからだいぶ歩いた気がする、少なくとも1時間以上は歩いた。まわりの景色はずっと同じで進むにつれ生気のある人が減っていった。みんな14徹した時の俺みたいな顔をしている。あの時は本当に死ぬんだと思ったが、人間やろうと思えばいけるもんだなとも思った。それにしても何人いるんだこれ、ずっと列が続いてるし、動いてるのをみていない。


「そろそろだ。あそこに見えるだろ、あれが閻魔様だ。あそこで死んだ人間を天国に送るか地獄に送るか選別しているのだ。......ああ、いつ見てもカリスマが溢れている......」


 そう言われて目を凝らしてみると、遠くにぽつんと掘建て小屋のようなものと大柄な人が見えた。多分あれが閻魔様だろう。

 イメージはしてたものとなんだか違うな、なんかもっとこう、でかい建物で社長室みたいなとこで天国か地獄か決めてるのかと思ってたけど閻魔様も大変なんだな。てかこいつさっきもだけど閻魔様に上司以上の感情持ってるだろ。

 別に俺は悪いこととは思わない。しかし俺が見たことのあるのは、社内恋愛で付き合い初めはしたが仕事が忙しすぎてギスギスして最悪の別れ方をしていた奴だらけだからどうなるかはわからない。そもそもこいつらにそういう文化はあるのだろうか。


「さあ、着いたぞ。せいぜい軽い罪になることを祈っとけ」


 さっきから罪やら罰やら言っているが果たして列から外れたくらいでどんな罰になるんだか。俺の感覚的には謝れば許される程度だと思うが、ここは日本じゃないし物凄い悪いことをしていたのかもしれない。どんな罰があるかわかんらないができるだけ軽めになるよう祈っておこう。


「お忙しい中失礼します、閻魔様。不審な行動をしていた男を見つけたので連れて参りました」

「そうか、少し待っとけ」


 この人が閻魔様か。近くで見ると思ってた以上にでかい。5メートルは余裕であるんじゃないかってくらいでかい。でもなんだかでかい以外は特に普通の人間と同じような見た目だ、悪魔とか鬼とかはThe・異形みたいな見た目してたのに閻魔様は帽子かぶってるだけだ。それでも帽子があるってだけで閻魔様ってすぐわかるから外見って大事だな。


~15分後~


仕事が一区切りしたのか閻魔様がこちらを向いた。


「それでクロリー、この男がどうしたんだ」

「はい、こいつが死者の列から抜け不審な行動をしていたので連れて参りました」

「ほう、それはまた久しいな。死者の列から外れたやつなんて500年ぶりだ。今回のやつは普通そうな人間でよかったわい」


 この悪魔クロリーって名前だったんだ、見た目どうりな名前だな。てか閻魔様一体何歳だよ、それと今回のやつは普通そうって前のやつそんなにやばかったの?俺は確かに仕事時間を除けば平凡で普通のサラリーマンだったけど。


「この男、どういたしますか?閻魔様」

「そうだな......。500年前のやつは確か暴れ回って大地獄へと送ったな」


え、もしかして俺もそうなる感じ?てか大地獄とか小学生の頃言ってたなぁ、懐かしい。


「まあ、大地獄は目に見えて極悪人のやつらが行く場所だ。この男は暴れたりしたわけではないし、他の死者と同じように決めることにする」

「なんと寛大なお心......!おいお前、閻魔様のご慈悲に感謝しろ」

「え、あ、ああ。ありがとうございます、閻魔様」


クロリーに言われるがまま感謝すると閻魔様は笑っていた。なんだか取引先の鈴木さんを思い出すな。鈴木さんは怖い見た目だけどこっちのことを考えてくれてるすごく優しい人だった。閻魔様ってもっと怖い人だと思っていたが優しそうな人だ。


「ではお前の審判をする。知っていると思うがここは冥界、死者の行き先を決める場所だ。審判はお前の人生を色で判断させてもらう。色が黒ければ地獄、白ければ天国と決める。滅多にないことだが例外もある。まあ、そんなもの普通は出ないから大丈夫だろう。審判をするのに必要なのは名前だけだ。この水晶玉に向かって自分の名前を言えば水晶玉がお前の人生をみて色を出してくれる」


 なるほど、ここで天国か地獄か決めるのか。いまだにいまいち死んだ感じがしないが行くならやっぱり天国がいいな、俺が子供の時に死んだじいちゃんとかもいるかもしれない。


「どうした、早く名前を言え。閻魔様を煩わせるな」

「あ、はい。......神月正人」


 クロリーにせかされ緊張しながら自分の名前を言うと、途端に水晶玉は光出した。これは白ってことでいいのかな、そう思い閻魔様の顔を見るとどうにも怪訝な顔をしている。

 もしかしてこれまずい?と思ったところで「ピキッ」と言う音が聞こえた。前世で同僚が居眠りをして液晶に顔をぶつけた時にも同じような音を聞いたことがある。水晶玉にヒビが入った音だった。そしてそのまま水晶玉は亀裂が大きくなり大きな音を出しながら割れ、それがあった場所には黒いモヤだけが残っていた。

 あれ?こんなこともあるって説明されたっけ。あ、これが例外か。だから周りがざわつき始めたのか、それにしてもなんだか周りが騒がしいような気がする。

 わからないことは聞いてみようの精神だ。


「この場合って俺どうなるんですかね?」


 勇気を出して聞いてみると呆然としていた閻魔様がこちらを向いた。さっきの優しい雰囲気はなくなり鋭い目つきで俺のことを見た。


「わしが知ってる中でこれは事例がないことでな、少し戸惑っておる。水晶玉が割れる条件というのは二つあってな。一つはそいつが偽名を使った場合、二つはそいつが壮大な人生を送っていて水晶玉の容量がオーバーした場合。一つ目に関してはわしら閻魔の一族は嘘を見抜くことができるからそれは不可能だ。だから必然的に二つ目の理由になるな、そして水晶玉からは黒い煙が出ていたということは......」

「閻魔様、あなたがいう必要はありません。私にお任せください。...神月正人、お前どんな人生だったんだ?水晶玉が壊れるような人生を送りながら地獄を意味する黒い煙が出るなんて相当な悪人だったんだな。そんな悪人は地獄ではなく大地獄送りだ。閻魔様はそう仰りたいんだ、わかるか?」


 閻魔様とクロリーが見つめ合い始めた。なんだこの空気。

 それに俺大地獄行きなの?さっきそんなことないみたいなの言ってたのに、まじか。まあ、大地獄って言われてもイメージが湧かないからピンとこないが。それに悪いことをたくさんしたから地獄行きと言われたが俺そんなに悪いことしたかなぁ。無意識でやってたらどうしようもないが学生の頃はとても真面目な生徒だったと自負している。そして社会人になってからは文字通り仕事しかしてなかった。仕事内容も人を不幸にするような仕事ではないし、それだけの人生が壮大なわけがない。

 というか、水晶玉の容量オーバーって......。その水晶玉のどこにそんな機能つけてんだよ。

 やはり大地獄っていうのは間違いでは、と思い始めた。


「あの、俺が大地獄行きっていうのは何かの間違えじゃないんでしょうか」

「黙れ。閻魔様が仰ったことが全てだ、口答えをするな」

「そういうわけでお前は大地獄行きだ。大地獄は文字通り地獄よりもきつい場所だ。わしでも行くのに躊躇う。せいぜいがんばれ」


そうして俺は閻魔様でも行くのを躊躇うような大地獄に行くことが決定した。ここでは閻魔様がルールだから俺が何を言っても無駄らしい。閻魔様に何か言おうとするとクロリーが邪魔をしてくる。水晶玉が壊れたからって全面的に俺が悪いってわけじゃないと思いたい。


「あの、もう少し考えてもらえませんか?」

「うるさいうるさい、ワシが決めたんだからそれが全てじゃ!口答えするな!」


 ダメ元で言ってみると閻魔様が突然怒り出した。

 閻魔様優しい人だと思ってたけどなんか違うな、自分の言ったことを曲げられるとぶちぎれるタイプだ。

 何度かそういう人の対応したことがあるからわかる。こうなったらもう止められない。


「クロリー!そいつをさっさと大地獄に連れて行け!」

「はっ!」


 閻魔様の理不尽な怒りの部分に触れてしまった俺はクロリーによって俺は大地獄へと連れていかれることになった。

 しかし大地獄と言われてもイメージが湧かない。


「あの、大地獄ってどんな場所なんですか?」

「どうした、大地獄に行くのが怖くなってきたか?いいだろう、特別に教えてやる。大地獄では毎日休みなく働かされるんだ。そう、1日たりとも休むことは許されない。死んでいるから死ぬことはない、しかし疲れは溜まる。そんなのを毎日永遠に続けさせられるんだ。どうだ、恐ろしいだろう?」

「そうなんですね。てっきり針地獄で串刺しにされたり釜茹でにされたりするのかと思いました」

「お前、悪魔でもそんなことしないぞ......」


 俺の思ってた大地獄のイメージを言ったらクロリーにひかれた。悪魔に悪魔でもしないって言われるって不思議な感覚だな。

 でも永遠に働かされるのか。俺の想像してたものとベクトルが違うがそれはそれでとても恐ろしいな気がする。

 そんな場所にこれから連れてかれるわけだが果たして大丈夫だろうか......。

 いいや、不安になってたら良くない。新しい場所でも前向きに考えていけと異動させられた先輩から教わったはずだ。

 俺もあの人を見習って前を向いていこう。

 

「着いたぞ。ここが今日からお前の生活する大地獄だ。根を上げたってどうしようもないぞ。何せ死んでるんだからな。精々閻魔様のために働けよ」


悪役のような台詞を言い残しクロリーは去っていった。

こうして俺は大地獄へと落とされた。

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