鬼の宝玉。
◇
『新鮮な魚はいらんかねー?朝に獲った新鮮な魚だよー!』
『午前中から精が出るね。何匹かもらおうか』
『お、ヘスリルトの旦那!まいど!おや、ナラクトちゃんもいたのか。これから水汲みかい?』
『チビ達が布団の中で寝てる今くらいしか、川に行けんからね』
うちは産まれてすぐに捨てられた孤児やった。鬼魅族は身内意識の強い種族。だから他の部族と関係を持った時に、色々面倒なことになりやすくてなぁ……うちみたいに捨てられる子はそこそこおったんよ。
せやけど捨て子が多い反面、拾って面倒を見てくれるもん達もちゃんとそれなりに多くてね。孤児は気軽に雇える人手として重宝されるんよ。
ヘスリルト家は孤児に外に出て働くための技術や知識を孤児に与えることを仕事にしとった孤児院の経営者の家名。ナラクトの名は……まあ、無責任な親が服とかに縫っとった名前なんよね。
孤児院の中じゃうちはそれなりにお姉さんでな。勉学の方はちょっーっとアレやったけど、代わりに幼いチビ達の面倒をよく任されてたんよ。
『なぁ、最近向こうの平野にいろんなとこのモンが顔を出しているが、何か知ってるかい?』
『そりゃお前さん、鬼磨の儀の準備でさ。魔王が選ばれる時期が近づいてるからな』
鬼魅族にとって領主を決めることは一つの祭り。
この考え方は別に鬼魅族だけにあるもんやない。他の魔族の中にも似た考えを持つのはおるからね。
ロミやんとこの牙獣族とかもそうやろ?歴史の中でずっと領主が支配するんやなくて、普段は各地の部族の長とかが仕切ってる感じ。
そんで魔王が誕生する頃に、同じ種族を束ねるために最高の長を決める。牙獣族はアレよね?ちょっと血生臭い感じで殺し合いとかしちゃう感じ。
別にソレがどうだとかは言わんよ?ただ鬼魅族はそういう『皆で戦う』ってことはせんのよ。
鬼魅族は強いもんは強いけど、弱いもんは本当に弱いんよ。牙獣族のノリで争い合うと、弱い連中は一人も生き残れん。
だから鬼魅族は領主を決める時は祭りを開くんよ。我こそは領主に相応しいって自負する連中を皆一箇所に集めてな、最後の一人になるまで戦わせる。
皆はそれを『鬼磨の儀』と呼んでるんよ。限界の中で戦い続けて、己を磨ききった者こそが領主に相応しいって。
『ああ、なるほどな!そりゃめでたい!』
『そうだろう?俺もこのへんで魚を獲ってるからな!稼ぎ時がくるってもんよ!』
鬼磨の儀が行われる場所は先代が残した遺書の中に記されてて、時期がくるとそこに参加する部族の者達が協力して戦いの場を用意する。
近くに住むもんからすれば名誉なことなんよ。誉れ高き領主が決まる土地やし。その近辺で取れた作物とか倍の値段でも売れるからね。
『うちにはいつも通りの値段で売ってくれよ。食い扶持だけは多いんでな』
『でもあんまり騒がしいのは嫌やわぁ……。チビ達ちょっとの音でも起きて泣くんやもん』
『その騒がしいのが良いんだぜ?鬼魅の血には業の因子が流れている。意思を持った行動に関わるからこそ、俺達は力を発揮できる。皆の意思を向けられているからこそ、領主を目指す者達は普段以上に己を磨き上げることができるんだ』
『よぉわからんわぁ……』
『だろうな。まあお前には関係のないことだ。だが近くで鬼磨の儀が行われることはありがたいことなんだ。お前達の価値も上がるんだからな』
ヘスリルト家は仲介料をもらったりして生計を立ててたからね。作物と違って時間が掛かる分、そういった箔が付くことは嬉しいことなんやろね。
そんで間もなくして鬼磨の儀は行われたんよね。すぐ隣の平地に大きな結界が作られて、大勢の鬼魅族が集まってどんちゃん騒ぎ。
そんでそれぞれの部族から腕に自信のあるもんが集って、結界の中で戦いを始めた時には更に盛り上がってな。
皆が才能ある身内が勝つことを願い、激励した。その意思を受け止め、戦うもん達は皆いつも以上に奮闘してみせた。
普通実力者同士が戦っても、数時間もたてば決着するもんやろ?せやけど鬼磨の儀の参加者は十の部族から一人ずつの十人。その十人がみーんな互角で七日間、誰一人脱落せんかったんよ。
結界は外からは入れても中からは出れん。外から投げ込まれた食い物や酒を飲みながら、一睡もせんと延々と戦い続けた。
『うわああああんっ!』
『皆の声がよお響くねぇ……。ほら、大丈夫。大丈夫。怖くない、怖くない』
そんな鬼魅族の異様な熱気は、年端も行かない子らには恐怖でしかなかったんやろな。いや、もしかしたら鬼魅の血が触発されてたかもしれんのやけど。
チビ達はその七日間、ずっと泣き続けとった。泣き続けて、力尽きたように眠って、また泣き続けて。それが代わる代わるで常に誰かしら泣きっぱなしで。おかげでうちもまともに眠れんかったんよね。
『すぐに静かになるからね。そしたらぐっすり眠れるからね』
皆が鬼磨の儀に夢中な間、泣き続けるチビ達をあやして、あやし続けて、うちは何一つ楽しいことなんてなかった。
『煩いねぇ、煩いねぇ……』
遠くから聞こえてくる歓声と、選ばれた戦士達の戦闘の轟音。すぐ近くではチビ達の泣き叫ぶ声。
音が煩くて、煩くて、耳を塞ぐ手は子守で塞がってて。眠りたいのに眠れなくて、横になることもできんかった。
『本当に……不快やわぁ……』
そんで八日目の朝、泣きながら癇癪を起こしたチビの投げたガラガラが頭に当たった時、プチンと頭の中で何かがキレた。
そんで気づいたら、うちは鬼磨の儀が執り行われている結界の中に殴り込んでいたんよ。
『おいおい、戦いに飽きたからって若い女を投げ込むなよな!流石に抱きながら戦うのは無茶だぜ!』
『はははっ!邪魔だからって殺してやるなよ?ああでも裸にひん剥いて転がしといてくれりゃ、眼福にはならぁな!』
参加者は驚いとったけど、周りで見ていた連中は皆大笑いしとったわ。外からは入れても中からは出られん結界やからね。熱気に当てられて乱入する馬鹿は過去にもおったらしいけど、うちのような小娘が飛び込んできたって話はなかったからなぁ。
ただその笑い声も、すぐに静かになったわ。中におった連中、うちが一人で全員殺してしもうたからね。
部族の代表達はまだまだ戦えた。体力も気力もたっぷりあった。でもな、皆弱かったんよ。殺すつもりはなかったんやけど、うちもキレてて手加減できんかったからね。
『ああ……これでやっと静かに眠れるわぁ……』
◇
「てなわけで、領主を決める戦いに煩いとキレて乱入して、皆の想いを託した有望な戦士を空気読まずに皆殺しにしてしもうたんよね。アッハハー」
「えぇー……」
近隣の集落を目指しながらナラクトの話を聞いていたけど、いまいち掴みどころがわからない。経緯や動機については分からなくもないのだけれど、それでもこう、なんかなんかだ。
完全に衝動に身を任せた行動、彼女の言い分も分かる。私だってイラついて弟を蹴り飛ばしたことは一度や二度では足りないし。
「そこから色々あってな。鬼磨の儀は無効だと言うもんとかもおったんよ」
「そりゃあ部外者が割り込んで全部かっさらったわけだし……」
「でもなぁ、『じゃあ誰が領主になる?』ってなった時、話が完全に止まってしまったんよね」
当然と言えば当然ね。各部族の代表、最強の戦士達が全員殺された。次に名乗りを上げられるのは二番手以降となる。誰が他所の二番手に領主の座を、自分達の未来の全てを託せるというのか。
「鬼磨の儀をやり直そうとは……言ってて愚問だったわ」
「アッハハッ!うちを混ぜてやり直すべきやって、下の連中は言ってたけどな。でも上の連中は考えようともせんかったわ」
ナラクトは全員の目の前で代表達を皆殺しにした。二番手以降を揃え直しても結果は同じになるだけ。何が悲しくて部族に残った有力な者を死地に送らなければならないのかって話。
私としてはナラクトを抜いてやり直すって意味だったんだけど、そんな事をして行う儀式は空虚なだけよね。
「貴方に対して武力行使をしようとする者はいなかったの?」
「おったよ?出てこなくなるまで五十くらいは殺したかもね」
いたんだ。強硬派もあっさり全滅かー。それは話がトントンと進みそうね。
「それで結局貴方が領主になったと?」
「誰が領主になっても、納得できんもんが出てくる。せやから皆でうちを管理しようってことになったんよ」
なるほど。ナラクトが各部族の代表の命を奪い、強硬派も潰したことで彼らの面子、主導権を根こそぎ潰してしまったわけね。
敗北者を送りだした部族は強い発言ができなくなった。ただ全ての部族がその状態に陥ってしまったわけで……最低限の権力を維持するにはナラクトを利用するしかなかったと。
「貴方もそうだけど、貴方を育てた孤児院も大出世ね」
「それがそうでもなくて」
「どういうこと?」
「色々あったって言ったやろ?鬼磨の儀に割り込んだ後、うちは泥のように眠ってたんよ。そしたら旦那さんが物凄い剣幕で叩き起こしてきてなぁ」
「そりゃあ……まあ、そういうことにもなるかしら」
一族総出の祭りに対して、最悪の形で水を差してしまったわけだ。『最強の戦士達を単身で皆殺しにした』という事の重大さと意味を正しく把握していなければ、『身内がやらかした』という思いが先走ることもあるのでしょうね。
「んで旦那さんを肉塊にしてもうたんよ」
「ちょっと!?」
「いやぁ、うちとしては寝てる時にまとわりつく煩わしい虫を払ったつもりやったんよ?でもな、鬼磨の儀の時からうちの力、制御がなぁ……」
ナラクトは道先にあった人ほどの大きさの岩へと近づくと、友人の肩を叩くようなノリで掌打を当てる。
「っ!?」
軽い音が響くと思いきや、轟音と共に岩が粉々に砕け散った。岩が置かれていた大地には深い亀裂が走っており、それが今の軽い掌打から発生したとはとても思えない。
何より今、衝突の寸前に感じた異様な感覚……間違いない。これが彼女の――
「これがうちの特異性、『我が御手への接触を禁ず』。ざっくりいうと触れたもん大体砕ける特異性やね」
ナラクトがヒラヒラと振る手には異様な魔力がまとわりついている。それが危ういものであると本能が警告をしている。その禍々しさは見ているだけで、全身の毛が逆立ちそうになるほど。
「……触れたもの全てを砕くって、物騒な力ね」
「ああ、心配せんでもええよ?色々と制約も多い力やからね。ほら、ロミやんこの力の発動の直前から臨戦態勢に入れてたやろ?」
「え……あ」
自身の体を見渡してみると、体が既に構えている。全身への魔力の循環も、臨戦態勢そのもの、それこそ反射的に特異性の開放までできる状態だ。
「この特異性な、相手の硬さに比例して必要な魔力量が変化するんやけど、その効率自体はすごくええんよ。百の硬さを砕くのに、一の威力の魔法程度の魔力で足りるんよね」
「それのどこが心配いらないのよ……なおさら物騒じゃないの……」
「代償として、この特異性を使う時、うちは奇襲が絶対に成功せぇへんのよ。必ず正面から当てきらんといかん。なんせ相手はこの特異性を発動する前から反応できるからなぁ」
なるほど、自身の心構えとは別に、最善の臨戦態勢が取れているのはそういう理由なのね。相手の防御力を理不尽な効率で突破できる代わりに、相手は無意識の状態でも特異性の脅威を理解してしまう。
結果として相手に万全の状態での対応の機会を与えてしまうという――
「――だから、ロミやんならこうしても反応できるやろ?」
「っ!?」
突如眼前にまで接近してきたナラクト。その瞬間に私の『嘆き、唄う紫電の金狼』が発動し、距離が作られる。避けるという意思が出る前に、本能が回避行動に移っていた。
ナラクトは手をヒラヒラとさせながらその特異性を解除していく。
「アッハハッ!綺麗な金狼やね。こら本気でも当てるのは骨が折れそうや」
「貴方ね……」
普段なら紫電となって移動する際にはある程度の軌道をイメージする必要がある。だけどそれらの工程を一切省き、完璧な状態での回避行動を行えていた。
相手の特異性に操られている感覚に気持ち悪さは感じるけど、今の私の状態は平時よりも冴え渡っている。確かに私ならナラクトが本気で攻撃してきても対応できそうではある……あるのだけれど……。
背中に流れる汗の冷たさが焦りの大きさを伝えてくる。接近してきたナラクトの速度は弟の全力にも匹敵していた。流石に特異性まで開放すれば弟の方がまだ速いかもしれないけど……今のナラクトが本気で動いていたとは考えられない。
ナラクトはその特異性だけではなく、その基本的な身体能力も異常の域にある。これだけの身体能力ならば、正面から各部族の代表を捉えることはそう難しくなかったはず。
そして一般の魔族程度なら……虫を払う程度の感覚でも殺してしまったでしょうね。
「特異性が目覚めた時、体の方も一気に強くなっててなぁ。それこそ払った手で旦那さんが反応もできず、壁にべったり張り付く肉塊になるくらいにね?」
「育ての親でしょうに、笑いながら語らないでよ」
私達魔族は特異性に馴染んだ時、大きく成長する。自身の因子と向き合い、その力の在り方を理解する。それは通常の鍛錬とは比較にならないほどに自身の格を上げることとなる。その特異性が強ければ強いほど、目覚めた後の成長は目まぐるしい。
ナラクトのケースは極端ではあるけど、理には適っている。特異性に目覚め、鬼魅族最強の戦士達を皆殺しにできたのだ。一気に成長を成し得ていても不可解というわけではない。
「んー……でも笑うしかないんよ。じゃないとチビ達みたいに壊れるかもしれんからね」
「……その場にいたのね、子供達」
話を聞く限り、実の家族ではなくても、それなりに愛情を向けてくれていた親だったのでしょうね。
それが目の前で肉塊になった。しかもそれを行ったのが自分の面倒を見てくれていた姉代わりのナラクトだったわけで……うわぁ。
「いやぁーあの時チビ達に向けられた眼、たまに夢に見るんよねー」
「向こうはもっと見ていると思うわよ」
「アッハハッ!本当悪いことしたわぁ。まあそんなわけでお家は解散。うちは鬼魅族の中でも最大級の腫物として領主になったんよ」
ナラクト=ヘスリルト。鬼魅族から見れば、自分達の想いを託した代表を煩いという理由だけで皆殺しにし、育ての親まで殺めた危険な存在だ。更には彼女に不満を持った強硬派も容易く皆殺しにしている。
そこまでの事をして、この飄々とした態度。そりゃあ並の者なら近寄りたくもないでしょうよ。
自業自得と言えばその通りではあるのだけれど……彼女の気持ちも理解できてしまう自分がいる。それは私も他者より優れた才能を持っているからだ。
きっと鬼磨の儀は、鬼魅族からすれば自分達の因子が活発化する程に心躍る儀式だったのでしょう。だけどナラクトからすればそれはただの児戯、価値など何も感じない騒音でしかない。
彼女は原石ではなく、始めから磨き上げられた宝石だった。それがただ泥に塗れて見えていなかっただけ。拭うだけで光り輝く彼女に、他者とぶつかり磨き上げる場は必要なかったのかもしれない。
ただ鬼魅族の連中も馬鹿じゃない。その事実を理解している者もそれなりにはいるのでしょう。だからこそ――
「困ったものね」
「せやろ?」
ナラクトの現状には理解が追いついた。彼女を脅威としていることもそうだけど、これは他の鬼魅族への牽制だ。彼女に過度に干渉することは、その力を利用しようとする行為と見られる可能性がある。
だから誰もナラクトと会わない。喋らない。意思疎通を行おうとしない。領主としての最低限の情報共有だけを行い、その世話を続ける。
領地内ではその動向を常に監視し、危険過ぎる力を誰のものともできないように互いに見張っているのだ。
「まるで呪いの宝玉ね。貴方」
「その例え、結構好きやよ」
問題はこのナラクトと領民との関係改善を行わなければならないということだ。
ナラクトが傍若無人な領主で、領民から嫌われていただけなら、ナラクトの素行を正せば良かった。
領民に悪意があるのであれば、その中心となる者を処罰することもできただろう。
でもナラクトは鬼魅族全ての共有物として領主の座に祀られている。誰も歩み寄ろうとせず、近寄ることを忌避している。
ナラクトが変わっても意味はなく、鬼魅族全ての認識を同時に変えないことには関係の改善は難しいだろう。
「貴方を物扱いしているような連中じゃない。それこそ力で従わせようとは思わなかったの?」
「それ領主の姉のセリフと違くない?んー……うちは孤児やったけど、普通に育てられて、普通に生きてきたんよ?悪いことしたなぁって気持ちは人並みにはあるんよ」
「なら今の扱いに不満はないの?」
「そこまではないなぁ。布団はとびっきり上等なもんやし。この服も綺麗やろ?」
「……そこまでってことは、あるにはあるのね」
「まあ、せやね。ほら、ついたで」
到着したのは村の一つ。鬼魅族は牙獣族と同じで、部族ごとにある程度の領地を分割して管理している。その数は十……つまるところ、この村を管理する部族もナラクトに代表を殺された者達ということになる。
村にはちらほらと農作業を行っている者や、家の表で遊んでいる子供達などの姿が見られる。
多少なりとも好奇心はある。言葉では聞いていたけど、彼らのナラクトに対する態度がどのようなものか、直接眼で見てみなければ正しい理解は得られないでしょうし。
「やぁやぁ、皆、元気にしとる?」
そんな考えとは裏腹に、ナラクトは近くにいた村人に気さくに話しかけた。そんなテンションで話しかけて問題ないの?なら――
「……っ」
ナラクトの立場を理解したはずなのに、私は何をぬるい考えを持っていたのか。
彼女の言葉に返事は返ってこなかった。代わりに声を掛けられた村人達は静かにその場で両膝をつき、深々と頭を下げてその額を地へと付けた。
そしてその光景を見た他の村人達も、何を言うこともなく集まる。そこに老いも若きも関係ない。誰もが同じように頭を垂れていく。村にいた者達が全員集まるまでそう時間は掛からなかった。
その光景には一種の清純さすら感じる。だけど私の胸の内には吐き気に近いものもこみ上げてきた。おそらくこの場に弟がいれば、苛立ちついでに脛に蹴りの一つでも入れていただろう。
ナラクトはその光景を見て、変わらず飄々と笑っていた。